第27話:DLC-OG 月詠①

私は月詠。


親は居ない。出身は....分からない。

私は生まれた時から、東京医療研究所で育った。


研究所のみんなは私の事をDLC-OGと呼ぶ。

私に皆みたいな名前は無く、私の足首に括り付けられてる札に記載されてる番号で呼ばれてる。


この今ある私の月詠って名前は、金森って人が名付けてくれた名前。

皆私を研究材料として冷たく扱うけれど、金森さんだけは違った。


私はDLCという人為的に作られた遺伝子の元生まれた言わば人造人間。

作られた理由は、DLCで産んだ私のような人間を生物実験、戦争への活用、そして品物として。


思考や意思も操作され、それらに異議を唱える考えを持つことができない。

思考が制限され尚且つ操作される私は、ロボット同然だ。


そんな私を1人の人間として見て接してくれたのが金森という女の人だった。


金森さんと話して、段々と自分の意思によって思考が出来るようになった。

他にも私のような人間が研究所には居たけど、私のように独立した思考回路を持つものは私以外にいなかった。

私が自由に思考する事実を知るのは、研究所探しても金森さん以外知らない。


そんな私を人間にしてくれた金森さんが.....死んだと分かった時....人生で初めて涙が出てきた。

止めたくても止まらなくて、目から水の様な液体の粒が次々と流れ出てくる.......


殺した人物は鳴利って人らしい。情報屋?と言う人から聞いた。


それを聞いて私はすぐにその男への復讐心を燃やし、鳴利を探し出す旅路へと向かう。


─────────


東京へ戻ってきた。


私達は駅を抜けて街中を歩いていた。

次の行動について話をする為に、私達は近くの飲食店に入った。



『......どうする?』


〚んー.....まず私達のゴールを整理しないと。

私達は何に向けて動くの?〛


『......組織の再建と、私が感情のまま殺してしまったボスに対する一生をかけた償い....かな。』


〚なるほど......私は英里奈に着いてくつもりだし、英里奈がそうなら私も同じ考えだよ。

ゴールが整理出来たなら、それに向けてどう動く?〛



英里奈は少し考えた。その末こう言う。



『東京医療研究所にある、DLCを盗み出す。

そこにはどんだけ遠くにいる人間でも、居場所を突き止められる能力が保管されてる。

それを手に入れ、私の中に取り込む。そうすれば攻め入る手段は私達が手に入れられる。』


〚東京医療研究所......あんまいい噂を聞かないあの研究所...?

どこにあるの...?〛


『それは───』


─────────


《東京都世田谷区上北沢|夜》


東京駅から大体20分、車で世田谷にある東京医療研究所まで向かう。

研究所の前に車を停め、しばらく車の中で様子を見る。



〚電気がついてるし、まだ人がいるみたいだね。

どうやって中に入ってDLCを盗むの?〛


『この建物には地下があって、地下3階にDLCの全てが保管されてる。

正面から入ってもいいけど、1階には見張りもいるし当然研究員もいる......』


〚じゃあ.....裏口とかから入る...?〛


『いや、外から地下まで降りる。来て。』



そう言うと英里奈は車から出て、鳴霾もそれに続いて降りる。

研究所のフェンスを鳴霾と共にすり抜け、敷地内へ侵入する。



〚外から入るってどうゆうこと?どうやって外から地下に下るっての?〛


『鳴霾は私の能力がどこまで有効なのか分かってないでしょ?』


〚どこまで有効なの?〛


『....ここまでだよっ───!!』


〚えっ、うわあああ───!!!〛



英里奈と鳴霾は、手を繋いだまま身体全体が地面の中へ入っていく。

体に浮遊感を感じてるように、地下空間へ身体が落ちていく。



〚え、英里奈ぁああ!!落ちてっ....こ、これ大丈夫なのぉ!!?〛


『大丈夫大丈夫!!地下3階の所に掴まれるパイプがある!!絶対に手を離さないでよっ!!』



英里奈は冷静で、鳴霾は恐怖で頭がおかしくなりそうだった。

地下1階を通過し、2階、そして3階へと落ちる。


謎の空間に出た時、能力を解除して天井のパイプをタイミング良く掴み床への激突を回避した。



『ふぅ...!ね?大丈夫だったでしょ?』


〚はっ、はぁ...!っ....はぁ......〛



鳴霾は恐怖のあまり息を切らし、応答ができない。



『ここは....なんの部屋...?電気つけられないのかな───』



英里奈は暗い部屋の中を歩き回り、壁に沿って行くと部屋の電気らしきスイッチを見つけた。


スイッチを押すと、見事に部屋の電気がついた。

するとその部屋は───



『───っ!おぉ...!私達運が良いよ...!

