第16話 ドラゴンの元へ

マリアンヌと別れ、飛んでることがバレないように、俺は雲より高く上昇した。今晩曇りで助かった。そのまままっすぐ西方向に飛ぶ。距離は分からないが、一先ず1時間くらい雲の上を飛んで、あとはちょっと下に降下し、方向を調整するしかない。


ずっと同じ景色なので、思わずこの一週間のことを思い返す。


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今思い返すと、起きてから忙しい一週間でした。


初日寝る時脱走計画を考えた。まずあの部屋正面から出るのも不可能だから。残る方法はその窓だけ、我ら現代人では当然“飛ぶ”の方法を選ぶよ。


ここで真っ先に風魔法を考えた、最初に起きたあの夜みんなも寝た時、すぐに枕を風魔法を使って飛ぶ方法を模索する。戦闘機のように枕の下から噴射気流で浮かぶようなイメージは簡単なので…何10回試した時、枕はガチでちょっとだけ浮きました、魔法ですごい。ですが、同時にすごく残念です、この方法は使えない、燃費が悪い、この体で体感した魔力量では、高く飛べないし、多分1分も持たない。それに…枕が浮いた時風が強すぎて、マリアンヌに気づかないかとドキドキしました。


ではもっと科学的な方向で考えましょう。重力はどうですか?たしかに元の世界でもまだ完全に解明できない力ですが、ここはイメージでカバーするしかない。試しに枕の重さをゼロにするとイメージする…うん、ダメね。では万有引力の反対力をイメージする…色んな違うイメージ方法で試すと10回目のイメージで枕の重さを消した、枕は宇宙にいるかの様に浮いていた。さで、浮いた後の動きは?宇宙と違って慣性はだめ、ここは空気の摩擦力がある、でも一番簡単な方法は小さな風魔法で噴射する。いや〜これも燃費高いではないか。


最後に決めたのは新幹線のように磁力で飛ぶ方法。使い慣れれば一番燃費が安く、安定して飛べる。飛ぶ時同極間に働く引力で飛べるし、減速も可能。俺も磁力のすべてがわかるわけではないが、多分わからない部分はこの妄想力でカバーできると思う。ありがとう新幹線を考える人。その晩、魔力が無くなるまで沢山練習しました。


魔力が無くなると、ベッドで他の問題を考える。そのまま飛んで逃げると絶対手配され追手も来るでしょう。ではマリアンヌたちの前で何かを誘拐されたみたいに演出すれば窓から飛び去ったみたいな?こうすればマリアンヌたちもこの国の王に怒らずに済み、良いですね、この方向で行こう。


残るは逃げたあとの問題だ、例えうまく逃げたとしてもそのあとのことも考えないと。


例え逃げることに成功したあと、高そうなドレスのまま歩いてるのは絶対怪しまれるし。それと金!!ここ大事!でも金の問題は簡単に解決できる。今の俺は誰?姫様ですよ、宝石やアクセサリー沢山いるじゃないか、今は俺のものだから、いくつ頂いでもいいでしょう。


ですが換金する時は不味い、メイドも付けてない、名前も明かさない貴族っぽい小娘が換金すると…怪しい、詐欺師として通報される…いや待って、メイド…そうですか!メイド姿では“お嬢様が当主様にお誕生日プレゼントを買うための資金調達です、当主様に内密にね”みたいな、行けるこれは行ける、チャンスがあればマリアンヌたちにメイド服が欲しいとお願いしないと。


そろそろ寝ろ…あ〜そういえば、あの魔道士団長ハゲ野郎明日来るって…はぁ、対策を考えないと。結局最初の日、1~2時間しか寢ってなかった。


そう言えばドラゴンさんも来ましたね。あの時は何の実感もなかった。ただこの世界は危ないですね、急にドラゴンが襲ってきたとしか考えなかった。


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起きたら2日目



今日は身体は昨日より上手く動けると思う。でもまだまだ走ることもできない。


あのハゲ野郎の対策はうまくいった、うますぎで元々冷気を作りたいと思っただけなのに、結局キラキラが出てきた。あの虹色のキラキラは一体何だろう…うん、無視しよう。ですが僅か2日目でマリアンヌに姫様の中身は別人とバレそうだと勘付けられた、マリアンヌすごいわね。でももし彼女がユウジと会えたら、あいつが本物の姫とわかるのでは?姫様の癖とか癖とか癖とか。うんうん、彼女も危ないですね。逃げる前に彼女に帝国から逃げろと進言しましょう、彼女のこと結構好きですし、命の恩人がすぐに死ぬのは見たくない。


