第13話 運命の8日目

俺が起きったら8日目


昨晩マリアンヌから新しい名前をくれた。流石に俺はおっさんで貴国の英雄雄二です、と言われたら今までの関係は絶対壊されるでしょう。今の俺はアイリス、うん…アレだ、恥ずかしい。


この一週間俺とちょくちょく過ごしたメイド7人組にも色々良くして貰ったから、7人組は先日完成したハンカチをプレゼントしたよ、それと最後にマリアンヌにもようやくハンカチを渡した、一応全部作る時はみんなを幸運に恵まれるようにと念じました、意味はないがほんの少しの気持ちです。


起きてから一週間、色々準備しました。思った以上に楽しい修練生活です。昨晩マリアンヌとの対話で彼女の反応を見ると、まさかマリアンヌがホントに自分自身の危ない未来を感じたとは思わなかった。できる女の勘はホントにすごいね、多分俺はホントの王女ではないこと最初の1~2日すでにバレたと思う。ですがマリアンヌはあの地獄から俺を救ってくれた恩人だ、この一週間彼女と沢山話した、彼女はいつも無表情ですが、ホントはいい人だ。だからこそお互いの生きる確率を上げるため、俺の計画に参加してもらおうと決めた。


朝、マリアンヌはいつも通り俺を起こした。いつもはすぐに魔力放出するのですが、でも今日は夜まであの“水玉”をそのままキープする予定です、“水玉”が体中に段々大きくなって泳いでいるから身体中痛みが来る。痛いですが、多分神経系統は魔力暴走時、痛覚はすでに麻痺して今は我慢できないレベルではない。この“水玉”も俺の魔力だ、念のため魔力も余裕を持ったほうがいい。


「おはようございます、姫様。今晩パーティーがありますので、他のメイドたちにはパーティーの方に回りました、だから今日は自分だけでご奉仕致します。」

「おはようございます、マリアンヌ。昨晩話した“例の件”、成功率を上げるのために、私の計画に入りませんか?」

「え?」


他のメイドの件は明らかにマリアンヌの手配だと思う、今日も一日他のメイドさんがいない、これは好都合だ。一緒に朝食をした時、俺は俺が考えた脱走計画を小さい声でマリアンヌに話した。昨晩考えた、もし役者がひとり増えればそのメリットを説明し、そしてマリアンヌも自分の脱走方法を俺に説明しました。驚きました、まさかマリアンヌも同じく今日脱走する予定とは、恐ろしい子!でもひとりの力では限界がある、だからここは一緒に協力した方がいい、漫画ではいつも言ってた理論だ、ほら、簡単でしょう。


「姫様、ひとつお伝えたい事があります。」


マリアンヌが小声でそう言ったので、多分やばいことだ。


「はい、何でしょう。」

「今朝メイド長からこれをわたしに渡しました。」

「これって?」


マリアンヌの手には小さなカラス瓶、中に明らかに何かの液体…まさか…薬品?


「睡眠薬と思われます、メイド長から今の姫様は他人に会えたら、また魔力暴走の可能性があるので。それと元々の姫様の性格では大人しく夜伽するはずないからと言って。夕食にこれを…。」

「……。」


うわ〜、流石に無言になった。もし俺今日逃げないと、知らないうちに俺は“俺”にあんな事やこんな事され…そして知らないうちに妊娠する。お前ら人間じゃねぇ!!


「言ってくれて、ありがとう。マリアンヌもこの瓶を早めに処分しないとだめですよ、絶対これを言い訳として、王族に害をする容疑であなたを処すると思うわ。」

「……わたしもそう思います。」


今度はマリアンヌに黙り込んだ。それもそうね。マリアンヌにとって、社長からこの“知らない誰かが横領した証拠”が入ってるUSBはお前が保管してくれと言い渡されたのと同じ。断れないし、何かあったら絶対すべての罪を自身に被せるかを知りながらUSBを取るのだからね。


