平穏な生活があれば私はもう満足です。

第7話 はじめての王族生活

ドラゴンの襲撃は全く実感もなくのまま終わった。

先ほどマリアンヌさんが”ゆっくり”と言い伝え、お食事を持ってきた諜報メイトたちが戻った。どうやらドラゴンの襲撃時、ホントに俺を部屋から出さないように禁止令を出したね。魔力暴走のせいで、部屋での療養は最優先事項みたい、嘘くさい。

ドラゴンの撃退に成功したのですが、また襲ってくる可能性もあるので、この帝国の帝都内の騎士と兵士たち全員未だに警戒態勢中。メイドたちの説明ではドラゴンは伝説上の魔物みたいで、文献には記録はあるが、実際は５００年以上誰も見たことないらしい。さらにさらに噂ではドラゴンを撃退したのは黒髪黒目の強者らしい。茶番だわ…これ。

ちなみに俺を診察する予定の魔道士団長…多分地下室にいるハゲのアイツだろ。ドラゴンの件で今日は来れなくなった、明日の朝来ると伝言が来ました、来るなボケ。

「申し訳ございません、姫様。陛下は姫様を大切にするのは有名なので、きっと御身のお体を心配だからこう命じたのです。」

「うん…平気…ありがとう。」

「こちら食べやすいなスープです、お召し上がってくだい。」

「マリアンヌ…ありがとう…。」

うん、久しぶりの食事、スープに少し肉や野菜もあって、淡くて美味しい。でも腕はうまくコントロールできないから、結局マリアンヌさんが食べさせてくれた。食べ終わった時、外はもう暗くなっていた。

その後はお風呂タイム。元男性の俺だから絶対自分の身体をエ○いことする？いや…こんな一歩間違えたら死ぬ環境では何もしない。前も言ったでしょう、手足未だに思うままに動かないし、それに三次元にはもう興味が無くなったのです。

貴族…いや、王族のお風呂はホントにメイドさんが一緒にお風呂場に入って手伝うのだ、すごい。お風呂中メイドたちに手足をマッサージされた、気持ちいい。

お風呂中、俺はずっと考えている。何故手足があんまり効かないのか？俺的な見解では身体交換したせいだと思う。多分ね、この身体に残った動作の記憶と魂の記憶が混ざったから神経系統が混乱した、手足の長さが違うからね、筋肉の力加減も違うよ。オタク的に説明するとロボットゲームで最強機体を使い慣れた時、急に性能最弱の機体に乗せられたような感じ、身体が俺の指示に追いつかないみたいな。

言葉も同じ理由で説明できる、この身体の脳内にはこの世界の言語が深く染み付いてる、だから耳で聞いたらわかる。素人な俺でも言いたいことをよく考えると単語くらいは話せる。今は単語しか言えないですが、本を読めばすぐに吸収できると思う、ですが脳内の他の記憶がわからない、この世界の思い出のような記憶は魂にあるのか？

お風呂が終わり、ワインレッド色のスリップに着せられ…これ１７歳で着るものなの？触り心地は確かにいいですが…。それより流石にいつも単語のみで話すのは良くないと思う。だから寝る前にベッド隣にある本棚の本を読み始めた。

予想通り、本内の文理を簡単に理解でき、箱を開けたかのようにこの世界の言語をマスターしたと思います。え？待て待て、ではあの悪役傲慢姫も同じく日本語を習得した可能性も十分ある！…この世界には日本語の本がないので、多分前の俺みたいに単語のみしか話せないよね。絶対、絶～対～日本語を使わないように、うっかりでもだめ…ゼッタイ。

すぐには慣れないね、話したいことはこのかわいい声の主が代わりに話してるような感じで、違和感が働き過ぎ、脳がバグるわ。あの地下室っぽい場所で聴いた、あの姫様の声ってもっと威厳があるのですが、元々はこんなかわいい声だけ。

それと例の水玉が今日一日何回も出できました、これによって俺が出した結論は多分、俺の魔力自然回復力が高すぎるせいであの水玉は出てきたと思う。ゲーム脳で解析すると、元々魔力満タンしたらこれ以上の魔力は貯められない、魔力の自然回復力は魂の能力として仮定します、身体交換した俺の魂内でセッティングした上限はまだなので、そのまま回復し続けた。水玉がある状態は全身痛いから、だからずっと魔力を放出する必要がある…何か魔力の無駄遣いみたい、勿体ないなぁ。

「姫様、そろそろ寝るのお時間でございます。」

「もうこんな時間ですか、マリアンヌ、今日はありがとうございます。あなたが側にいてくれてホントに良かったです、明日もよろしく頼みます。」

「え？いえ、もったいないお言葉をいただき感謝します。…では光を消します。」

「ええ、お願いしまするわ、あなたもお休みなさい。」

魔道具の光が消え、月の淡い光が窓から部屋を照らしてきた。俺は見た、今日起きたらずっと無表情のマリアンヌさんが微笑んだ。良い社員には褒めるべきです、ヨシ！

「おやすみなさいませ、姫様、ではお先に失礼致します。」

マリアンヌはこの部屋に繋がってる隣の自室に戻り、俺は窓の外の月を見上げた。

（この世界は地球と変わらなく月は一つだけですね。ホントに異世界に来たが、それともこれは実はいつもの夢（校長室）の中の夢（ここ）なのか…校長室の扉を探してそこから出るとまたいつもの日々に戻れる。いやいや、バカの事を考えるな、逃走方法を考えろ、何か嫌な予感がする、できる限り早めにここから離れないと。）

俺はベッドに乗り、脱走計画を考え始めた。

------------------------------------------------------

マリアンヌは魔道具の光を消し、アイビー姫の部屋と繋がった自室に戻り、自室の魔道具に魔力を送り淡い黄色の光を付け、ため息をした。

（はぁ～、今日ホントにあの姫様に調子狂わせたわ…。まるで別（・）人（・）。）

（７年間姫様に礼に言われたことなかったのに、今日は沢山言われた。それに最後のアレはなによ…長年の頑張りを認めてくれたの感じ…ま、まあ～悪くないわ。）

（それとなに？あの笑顔、はじめて見た。まさかあの残酷な黄金姫がこんな笑顔を出せるとは。）

（はぁ～そのままずっと記憶喪失のままではわたしのストレスも減り、仕事もやりやすいと思う。）

（そしでまさかのドラゴン…ホントに死ぬと思ったわ。）

（もう～胃が痛くなる。早く寝ましょう。）

メイド服を脱ぎ、胃薬の薬草をカップに入れ、魔法で水を生成し、一気に飲んだ。そして寝巻きを着替える。

（ですが、あの娘大好きな王様、魔力暴走したから、まさか一回もお見舞いしてくれなかったわ。それとあの禁止令…。）

（やめやめ、いちメイドの範疇ではないわ、ア（・）レ（・）は誰でもわたし今まで通りご奉仕だけでそれでいい。）

光を消し、マリアンヌはそのままベッドで眠りました。