マリアンヌはハゲの件で報告に行ってる間、早速魔法の練習のために刺繍したいとメイドさんに言った。まさかメイドたちが俺に刺繍教えるとは思わなかった、助かった俺は刺繍の素人だからね。


手を針を持ったまま魔法で針を操作し刺繍する。これでは他人の目では俺はただ刺繍しているだけで、実はずっと魔法の練習している、一石二鳥ね。


その後はドラゴンさん2回目の襲撃、あの時もし俺ドラゴンさんと合流できれば良いですが、あの時体まだあんまりうまく動けないし、メイドさんたちに掴まれたら抜けないよね、これは仕方ない。


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起きたら3日目



3日目は丸一日刺繍で磁力や重力の魔法の練習をしました、一生懸命頑張ったわ。あの日の夜、自分自身を浮ぶことに成功した、練習する度にその魔法を改良し、魔力の燃費は更に減った。感動した、ホントに全俺が泣いた。そろそろ次の必要魔法を練習しないと、あの日嬉しい過ぎで魔力を使い切ったあとすぐに寝た。


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起きたら4日目



マリアンヌやメイドたちと結構仲良しになったので、メイド服をねだる子になる時間だ。王女が欲しいと命令すればすぐ貰えるが、この場合絶対メイドたちは上に報告する、怪しまれる。だから俺はメイド服を可愛く改良すると言い訳し、いくつかのゲーム内で見たメイド服を描きました。そうすれば、ただの刺繍に興味があって、メイド服を可愛く変えたい姫様に見える…よね…そう見せたいデス。


その日の夜、もうひとつの必要な魔法を習得しました、魔法障壁です。ドラゴンさん2回目の襲撃で城で張ったあの半透明なバリアの様なものを見て、空を飛ぶと風圧で目を開けないのでは?そうですよね、自分自身を魔法障壁を張ったら行けるじゃない?すぐに試しました。イメージは簡単、ロボットゲームやアニメを山程見ただけだから、あっさり魔法障壁を使えた。もっと固くなりたいから透明な防弾ガラスをイメージすれば更に固くなった、それでこのミッションもクリア。


そう言えば、あのハゲ以外誰も来てなかったね。あの王や傲慢姫も俺が記憶喪失の事を確かめるために会いに来ると思って、色んな対策案を考えたのに。マリアンヌの話ではドラゴンの襲撃で忙しかったらしい。まあ、来なければそれはいい、記憶喪失がバレる可能性も減る。


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起きたら5日目



はぁ…ようやく軟禁された意味がわかったよ、召喚された目的もね。あいつらは異世界人の体と血が欲しいです。


多分トリエリさんが以前言った、前回派遣した人はこの世界の人より強い、現代の知識もある。だからこの世界の人は異世界人の力は神の力と思ったのだろう。王の血と異世界人の血を持つ帝国の孫は絶対超人の力を持ってると間違いないぜって事ね。


それに俺の体を乗っ取ったら、異世界人の機嫌を取る必要なし、超人はそのまま味方になる。実際この前ユウジはドラゴンも撃退できたし、あとは子供を産む機械即ちこの王女の体。こわ…俺は俺に侵されることを想像すると鳥肌が立つわ…。


俺とあの英雄の婚姻は3日後のパーティー内で正式に決まる。その様子ではそっちも何か焦ってると思う。良かろう、婚姻パーティーの時はこの王城パーティー会場以外で一番警備が弱い時、Xデーはそのパーティー開始直後に決定。


そう考える間に刺繍段々早くなった、うまいのは別として、マリアンヌとメイドたちが俺に優しくお世話してくれたので、この刺繍をハンカチにし皆にプレゼントしますか、この人達にもできる限り幸せにしたい。マリアンヌのハンカチは…このハンカチでいいのか?いや、一番上手いやつを頼む…作り直すか。


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起きたら6日目



勝ちました、メイド服ゲットだぜ、すぐに着る方法と髪の毛の梳かし方をメイドたちに教わった。べ、別にメイド服を着たいわけじゃないからね!これからこのメイド服は脱走あと新しい服を買う前に長く付き合うものだから、大事にしないとね。


