第16話:私にとっての敵は───

《30分前|組織の外》


組織の事務所に到着した私達。

お姉ちゃんが1人組織の中へと入っていき、私は組織本部の近くで周辺を見回りながらお姉ちゃんの帰りを待つことに。


何分か経って、トイレに行きたくなり近くのコンビニでトイレをした。



[ふぅ〜......スッキリしたァ〜......離れちゃダメだったけど、トイレの為なら仕方ないよね〜]



なんて呑気なことを呟きトイレを済ませ、組織本部に戻る為交差点の信号を待っていた。

青になり渡ろうとしたその時、私の携帯から知らない携番が掛かってきた。

不審に思いながらも取り敢えず電話に出てみることに───



[もしもし?誰?]


〖久しぶり、私の事覚えてる?〗



その声の主はすぐにわかった。

だからこそ私は驚いて聞いた。



[あんたはっ!!なんで番号を...!?]


〖アンタは私達やその周りのことを知らない様だけど、番号を調べるなんて簡単なんだよ。

それより.....信号、赤になっちゃうよ?〗


[っ.....どこから見てる...!?]



私は交差点で止まってる車や渡りゆく人々を見渡す。

その間に信号は赤になってしまった。

すると電話の女は言った。



〖あーあ、もう手遅れだ。青の間にこんな電話なんて無視して渡っていれば良かったのに.....

残念だ───〗



車の信号が青になり、車が発進しだす。

その瞬間私は歩道とは逆の方に走り出したが、その瞬間足を躓かせて転んでしまう。

急いで立ち上がろうとしながら後ろを見た時、私の方に向かって車が速度を上げて向かってくる。



[あぁ!!っ───!]



能力を使おうとしても、車はさらに速度を上げて私に突っ込もうとしてくる。

もう私との距離がほんと数cmにまで詰めてくる。




[っ位置交換───!ヤバっ間に合わない───!!!]



私は車に撥ね飛ばされた。

車にはね飛ばされても車は止まらず、建物にはね飛ばさた私諸共建物に突っ込んだ。


瓦礫が降ってきて私の体全体に降りかかる。

体を動かせず、負ったダメージのせいで能力も使えない。



[ぅ......くっ.....がはっ......]



瓦礫に埋もれた体でもがき、ポッケに入ったスマホを何とかして取り出す。

画面にヒビが入ってたけど、スマホ自体は壊れていなかった。

そこで私は無意識にお姉ちゃんへと電話をかけていた───。


電話の途中で意識を落としてしまう。

その最中に聞こえたのは、瓦礫の上を歩く音と、私の名前を呼ぶお姉ちゃんの声だった。


─────────


《それから2分後|組織より少し離れた交差点付近》


瑠衣....瑠衣.....大丈夫今お姉ちゃんがそこに行くから.....死んだらダメだよ絶対に...!

すぐに抱き締めてあげるから絶対───



〘.......え...これは......〙



車が建物に突っ込んで、瓦礫の山が出来てる場所を見つけた。

絶対そこに瑠衣が居るとわかったけど、同時にもしかしたら死んでるかもしれないと頭に思い浮かんでしまう。


湧き上がる絶望感を押さえ込み、瓦礫の山の中へと入り瓦礫をどかして瑠衣の名前を呼びながら探す。



〘瑠衣ー!!瑠衣ー!!!どこにいるの!!?〙



瓦礫をどかしてもどかしても瑠衣の姿が無い。

山の上を歩き回っていた時、踏んだ瓦礫が少し柔らかく感じた。

空気の入ったマットを踏んだ時に足がほんの少し押し戻される様な感覚。それを感じた。


私はもしやと思いその瓦礫をどかそうとする。

しかし他のと違って重すぎる。

それは重量だけではなく、私の心だった。


瓦礫に潰された姿を見たくない。死んだ姿を見たくない。生きていて欲しい。

実の妹にそんなごく当たり前の想いが、瓦礫の重さをより際立たせる。


力一杯で瓦礫をどかした。

そして瓦礫から見えた実の妹の姿に、私は耐えられなかった。



〘───えっ....瑠...衣?瑠衣?瑠衣!?

あっ...あぁ.....う"あぁ....!!〙



何度名前を呼んでも、反応をしなかった。

息もしてない。鼓動も止まっていた。

手が震えだし、涙も留まることをしらない。



〘瑠衣っ....そんな....返事してよ....瑠衣ぃ.....

起きてっ.....起きてってばぁ......うぅ......〙



瑠衣を抱き締め、泣き崩れる。

その時チラッと瑠衣の手にスマホが握られてるのを見た。

画面が付いたままで、画面は私とのトークが開かれていた。


それを見て、私はさらに涙を流した。

これが実の妹瑠衣の最後の言葉だと知って.......



