第19話:血筋
私の名前は
妹の名前は
台湾で生まれてすぐに日本に来たんで台湾語は微塵も分からない。
日本で育ったけど、その育ちってのも中々荒れ果ててた。
小学校に入ってすぐに、台湾人を見た事のない
私の誇りでもある姓をバカにされる。
妹を"泣き虫"と笑い周りから遠ざからせる。
いかにも子供じみたイジメを数々もされて小学校生活を送っていた。
私達はその時弱かった。
ただ耐えて、涙を堪えて、時間が過ぎて中学に上がるのを待った。
そして中学に上がって、そこでもそこそこイジメにあったりもした。
でも小学校の時に受けたイジメのおかげか、怖いとかそう言った感情はもう無くなった。
しかし恐怖心に代わりイジメに対してイラつくようになってきた。
鳴奈は毎回怒りを我慢出来なくなりそうな私を宥める役割を担っていた。
しかしそれも限界に達した事件が起きる。
それはある日妹の鳴奈だけが、下校の時間になっても正門に来ない。少し遅れるって行ったっきりだ。
変に思い私はふと教室に戻りに行ってみた。
私としても筆箱を忘れてしまったからどっちにしろ戻ることになったってのもあるし。
そう思いながら教室へと小走りで向かう。
すると教室に誰かの話し声が聞こえてきた。
誰が居るのかドアの隙間から覗いてみると───
〖───っ!!鳴奈!!〗
鳴奈と.......私達を日頃いじめる女と男が数人居た。
そいつらは、開いている窓に鳴奈を落とそうとしているのが分かった。
身体を押さえつけ、身体を下から持ち上げようとしているのだから。
私はすぐにドアを開けてそいつらの方へ走って鳴奈から離れさせようとする。
しかし多勢に無勢で、私は男二人に突き飛ばされた。
中学3年の一般的の子供達が、自身が圧倒的有利な状況で何をするのか。
当時の私でも分かっていた。だからこそ眠っていた恐怖心が蘇ってきた。
私は割と気の強い方で、少しの事では傷つかない人だった。
でもそんな私でも、死をすんなり受け入れれるほど肝の座った人間では無かった。
私はもう察していた。
私は今から....鳴奈が落とされてから後を追うように窓から落とされる......。
階数は4階。
当たりどころが悪けりゃ即死で、即死じゃないにしろ大怪我かそれ以上の後遺症を負わされる。
私は男二人に身体を床に押さえつけられ、鳴奈がもう落とされようとしているのを抵抗しながらも見るだけしか出来なかった。
もう落とされる.....そう思った時に私はふと思った。
〖(コイツらが......逆に窓から飛び降りてくれたらな.......)〗
あぁ.....私はなんて馬鹿らしい事を考えてるんだろう........そう思った。
もう落とされる......まぁ...鳴奈の後を追えるならば.....いっか......そう死を覚悟した......その時、皆の動きが止まった。
何が起きたのか困惑している間に、皆がゾロゾロと窓の方に向かいだす。
そしてなんと1人ずつと、どんどん窓から飛び降りていく。
鳴奈も私も、それをただ唖然として見ていた。
そして最後の一人が躊躇なく飛び降りると、最後に残った私達は顔を合わせた。
静観とした教室の中、床に座り込む私達には安堵と困惑が渦巻いていた。
[な...鳴忌お姉ちゃん....どうなってるの...?
どうして....皆飛び降りたの....?]