その日の午後、部屋のベランダでお茶を飲んで逃走ルートの再確認、周りに隠れる場所や多分危ない場所、さり気なくマリアンヌに西の方向を聞きました。それと異世界モノの定番魔法、レーダーみたいな魔法で周辺の魔力を感じることができないかと、レーダーを想像し魔法を展開すると、一発成功で周りの魔力を感じました。


これ多分この体が元々それっぽい魔法が使えるだろ、そうでないと一発はできないと思う。これを使えば、森の中でも多分危険を先に感知できると思う。やっぱりこれは異世界の汎用魔法ですね。


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起きたら7日目



今日マリアンヌとの朝食のあと、マリアンヌのお腹に淡い黒いモヤモヤの影が見えた、思わずマリアンヌに聞いた。時々ストレスで胃が痛そうみたい、でも俺がそれを見えるから、それを消せるのでは?思わずマリアンヌのお腹のモヤモヤに手を触れ、触れた瞬間モヤが消えた、多分…多分治ったのでは?何だろ、この体の能力か?うん、良い能力だからそれでいい、考えないようにする。


いよいよ明日ここから脱走、だから体力温床のため今日はマリアンヌに休みと伝えた。ベランダで周りを見て逃走ルートを何回かイメージする。


明日の計画はこんな感じ、夜パーティー開始時警備が一番弱い時間で、マリアンヌの前で浮遊魔法を使って、俺は透明な人っぽい何かが小脇に抱える様な演出で誘拐され、ベランダから上に飛び去る。東に逃げたと見せかけて高い場所で東に向かって光魔法を撃つ、最後は反対方向の西に飛ぶ。う、うまくいくといいね、やっぱり明日“水玉”を夜まで残したほうが良いですよね、身体が痛いですが長く飛べる。


あ〜メイド服はどうやって持ち去るの?えーと、畳んでドレスの中に隠す?それしかないみたい。あれから万が一のために脱走計画の色んな展開を沢山考えて、策を練る。当日は最悪強引に飛んで高い山まで逃げます…ですがその後絶対手配され、逃げ回る生活になるのですが、できればその方法を取りたくない。


それと一番心配なのはマリアンヌだ。もし彼女がユウジに会えれば、あの洞察力では絶対知ってはいけない事に気付いたと思う。何故マリアンヌの洞察力が高いと知っていた?当然だろう、姫様の生活のとき、俺がやりたい事を事前に読んで、すぐに手配した。お風呂に入りたい時、お湯はすでに用意した、腹減った時はすでにスープを用意した。それに他のメイドたちにも彼女の凄さを聞きましたよね。


あの悪役傲慢姫は身体が入れ替わった事をバレたくないために、絶対彼女を冤罪を被せて殺すだろう。うん~マリアンヌに忠告する?でも忠告すればあの王様に報告しない?


マリアンヌに最初に会った日、彼女の無表情の態度を見れば、元の姫への忠誠心はあんまりないと思うし……もう!言い訳はいい!…俺は彼女をこの国から離れたいんだ、彼女に言うか!


夜、マリアンヌにハンカチを渡した。まさかマリアンヌも自分は知ってはいけない事を知っている事にすでに気付き、俺はそのままマリアンヌにこの国を離れろと伝えた。


どういうわけか、彼女に“アイリス”と言う名前ももらった。何かちょっと嬉しい…例の計画はもう一人を増やし一緒に逃げますか。


それから今日になり、知ってる通り、先程マリアンヌと一緒に逃走した。


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長く飛んで、一気に魔の森に行くつもりだったが、流石に疲れたので、視野の広い平原で降下し一休みした。


“水玉”の痛みを一日我慢した甲斐があった。こんなに飛んだのに、水玉の魔力しか使ってない、日が昇る前にドラゴンさんのいる森に到着できるでしょう。ちょっと休んだら、再び出発する。


こんなに余裕があるなら、マリアンヌも連れて行くべきだった。流石に今戻るのはできない、彼女のことについて、もし縁があればまた会えると思う。


休みが終わり、俺は再び西に飛んだ。何時間飛んだのかはわからない、ただもう帝国の国境は越えたのは確かだ。徹夜のままずっと西に飛んだ。太陽が昇ったと同時に、俺は大きな街と城らしい物を見えた。


(多分そこはカウレシア王国王都でしょう、こんな大きい城もあるし。では南西に…。)


南西を見ると、俺の目の前にはアマゾンのような大きな森がある、その森の中で大きな黒いモヤモヤな影が見えてきた、勘ですがあれはドラゴンさんだと思う…今行きます、もうちょっと待ってください!

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