第4話 福理vs金属生命体②

おもむろに福理が口を開く。


「ではお互いに現状確認から致しましょうか。」


同意ドウイスル。ワタシトシテモ、イレギュラーナ、コノ状況ジョウキョウヲ、理解リカイスル必要ヒツヨウガアル。」


福理は胡座で座り、ギッゾォーテもそれにならうように座る。ギッゾォーテの体が擦れ、不快ではない涼やかな金属音が鳴る。


「座り方があなたと私でも共通する部分だとは思いませんでした。」


「コノすわハ、オマエニナラッテヤッテイルダケニスギナイゾ。」


福理が苦笑する。


「どうにもあなたと共感できる部分を探すのは難しそうですね。」


コトナル種族シュゾクデハ、当然トウゼンダロウ。」


「まぁとりあえず本題に入りましょう。私は

現在、とある実験室で、おそらくですがあなたの同胞を倒すための駒を作りだす実験の被験者となっています。」


「フム。ソノ過程カテイデ、コノワタシ接触セッショクタシ、ワタシノ存在格納領域ソンザイカクノウリョウイキイタッタトイウワケダナ。」


「シカシ、不可解フカカイテンガアル。オマエガワタシ対話タイワチカケテイルトイウコトハ、ナンラカノ目的モクテキガアッテノコトト推察スイサツスルガ、ソレナラバ、オマエニヨル、存在格納領域ソンザイカクノリョウイキヘノ、干渉カンショウ意図的イトテキデアルコトニナル。ソレニ、対話タイワヲシテイル。ツマリ、ソノ目的モクテキトイウノハ、ワタシナニカヲサセルコトヲ目的モクテキトシテイルノデハナイカ?ナラバナゼ「同胞を倒す」トイウ言葉コトバモチイタ?到底トウテイ協力キョウリョクアオゴウトシテイルモノノ、言葉コトバデハイヨウニオモエル。不可解フカカイダ。」


福理はギッゾォーテへの警戒レベルを当初の予定通り・・・・数段階上げた。これは不用意な言葉を語るべきではないと。それと同時に期待をした。


福理は話を若干切り替える。


「まぁ、私の目的はさておき、この存在格納領域?に何故あなたはいるのですか?」


ギッゾォーテが語る。


存在格納領域ソンザイカクノリョウイキトハ、我々ワレワレ個体番号コタイバンゴウ紐付ヒモヅケサレタ、存在情報ソンザイジョウホウ格納カクノウスル場所バショデアルトサレテイル。我々ワレワレハコノ、存在格納領域ソンザイカクノリョウイキカラ3次元物理世界ジゲンブツリセカイヘアクセスシ、個体番号コタイバンゴウ同一ドウイツ個体番号コタイバンゴウツ3次元物理世界上ジゲンブツリセカイジョウ肉体ニクタイリルコトニヨッテ、3次元物理世界ジゲンブツリセカイ現出ゲンシュツスルトイテイル。ワタシガココニ理由リユウハ、ワタシテラレタ存在ソンザイダカラダロウ。」


福理は息を呑む。


「では...あなたたちは3次元物理世界上の肉体が滅んだとしても、存在情報さえあればいくらでも蘇れるということですか?」


「ソウイウコトダトワタシオモウ」


「「切り捨てられた。」とは?」


文字通モジドオリノ意味イミダ。ワタシ命令メイレイ優先順位ユウセンジュンイスコシオカシクテナ、本来ホンライ存在格納領域ソンザイカクノリョウイキ干渉カンショウデキル存在ソンザイハ、最優先抹殺対象サイユウセンマッサツタイショウトシテ本体ホンタイツウジテ中枢存在チュウスウソンザイツタエナケレバナラナイ。私以外ワタシイガイ同胞ドウホウナラバサキツタエテイタハズダ。ダガワタシハ、ツタエルコトヨリモ、オマエトノ対話タイワエランデイル。ツマルトコロ、命令系統メイレイケイトウニオイテ自己意識ジコイシキ最上位サイジョウイニアル存在ソンザイナノダ。」


