第8話 ヤツが来た

「姫様、おはようございます。朝は魔道士団長様の診察がありますので、準備をお願い致します。」

「う…うん…。おはようございます、マリアンヌ。」


翌日の朝、マリアンヌがカーテンを開いて起こされた。朝最初にやること…うん、水玉ですね。実は起こされる前にすでに水玉の痛みで起こされた。集中して身体中にいる余った魔力を散布する。はぁ…あのハゲ野郎が魔力暴走後の体の状況を診察するために来るらしいです。考えるだけでもう鬱だ。


今日は青色の貴族っぽいドレスに着替えた。昨日のワンピースは動きやすくてそっちではだめ?だめみたい。昨日は病み上がりだから、すでに体に負担がかからないように軽い服を選んだみたいです。え?昨日起きたら今日でもう体に負担がかかっていいの?理不尽過ぎ。


気を取り直し、同じく淡い味の朝食を食べたら、あの野郎が来る前にテーブルで本を見るふりをする。昨晩考えた対ハゲ作戦はどこまで行けるのかは分からないが、何かあったらアドリブするしかない。身体もうまくコントロールできない今は記憶喪失フリをすることは命の綱だ。


これからやることを何回もイメージする、そしてあらゆる可能性や展開も考える。あの地下室で会った人との対面は危険だ。万が一記憶喪失のことがバレて、監禁され、一生この国から出られなくなる。油断はダメ、ゼッタイ!


(…そろそろ来ると思うが。やばい、はじめて人の前にプレゼンするのように緊張する…あの野郎はジャガイモ、ジャガイモ…)


「姫様、魔道士団長イライジャ様が到着いたしました。」


来る!ヤツが来る!!!


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イライジャは皇帝直属近衛騎士1名と共にアイビーの部屋に入った。マリアンヌはすぐに彼らを出迎えた。


「こちらです、イライジャ様、姫様がお待ちしております。」


今日のイライジャは気分が悪い、昨日のドラゴンの事後作業や皇帝との会議、毎日王女に魔法授業、魔法研究する暇は全くない。


「…ホント、そのまま寝ればいいのに、昨日は急に記憶が無くなったと報告された、信じるかよ。こっちはお前のせいで研究の時間も無くなったよ…」


聞き取れないように囁いてたのでマリアンヌはそのままイライジャを今はアイビーになった雄二の元に案内した。


「姫様、こちら魔道士団長イライジャ様でご…」

「…………い…いやーーーー!!来ないで!!」

「姫様!!」


アイビーはイライジャの顔を見ると、椅子から落ちた。青ざめた顔でゆっくり後ろに下がりつつ叫んだ。


「マリアンヌ!…マリアンヌ!…マリアンヌは何処?」


アイビーはマリアンヌを呼んだ、当然マリアンヌはすぐにアイビーのそばに…。


「こちらです、姫様、マリアンヌでございます。」

「いやーーーーーーーーーー!!来ないで!」


マリアンヌは姫様のこの反応はイライジャのせいと判断し、イライジャを見せないように彼女の頭や体を自分の胸に押し付ける。


「ここです、マリアンヌです、もう大丈夫です、わたしはここにいますから。」

「あ…あ…マリアンヌ、マリアンヌ。」


イライジャはあの自分のことを見下すな高慢王女の青ざめた顔を見たあと、彼の報復心が動いた。


!人の顔を見るだけでこんなに怖がるのは、さすがに傷つきます。はただ診察に来てもらっただけで。、まだ何もしてませんよ。」


おもちゃを見つけたイライジャの笑った顔を見たマリアンヌは、アイビーを抱きしめたままイライジャにそう言った。


「イライジャ様、姫様は貴方様を恐れているみたいなので。申し訳ございませんが、今日はお引き取りいただきますようお願いいたします。」


隣の近衛騎士もそう感じ、すぐに退出すると姫様に一礼をする。


「申し訳ございません、すぐにイライジャ様と共に…」

「ひどいなぁ、昨日の朝もだいぶ待たせてくれたなのに、今日はすぐに帰れと言われた、ホントにひどいなぁ。」


イライジャはわざとアイビーの方向に一歩踏み出した。


「いやーーーーーーーーーーーーーーー!!来ないで!」


アイビーの反応で他のメイトたちも姫を庇うような形でイライジャとアイビーの間に入った。部屋外で待機していた護衛騎士も何か問題が起きたと思って、すぐに部屋に入ってきました。彼らが見たのは床に座り込んでる姫様が専属メイドに抱きしめ、他のメイド数名が魔道士団長と近衛騎士から姫様を庇っている状況。どっちに問題があるとは誰にもわかる、ですが魔道士団長と皇帝直属の近衛騎士は上の人で、その中に介入するのは難しい。