俺はマリアンヌが持ってる瓶を取った。


「やっぱりこの瓶は私が持つわ、万が一急にあなたの事を調べたらこの証拠を見つからないと、少しでも時間を稼げるわ。」

「わかりました、ありがとうございます。」

「それと調理場で仕事しているお友たちがいると言いましたわよね。」

「はい、馬車を貸すのは出来ませんが、彼女はわたしを馬車に隠れて城の検問を躱して下町に送り出す予定です。」

「朝食も終わったし彼女に連絡してお皿を回収して、ついてにマリアンヌ逃走用の鞄も彼女に渡し、下町のどこかに隠すことはできます?」

「多分…できると思う。わたしがワゴンに鞄を隠して彼女に持っていくの方がより安全では?」

「いや、今日一番危険なのはあなたなのよ。」

「!!」

「彼らはあなたにこの瓶を持たせた、だから何時でも冤罪をでっち上げてあなたを捉えることができる。だからできれば今日一日この部屋から出ないように、ここには体面上私がいるですから。」

「そ、そうですか、では護衛にお菓子を持ってきてっと彼女をここにお呼びいたします。」

「うん、そうでいいわ。 はぁ~今日は何事もいつも以上気を付けないと駄目ですね、まさか帝国はこんなにえげつないとは。」


それから、例のマリアンヌの友人はワゴンでいくつかのお菓子を持ってきました。マリアンヌは自分が嵌められた事と鞄の事を彼女に説明し、別れの言葉をかけた。彼女はワゴンに鞄を隠して、下町のとある場所にその鞄を隠したと思う。彼女…マリアンヌの同期らしい、見習いから今までずっと仲良しみたい。


昼になった。正直すぐにでもここから逃げたい。ですが、真昼に逃走するのは危険すぎ、パーティー前だから警備も厳重、何かあったら衛兵たちもすぐに対応できる、夜まで我慢だ。夜になると警備の大半はパーティーに集中してると思う、それで俺もマリアンヌもより安全に逃げられる。


私たちは今、私の部屋と繋がってるマリアンヌの部屋に隠れて、今晩の計画をリハーサルしている。ここでマリアンヌがこう聞かされた。


「あの、姫様は逃げたら何処に行くつもりでしょうか?」

「私?カウレシア王国に行くつもりですよ。」

「そしたら、ご一緒に行くのはいかがでしょうか?」

「嬉しい提案ですが、できないとは言えないが、私ここから逃げたらすぐにカウレシア王国の魔の森にするつもりです。ふたりで移動すると多分"魔力"が足りないと思う。」

「え?!そこは危険な魔物が多くと有名、危な…」

「私の助けを待ってる方がいるです。」

「あんなところに誰が…。」

「ドラゴンさんですよ。」

「え?!ドラゴンって先日の?」

「はい、あの時は私を助けに飛んてきたわ、でもあののせいで、今は死にかけてるの、だから出来るだけ早く行かないと。」

「そ、そうですか、はぁ~何でしょうか、今何を言っても多分もう驚きませんわ。」

「ごめんなさい、言えないことは多くて。」

「いいえ、良いんですよ。確かに姫様の計画ではすぐにも行けますね。わたしは大丈夫です。計画通りでは追いかけてる衛兵もいないと思う。ですが姫様は魔の森の場所はわかりますか?」

「カウレシア王国王都のあたり…と…思う。」

「その王都の南西の馬車半日の距離があるですわ。」

「あ、ありがとうございます、助かります。」

「姫様とは言え、魔の森は危険な魔物が多くて。例えが使えるでも危ないです、何かあったたらすぐに逃げてくださいね。」


実は昨夜夢の中で、トイエリさんから助けを求められました。


“ドラゴン”


“助け”


“浄化”


“王国”


“王都”


”魔の森”


“お願い”


今回の紙にこの単語だけ見せて、返事もできず、その空間自体すぐに消えました。トイエリさん、絶対無理しているよね。ドラゴンさんも俺を助けるために怪我したのだから、絶対助けに行きます。


それと念のため、俺はあの傲慢姫のアクセサリーをいくつマリアンヌに渡したんだ。マリアンヌの友人を信じなくはないが、ホントに何かあったら鞄の回収を諦め、そのまま逃げる、その時は金は必要です。だから傲慢姫の宝石をいくつかいただきました。盗んだのではない!あれは今の俺のモノだ!その後今晩のために夕食は多めに食べる。

いよいよ日が暮れる。


今夜は曇り、夜空が見えなかった。

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