第3話 福理vs金属生命体①
福理の魂が、深い底の見えない深淵へと自由落下していく。
それでも福理に焦りはない。
これは魂の世界。奥行きも平面も、時間すら存在しない世界であるが故に、落ちている感覚があっても落ちているわけではないことを知っているからである。
福理の魂に付き従っていた彼を慕う魂たちがあるものは慌てふためき、またあるものは慌てふためくものを見て呆れた眼差しを向け、福理のように落ち着いていたり、多種多様な反応を見せる。
それに福理はほくそ笑みながら自由落下を続ける。
ふと落下が止む。
福理はいつの間にか、足元には奈落が広がっているのに宙に浮いているかのように深淵に立っていた。
福理の目の前にはいつの間にか異形が存在していた。
金属で出来ており形状が、爪楊枝でつくった棒人間のような存在が立っていた。
その存在に目は見当たらないが福理はその存在が福理を明確に知覚していることを理解していた。
「アナマヤカレヌテ、ンヒカヨウシャフ」
金属生命体が言葉を話す。
福理にはそれが一切理解できなかった。
福理が発言を理解できてないことを悟った金属生命体が、困ったように頭と思しき胴体の先端を爪楊枝のような腕でかく。
福理はその動作にクスッと笑いながら能力を発動する。
能力の発動を察知した金属生命体が攻撃体制に入るがそれをすぐにやめた。
「これで話せますか?」
福理が声をかける。
「
「渡して困る生き方はしてないつもりですがね。」
「フム、
福理は己の魂の情報を一部、謎の金属生命体に受け渡したことで、会話を成立させた。
「では自己紹介をしましょう。私は
「オ
「「ギッゾォーテ」良い名前ですね。」
「
「…………。申し訳ない。」
気まずい雰囲気が流れる。
福理の能力によって福理の魂に触れたギッゾォーテは人間が抱く感情を理解することとなっていた。
それは到底、共感と呼べるようなものではなく、言うなれば字面だけ理解していて、実体験の伴っていないようなそんなもの。
だが、ギッゾォーテは気まずそうに、申し訳なさそうにしている福理を見て、自分に存在しないはずの口角がわずかに上がるのを確かに感じていた。
「フフフ。…コレガ
ギッゾォーテが笑う。
「
「いいですよ。その代わり、貴方のことを教えてください。今度は礼を失さないようにしたいですから。」
二人の長い
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