ここ、まさにDLCの保管庫だよ!』


〚はぁ...えぇ...?そうなの...?〛



英里奈の前には、軍隊の隊列のように立ち並ぶDLCの試験管がズラリと並んでいた。

それぞれには札がつけられており、一つ一つに名前と番号が書かれている。



『DLC-017 身体弱体化....DLC-018 丑の刻参り

.......すごい...結構あるよ...!』


〚ホントだ....でも......何本か空白がある様な.....

4.5本くらい.....〛



順番的に、004〜006、そして徠鳴を発現させた002番の計4本が無くなっていた。



『001から100まで見てみても、私達の目当てが無い。私はもうこの空白にそれがあったとしか思えない。

これ......鳴利か誰かが持ってるよね。』


〚そう?どうしてそうだと思うの?〛


『見てよこれ......持っていかれたDLCの能力を見てみると、どれも戦い向きの物ばかり。


鳴利じゃなかったにしても、鳴利の味方が所持してるとしか思えない。

今すぐここを出ないと.......』


〚え、なんで───{誰かくる!!}



徠鳴が突然そう叫ぶと、後ろの扉からゾロゾロと武装した部隊が入ってくる。

応戦しようにも人が多くて相手に出来ない。


両者共に睨み合っていると、さらに開いた扉から1人の男が入ってくる。



{ちっ...!}


『まずいね.........っこの人......浄龍さん...?』


«やぁ英里奈、久しぶり。»



この男には見覚えがある。

徠鳴が今人格として存在しているのは、この浄龍という男にある。


この男は私にDLCを譲った人だ。

しかし何故私達を部隊で囲っているんだ?



«君達には話したい事が多くある。聞いてはくれないかな?»


{いきなり部屋に入ってきてなんだよ爺さん、病室から出たらダメでしょうが。

話を聞いてもらうのに、武装したヤツらが必要?私達の事狂犬だとでも思ってるっての?}


«ハッハッハッ、狂犬だとするなら既に檻の中だろう。

君達は狂犬では無い、ペットだよ。»



偉そうに部隊の中央に立つ浄龍はそう言って笑う。



『浄龍さん......これはどういうおつもりで?

私にDLCを渡したのには、どういう意図があったのですか?』


«意図などは無い。ただの金持ちの遊びのようなものだよ。

君には関わりがあるからね、いつものお礼だよ───»


─────────


《数日前|東京都某所》


私は突如連絡が来た浄龍という人に会う為、東京都のとあるカフェで落ち合う。



『お久しぶりです、お元気ですか?』


«えぇ、研究所もメディアに取り上げられて良い評価を世間から貰っていて順調だよ。»


『そうですか、ところで....今日私を呼んだのはなんですか?』



そう聞くと、浄龍さんは服の中に入れていたモノを私の前に置いて見せた。



『浄龍さん...これは...?』


«これはプレゼントだ。君にはいつもお世話になっているからね。

きっと気に入ると思うよ........フッフッフッ.....»


─────────


『───お礼...?私が貴方に何をして差しあげたんでしょうか...?何もしていない様な気が......』


«いいや、してくれたよ。

私にとってとてもいい事だ。


この研究所は知っての通り裏でDLCという、能力発現薬の開発をしている。

身体に摂取することで発現するが、君や他の人で稀に生まれつき発現する事がある。


親の遺伝か?それとも遺伝子変化?

どうであれ能力を生まれつき持っている君や死んでしまったあの姉妹を、昔から監視していた。


君の能力は流体物や物体を透過する能力。

私はそれを作ろうと思っていたが、全然作ることが出来ない。

何回も何回も試行錯誤した後に、辿り着いた答えは.........君の身体が必要なんだ、と。»


『え...?何言って───』


«君の体は既に20を越えた。少々時間をかけ過ぎたが、十分だ。

君の身体が必要なんだ、大人しく一緒に来て欲しい。そこの女の子も一緒にだ。»



両手で英里奈と鳴霾(徠鳴)を指さす。

2人の回答を聞く時間を与えず、浄龍は手で合図を送り武装部隊が2人を拘束する。



{っ...!!クソっ...!!離せっ....ぐあっ!!}


«あまり暴れない方がいいぞ?私の部隊は少し手荒な真似をする者が多いからな。

無論、私もだ。»


『徠鳴っ───あぁっ!!っ...!くっ...!

浄龍さ....浄龍!!貴方は...敵なの...?それとも味方なの...?』



床に押し倒され、手足を拘束されている中浄龍に顔を向けそう問うと、浄龍はこう答える。



«悪には悪の味方がいる。君にはその意味が分かるだろう...?»


『っ..........』


«よし皆っ、実験室へ2人を運べ。»



浄龍の合図と共に、2人は部屋を連れ出され実験室へと運び出された。

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