福理が安堵しつつも、心の中で若干舌打ち・・・をする。


ユエニ、ワタシテラレタノダ。モットモ、「テタ」ノホウタダシイガ。


福理がいぶかしむ。


「「切り捨てた」とは?」


ワタシ同胞ドウホウヲアル理由リユウ見限ミカギッタノダ」



ヘンダトハオモワナイカ?ワタシハコレデモ命令系統メイレイケイトウのバグニヨッテ、同胞ドウホウナカデハモット対応力タイオウリョクミ、感情カンジョウクワシイト断言ダンゲンデキル。ソレハオマエカラ受信ジュシンシタ情報ジョウホウ処理ショリデキタコトガ証明ショウメイニナルダロウ。ホカ個体コタイデハ情報ジョウホウ不可解フカカイサト膨大ボウダイサニ多重人格タジュウジンカクノヨウナモノヲ発現ハツゲンサセ、フリーズスルノガオチダ。ソンナワタシデモ、オマエノタマシイカラノ情報ジョウホウラナケレバ理解リカイデキナカッタコトガ沢山タクサンアル。ダトイウノニ我々ワレワレハ「アステロイズ」ヲ名乗ナノッテイル。個体識別名称コタイシキベツメイショウトシテデハナク、敵ニ伝エル総称・・・・・・・トシテ。コレハ非合理極ヒゴウリキワマリナイ。名乗ナノ意味イミ見出ミイダセルホド我々ワレワレ感情カンジョウヤイメージリョクトイウノハ成熟セイジュクシテイナイハズナノダ。ソレハホカ同胞ドウホウ接触セッショクシテミレバ、スグワカル。」


福理はギッゾォーテの警戒レベルを想定以上・・・・に引き上げつつ、その発言に納得した。


それと同時に自身の目論見が軽く看破されかけたことに焦りを覚える。


実は福理は、以前にアステロイズを1度見たことがあるのだ。


しかも、その場にいた3体のアステロイズを単独・・で再起不能にした実績を持つ。


この偉業は記録にも、誰の記憶にも残っていない。


なぜならば福理がやったことは存在格納領域へ干渉し、そこに格納されていた存在3体を破壊したのだ。


その際に福理は気づいたこともあった。それは存在格納領域内のである。


福理は存在格納領域内でアステロイズが鳴らす音は不快指数に応じて音の不快さが上がっていくのではないかと推察している。


現に福理が3体を滅ぼした際には悲鳴や断末魔と黒板を爪で引っ掻いた音を数十倍にしたような音が響き渡ったのを覚えている。


福理はあわよくばギッゾォーテも同様に滅ぼそうと考えていた。心無い機械ならば、己の信条・・を適用するまでもないと考えて。


しかし、ギッゾォーテは福理にまず話しかけるという動きを見せ、福理の過剰情報を存在にロードするという攻撃・・に耐えて見せたのである。故に福理は対話・・を選択し、敵意を抱かせないように動いたのだが、まさか、自身の攻撃が、「攻撃である」と看破されていたことに焦りを覚えたのである。


しかし、それでもなお、福理はギッゾォーテが対話を続けていること、その存在が、魂が嘘の色を帯びていないことでやっと対話の意志を固め、腹をくくった。


ここまで全く雰囲気の動いていないはずの福理を見て、ギッゾォーテが笑ったように語る。


「ヤット、戦闘体制セントウタイセイイタカ」


福理の背に一筋の汗が流れたような気がした。


ハナシモドソウ。ツマリダ、ワタシイタイコトハ...」


ギッゾォーテの纏う雰囲気に、鳴らす音に若干の不快さが混ざる。



我々ワレワレウラニハ、何者ナニモノカガイル。ソイツハ感情カンジョウ非合理ヒゴウリトイウモノヲオソラクツヨ理解リカイシタウエデ、オマエタチノ種族シュゾク我々ワレワレモチイテ攻勢コウセイ仕掛シカケテイルノダ。コレハオソロシイコトダ。無垢ムクナル悪意アクイニハ、ツタオシエレバ理解リカイモスルダロウ。シカシ、道徳ドウトク倫理リンリソナエタウエデノ悪意アクイトイウノハ、大抵第三者タイテイダイサンシャ干渉カンショウデハオサマラナイノダカラ。」



福理はギッゾォーテの感情やその機微への理解力に感嘆し、同時に恐るべき第三者に対して、福理のその信条故に、殺意すらも生ぬるい、明確な「滅ぼすという意志」を抱いた。









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狂信者の秩序粉砕紀 タングステン @tangstan-h12

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