〘"おねえちやんたいす"

......うぅぅぅ....あ"ぁぁぁ...!!瑠衣ぃ.......〙



送信ボタンをあと一歩押せなかったのか、言葉だけが打たれており、そのまま送られてない状態のままだった。


泣いて泣いて泣きまくり、私の心は絶望の海の中にあった。

それが次第に、あの女達への憎悪へと変わっていく。

こんな事になったのは、あの二人のせいだと。


許さない.....私の妹をこんな目に合わせて....いい思いなんて出来ると思うな!



〘瑠衣.....私はすぐに瑠衣の元にいく。

だからそれまでは.........どうか私を見守っていて...!〙



私は瑠衣を抱っこして組織へと戻る。

これは、私のわがままだから───


──────────


《同時刻|組織本部》



〚いつまでここで拘束させてるつもり?

殺すって言ったくせに出来ないの?そんなのが組織にいて、恥ずかしくないの?皆は。〛



鳴利は今自分の部屋に行った。

しかし大勢の仲間に囲まれて銃を向けられていて、身動きが取れない。


私はどうせ死ぬならと思い、周りの男達を煽りまくった。



『鳴霾、挑発はやめておいた方が......』


〚なんでよ、自我の無いヤツらに何を言っても響かないなら何を言ってもいいでしょ?

.....てか英里奈なんでちょっと前からそんなに弱気なわけ?

私と会った時はあんなにも強気だったじゃん!

あの女2人になにかされてそうなったの?

なにかされただけでそうなっちゃうの?

英里奈はそんなに弱かったの?ねぇ。どうなの?〛


『いや...私は───』


〚ほら弱気じゃん!自分の気持ちも素直に言えないなんて!

どうしちゃったわけ英里奈は!?

素直に言ったらいいじゃん!言えないの?言えない自分を分かってるのになんで?

自分の欠点を知ってて直さないのはなんでよ?

この場でハッキリと言ってよ!

英里奈は今どうしたいの?英里奈の敵は誰なの!?ねぇ!どうなんだよ!!〛



初めて英里奈に不満や怒りをぶつけた。

スッキリしたからいいけど、英里奈はまだウジウジと言うか迷った様子だった。


誰が英里奈をそうさせたのか分からないけど、その様子を見ててイライラする。

組織の部下達が私達を見てても関係無い。

そのままの怒りをさらに英里奈へとぶつける。



〚......アンタ...って初めてそう呼ぶけど.......

アンタはここで一緒にいた時も、旅行先で敵と接敵して、襲われたってだけで落ち込んで戻ってきたけど.....それだけで落ち込むってどんだけアンタメンタル弱いわけ?

こんな命が軽くてすぐに人が死ぬ様な界隈で、ちょっと命の危機に瀕しただけで落ち込んじゃってさぁ.......ホントにこの世界で生きる資格あるわけ?〛


『っ.....なんだって...?』


〚私の前から姿消してた間の10年間、アンタ何してたの?

まさかコンビニバイトとかしてた訳じゃないよね?

庶民の生活に10年で戻れるわけないでしょ。私も、ここにいる全員が。

どうせ大したことない10年を過してたんだろうね。結局はあの女に連れ去られちゃってさ。

組織の幹部だったってのは幻だったんだね。〛


『違う......』


〚は?何が違うわけ?

実際そうじゃん。選択も間違えまくりだしさ。

前任者を殺して、んで逃げて、私とも別れて、何がしたいの?

アンタがボスになったら良かったじゃん。違う?

アンタがボスを殺して新たな組織のトップになるなら、私はなんだって手助けしたい。だって私にある信頼は英里奈、ただ1人なんだから。〛


『っ........』



この言い争いに、周りの部下達も気まずく感じていた。

しかし私達は敵である以上、止めに入ったり慰めたりしに行こうとする者は現れなかった。


しかしそれで結構だ。

今結構気持ちの波が乗ってきてる。今なら真っ直ぐな気持ちを伝えられると思ってるから。



〚ねぇ、もっかい聞くけど.......

英里奈は何をしたいの?英里奈の敵は一体誰なの?〛



改めてそう聞くと、英里奈は言う。



『私の....私の敵....私の───』


────────


〘───敵は....私の敵はあの女と───〙


────────


『───女と......っこの組織!!』



その瞬間、英里奈は透過で拘束を瞬時に解き、私の拘束も解いて死んだ部下の手にあった銃を奪う。


突然の事に部下達は対応が遅れ、英里奈の弾丸で次々と倒れていった。

弾が切れて私達は組織の出口から脱出する。



〚英里奈っ...!.....おかえり...!〛


『.......っただいま。』

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