〘わ、分かんない......〙
鳴奈は私に不安そうな声でそう聞いた。
でも私にも分からない。1つあえて心当たりがあるとすれば、私の思ったことが実現したってことだ。
私はその不可解な現象が、次第に自分に備わった能力だと知った。
それを知ってから恐れを完全に無くし、私に楯突く者や鳴奈を傷付けようとする者に対しての防御策として活用するようになった。
事件が起きて学校は休校。
あんな事が起きちゃあ閉校も免れないと噂で聞いていたけど、休校で時間を持て余した私達は夜の繁華街へ遊びに行くようになった。
そこは治安が悪いと有名の歌舞伎町。
私達は暇潰しで周りの男どもに喧嘩を吹っかけまくっては、能力でねじ伏せるって遊びを良くしていた。
その男の中にはヤクザなんかも居たりして、結構楽しい。
でもそのせいでそう言う世界の人間から目を付けられる様になった。
私達、特に私はだいぶ調子に乗っていた。
そして私達は気づいた.....私達にはこの世界がお似合いだと。
そしたら荒れた生活が更に荒れるような日々を送るようになり、その中でとある話を聞いた。
───鳴霾と言う少女が裏社会にやってきた。
私達はその名前に聞き覚えがあった。
何故なら、私達を日本へ連れて来た台湾人の実の母が死ぬ前に言っていた名前が"鳴霾"だったから。
最初は誰だと思ってたけど、まさか私達の姉妹の1人だったとは。
そう確信に変わったのは、私達の家系のルールにあった。
簡単。私達の家は、名前の何処かに必ず"鳴"と言う漢字を入れる事になっている。
理由までは知らないが、その漢字が私達のルーツでもある。
そして極めつけが母の最後の言葉がその名前だったという事。
生き別れた姉妹と再開する為に、私達は鳴霾の組織へと出向いた───
─────────
《現代|組織本部|地下○階》
〈ん───!!ん───!!〉
【おい、静かにしろって。
何がそんなに怖いんだ?お前が悪いんだぜ?
なぁ.....見たんだろ?手紙。なんて書いてあったか、覚えてるんだろ?】
‹鳴利様、口にテープをつけられるので答えられませんよ。外しますか?›
【っ......いや、そのままにしておけ。
綾子.....お前は俺に従順であれば良かったのに......悪い女だなっ───!!】
鳴利は柱に縛り付けた綾子の頬を殴り付ける。
口から血を流す綾子。顔を顰めて下を向く綾子の髪を掴んで、鳴利自身の方を向かせて言った。
【おい、いいか?手紙を奪った程度で俺を陥れたと勘違いするなよ?
時期に返してもらうがよ.....その前にお前には試したい事がある。"ソラ"、用意しろ。】
‹はっ...既に用意は済んでます。›
鳴利の秘書であるソラが手に持ってるのは注射器。
注射器には"DLC-003 想像"と書かれていた。
その注射器を、綾子の二の腕に刺して中身を注入していった。
すると綾子は途端に苦しみだし、苦悶の叫びを響かせた。
鳴利とソラは苦しみ続ける綾子を眺める。
その中で鳴利だけが、ニヤニヤと不気味な笑みを浮かべて眺めていた。
叫び続けて数分、綾子の身体の力が抜けて叫び声も止んだ。
〈っ...............〉
【.......綾子?おい、綾子?大丈夫か?】
〈............〉
【死んでんのか?そんなわけないよな?俺の妻だろ?お前は。
芝居は辞めて、さっさと目ェ覚ませよ。】
そう言って綾子の頬をペチペチ叩いて目を覚まさせようとする。
するとソラが鳴利にこう告げる。
‹綾子様は、息をしておりません。恐らく薬との整合が上手くいかなかったのでしょう。
もしくは、苦しみによるショック死...でしょうか?›
【.......死んだ...だと?綾子が?】
‹.....鳴利様...?泣かれてるん...ですか?›
鳴利の目を見ると、1粒の涙がこぼれ落ちるのが見えた。
ソラはそれを困惑した感情で見つめていた。
すると鳴利は口を開いてこう言った。
【そうか.....死んだのか.......ソラ、この死体を俺の寝室へ運べ。】
‹あの....お聞きしますが、寝室なんかに運んで...どうするんでしょうか?›
【当然だろうが......慰めてもらうんだよこの悲しみを......要らなくなったら燃やすだけだぜ......】
‹っ...........ところで、綾子様の箱に入っておられた物はどこへいったのでしょうか?箱そのものも。›
【さぁ......誰かの手に渡れば、そいつを見つけ出し、殺して奪うのみだろ。】
──────────
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