ここで近衛騎士はこのままイライジャの暴走を抑えないと不味いと判断し、この問題児を部屋から出すのは最優先事項と護衛たちに命する。


「イライジャを部屋の外に連れ出せ!」


近衛騎士は護衛に命じましたが、返事が来ない、それに何故か護衛たちは跪きました。それと姫様とイライジャの間のメイドたちも、ひとり、またひとり目眩したのように床に座り込み、動ける人はこのを見惚れたように動きが止まった。


「アハハッ!何だこれ!何だこの魔力は!」

「いやーーー!頭痛い…来ないで!いやーーー助けて!」


虹色なキラキラが部屋内で粉塵のように溢れている、近衛騎士は魔法耐性が高いので故にこの環境では影響がない。すぐに冷静さを取り戻し、イライジャを部屋から連れ去った。彼は部屋の外で大きな声でマリアンヌにそう伝える。


「マリアンヌ嬢、何かあったのはわかりませんが、姫様が落ち着いたら、私と共に陛下にこの件についてご報告をお願いします。」

「承知しました。」


マリアンヌもすぐに返事し、平気なメイドはこれは魔力濃度が濃過ぎるのを知ってるので、すぐに窓を開け風魔法で換気した。浮いてるキラキラが段々なくなり、今も怯えたまま頭を押さえたアイビーを見て、マリアンヌはアイビーを抱きしめた手を緩んたことなかった。


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(や、やり過ぎだーーーーーーーーーーー!!)

(え?なんで?なんで?俺はただちょっといつも以上に魔力を放出し、ただ周りの空気が冷たくなるようにイメージしただけなのに。何あれ、あのキラキラはなんだ?)

(メイドたち、ホントにごめん!気持ち悪いのは多分俺のせいっぽい。)


「姫様、もう怖い人は無くなったよ、ゆっくり呼吸して。」


マリアンヌの言う通りにゆっくり呼吸したら、もうそろそろお芝居しなくでいいと思って。最後の芝居で、ぱっと目を覚ましたように見せた。


「私はなにか…。」

「姫様、大丈夫でしょうか?」

「ええ、大丈夫ですわ。マリアンヌ、ありがとう。」

「いいえ、当然のことです。」

?!大丈夫?!」

「大丈夫です、魔力濃度が濃くので彼女たち少し目眩だけです、換気しましたのですぐには立てますでしょう。」


マリアンヌに支えられて椅子に座ると、座り込んだメイドたちも段々元に戻った。


「皆さん、大丈夫ですか?もうちょっと休んでいいよ。」


(メイドたち皆いい人だから、傷つけなくでホントに良かった、くっ~罪悪感が。)


落ち着いた俺を見て、マリアンヌは先程の件について俺に聞く。


「あの、姫様、先程の事を思い出しましたか?もし思い出しくないでは思い出さなくでも良いわよ。」

「えっと、何か大きな黒い影が近づき…何故かその影から逃げないと思って。気がついだらマリアンヌに抱きしめられた。」

「あの影はもうなくなりましたので、ご安心を。」

「マリアンヌ、護衛たち、皆さん、守ってくださりありがとうございます。」


雄二は思わずメイドたちの前に立ちお辞儀しました。いつもアイビーにご奉仕していたメイドたちと護衛たちだから、急にこんな素直に感謝されて、対応がわからなくなった。横にいるマリアンヌに目線で助けを求める。


「姫様、わたしたちは使用人なのでお礼は必要ないです、王女らしくでお願い致します。」

「え?うん…。」


(年下のメイドたちに守られでホントに情けないな。)


「姫様、申し訳ございませんが、ひとつお伺いしたいことがございます。姫様は先ほど魔法を使いましたでしょうか?」

「うん?…魔法…ですか?魔法の使い方がわかりません、そもそも魔力…らしいものも感じません。」


(この質問はもう想定済みです。まさかマリアンヌに疑われた?一応昨晩徹夜で考えた脱走計画(仮)はあるが、今の状態ではすぐに実行するの無理がある。)


俺はドキドキしながらこう答えたが、彼女は何か考えて、結論を出てきた。


「魔力暴走の副作用がもしれないわね。」


(何だがマリアンヌはひとりで何かを納得したみたい、多分セーブ?)


「姫様、申し訳ございませんが。この件について自分は近衛騎士様と共に陛下にご報告致しますので、少々お時間をいただきます。…皆様、姫様をお願い致します。」

「「かしこまりました。」」


マリアンヌは部屋の外に出た。まだ朝早いなので、“あれ”を早めに実行しよう。

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