第31話:鳴く鳥達
〈───あ、貴方は.....なんなの?
殺したいの?私を......それとも───〉
【お前を殺す...か......そう思ってた時も俺にはあったな....ようやく、決められた道から外れれたのか........】
〈決められた道...?どういう意味?〉
ベッドに寝転がり目を瞑る鳴利が、寝返りを打ち綾子から顔を背ける。
〈ねぇどういうことよ...!決められた道って何!?ねぇったら!〉
【........お前は知らないのか...?あの女のことを。】
〈あの女...?なんの事...?〉
【きっと会ったことがある筈だが.....研究所で過去にそんなヤツに会わなかったか....?背が低くて.....小柄な女児に───】
そう言われた時、綾子の頭にはひとつ思い当たる節があった。
鳴利の言う女の子の特徴と一致する者に、過去会ったことがあったから。
【その顔は.....やはり会ったことがあるようだな.......
その女は数日も前に死んだが、かなり凶悪で狡猾な女だった.......奴の目的は俺の組織を繁栄に導く事では無かった。
ただ、奴自身の野望の為俺の組織とあの二人を利用した......そして俺やお前をもな........】
〈.......女の目的って...なんなの...?〉
【"裏社会を完全に支配する"事だ。俺の組織はかなりの影響力と力を持ってるからな......俺の組織を掻き回して支配してしまえば....裏社会の制圧は容易だと考えたんだろう。】
数秒の静寂が流れ、綾子が鳴利に疑問を投げ掛ける。
〈でも....その女ってのは死んだんでしょ?
ならもう、そんな抗争みたいな事は終わったんじゃないの?
どうしてまだ終わっていないの?〉
【......俺も最初はあの女さえ始末してしまえばいいと考えていた......しかしヤツには妹が居た....そして妹は今も尚生きてる........つまりまだ終わっちゃいないんだよ───】
そう言い終える時、2人の居る部屋のドアがノックされた。
鳴利は疲れで動けなく、綾子が代わりにドアの方へと向かった。
この時、疲れのせいか鳴利の警戒心は0だった。
部屋の外に居る者が敵であるとも知らずに........
〈はーい〉
[こんばんは......フロントの───]
【っ...!?綾子っ...その声はっ...!!】
[鳴奈と申します......綾子様でしょうか?鳴利もそちらに居るようで...?]
ドアの前に立っていた人物は、死んだ鳴忌の妹である鳴奈だった。
その瞬間空気が淀み、一気に張り詰めだした。
【綾子っ...!俺の方に戻れっ...!そこから離れろ...!!】
〈えっ...?鳴利?この女の子がどうしたの...?〉
[やっぱり居るんですね、鳴利を呼んで頂けます?
抵抗はしないで下さいね?手荒な真似はしたくないので。]
息を飲む綾子と鳴利。
すぐにただならぬ空気を察した綾子は、ゆっくりと後ろへ後退していく。
それを見ていた鳴奈は逆に前へと踏み出し部屋の中へと踏み入ってくる。
〈鳴利っ......〉
[ふふっ....姉の気持ちと言うのはこのような感じだったのでしょうか.........悪くも無いですね───]
─────────
───鳴霾は思う。
あまりにも立て続けに問題が出来上がり、休まること無くその問題に対峙し続ける事に対する違和感が。
周りに敵が多すぎるがあまり、誰が本当の敵なのかが分からなくなってしまっている。
浄龍なのか、鳴利なのか、鳴奈なのか。
国技館を抜け車の中で鳴霾は英里奈に聞いた。
〚英里奈、私達が今対峙しないといけない敵って誰なの?多すぎて分かんないよ......〛
そう言うと、英里奈は一息ついてからこう語り始める。
『......鳴霾はさ、元々仲良のいい友達と、最近仲良くなって良く話したり遊んだりしてる友達の....どっちをとる?』
〚どっちを取る...?〛
『優先順位の話だよ。どっちもから遊びに誘われたら、どっちをとる?』
鳴霾は少しの間考えて、鳴霾なりの回答を出した。
〚私だったら....最近仲良くなった人の方を取るかな.......
その人ともっと仲良くなる為にって感じかな.....〛
『確かに。確かに鳴霾の回答は間違ってない。
でも正解とは言えない。』
〚え...じゃあ正解はなんなの...?〛
『正解は無いよ。でもひとつ言えるのは、遊びに問わず友達関係の中で優劣だとか優先順位を定めるのは良くないってことだよ。』
〚.....つまりどういうこと?〛
『敵に優先順位は無い。皆が敵で、仲間は私と鳴霾、そして月詠だけ。』
《っ....私も仲間なんですか?》
『.....嫌?』
《いえ....嬉しいです....》
車内には変な空気が流れ出した。
英里奈が空気を変えようと話を変えた。
『ん"ん"っ....とにかく、私達は本物の浄龍を見つけ出して殺す。簡単で難関なドキワク作戦!
徠鳴、居場所はどこまでなら分かるの?』
{アンタ凄いメンタルだね........まぁそれより、どこまでって言う制限なんて無いよ。必ず見つけ出せる。
Googleで有名人の経歴を検索するのと変わらない。}
『それは良かった。それじゃあ、取り掛かろう───』
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