第15話:痒いところに手が届かない

《誘拐されて数時間後:東京都新宿区某所》


【綾子....こっちへ来いよ......俺の元に.....】


綾子〈鳴利.....今度は私になんの話をするつもりなの...?〉


【......自分の隠し事は、いつまで隠し通せると思う?どんなに内容が軽くても、重くてもだ。】


〈隠し事......〉


【綾子にもあるんだろ〜...?俺に隠してる事が.......その箱に入ってるモノみたいに......】


〈っ....なんの事よ....〉



俺は綾子の頬から顎にかけて手を滑らす。

耳に口を近づけると、俺はこう囁いた。



【最近届いた一通の手紙がよ....無くなっちまったんだよなぁ.....大切に金庫の中に入れて置いたのになぁ......金庫ごと消えちまった.......】


〈っ...!?〉


【なぁ綾子ぉ.....お前の箱には何が入ってるんだ...?お前は俺を裏切るなんてしないよなぁ...?お前は俺に約束したんだからなぁ...?

貴方に信じて着いていくと。】


〈っ───!!〉


────────


《一か月前|英里奈捜索期間》


組織に見知らぬ女性がやってきた。


彼女はすごく礼儀正しくて、組織の建物に来た事が尚更びっくりした。

皆に挨拶やお辞儀をして、笑顔を振りまくある意味アイドル的存在の様に見えた。


名は"金森 綾子"

鳴利がここへ連れてきたらしいが、彼曰く───



【───俺の嫁だ。】



と言っている。

綾子さんも否定をしない様子。



〚え....マジかよ.....〛



私はそう思った。

逆に言えばそう思っただけで、彼女がここへ来たことに対する反対は無かった。

ただ、一見一般人でこの世界に相応しくないなりをしてるから少し心配だった。


色々鳴利から話を聞いてみると、どうやら綾子さんは不思議な箱を所持しているみたいだ。

見える人と見えない人が別れており、私と鳴利は見えてても、他の仲間には見えなかった。


能力でもありげな箱のようで、正しく能力がありそれは"どんな物や人の存在を箱に閉まって存在を隠す能力。"



〚急に奥さんなんか連れてきて.....アイツは何をするつもりなの...?

ここは極道じゃないんだけど...?〛



《1ヶ月後|英里奈へ会いに行く数時間前》


鳴利から英里奈の居場所が判明したと知らされた。

私はいてもたっても居られず組織を飛び出す準備をしていた。


すると、私の部屋に誰かが入ってきた。



〚ちょっと誰?勝手に入らないで───っ!.....あれっ...綾子さん...?どうしてこの部屋に...?〛


〈勝手に入ってごめんなさい、どこか行くの?〉


〚.......えぇまぁ....古い友人に会ってくるんです.....なので...その準備を.......〛


〈そうなのね......結構長いの?〉


〚ま、まぁ.....そこそこ...ですかね.......〛



そう言うと、綾子さんは部屋に入っては私の部屋の椅子に座りこう話し出した。



〈鳴霾ちゃん、大事な人を守るなら自分の命を犠牲にって考えはしちゃダメよ。〉


〚綾子さん......?〛


〈自分が死んで生き残るって、庇った側のエゴで生かされた側からしたらそんなの嬉しくないし、逆に死んだ方が良かったってなるの。


”利用”するの。少しでも自分を守ってくれる人達を。

その状況に乗じて大事な人を守るの。

生きて守る。覚えておいて欲しい。〉


──────────


───そんなこと言われたなぁ.......


でもね、綾子さん......今この状況で.......



〚どうやって守れって言うんだよーー!!!〛



私達は数時間かけて新宿へと正体不明のヤツらに連れ戻されてしまい、その挙句鳴利に銃を向けられてしまっていた。



【おかえりだな。今までどこへ行ってたんだ?

英里奈と合流してから随分と日がたったなぁ鳴霾。】


〚ひ、久しぶりの再会にちょっとそのぉ~.....任務を忘れちゃってたっていうか~.....

ていうか......な、仲間じゃないの〜...?同じ組織の仲間なのにさァ〜...?〛


【仲間?仲間ってのは運命共同体だ。皆が進みゆく同じ運命の道を進むものだ。

それなのにお前は、俺達とは違う道を進んでいる......それでどうして俺達が仲間だと思えるんだ?】


『っ.......』


〚.......私はあんたの命令通りに行動した.....何も命令に背いてなんかない......

仲間として今裏切ろうとしてるのはそっちの方でしょ....?〛



はっきり言って今私は内心物凄くビビってる。

恐怖心や焦り等を態度で押し殺している。

本音を言えばすぐにでも逃げたい。だって怖いから。


しかしこんな状況で....逃げられるわけが無い。

そんな中で私の出来ることは、目の前に調子乗った様子で佇む鳴利と会話する事だった。



【お前の行動に間違いがあるかどうかは俺が決める。組織のボスはこの俺だ。】


〚なにそれっ.....自分がトップになって良い気になってるわけ?ガキじゃん.....馬鹿らしい.......

そんなのが組織のトップじゃ仲間は着いてこないよ?いいの?〛


【そういう発言は、お前が組織のトップになってから俺に言ってみるんだな。

お雨にこれ以上喋らす暇は与えない。もうお前に用は無い。】


〚.........あっそ.....そーですか........悪役みたいなセリフ吐いてんじゃねぇーよ........

このナルシスト野郎........〛



私は腕を大きく広げて"早く殺してみな"と言わんばかりに挑発する。

そして鳴利は銃の引き金に指をかける───



〚あーあ、生まれ変わったらもっとましな人生送りたいなーーーー〛


【───ん?なんだ...?トリガーが引けねぇぞ?

壊れたか?】


〚.........〛


【おい、お前の銃を貸せ。】



部下にそう指示し、部下から銃を受け取ろうとする。

しかしすると、その部下が突如鳴利に銃を向け出す。



【っ.....何をしている?誰に銃を向けてると思って───】


部下?〘権力というのは人を傲慢にする、それに大人子供は関係無い。〙


【お前っ.....いや、誰だ?俺の部下では無いな───?】



その瞬間パァァン!と銃声が辺りに響く。

その音と共に鳴利の右後ろにいた部下が倒れた。



【っ!?クソっ!!】


〘ハハハッ!笑 銃で人を殺すのも悪くは無いねぇ!笑〙


〚....?〛『っ......』


【っ.....操られているのか...?どこから...?】



鳴利は辺りを見渡す。

すると鳴利は、部下に私達を見張らせボスの部屋へと向かった。



【遠隔操作してるのか...?誰が一体───】



自分の部屋の前に着き、襖を開けると───



【───っ?】


〘っ!......ようやく来たんだね。待ちくたびれたよ。〙



部屋の奥には、座布団の上で胡座を描いて座っている正体不明の女の姿が。

俺は部屋に入り、女の元へゆっくりと近づく。



【お前か?俺の部下を遠隔で操る者は.....おかげで部下が部下を殺しちまっただろうが。】


〘ギャハハハ!笑 なに?部下が殺されて泣いちゃいそう?笑〙


【.......何のつもりだ?俺とお前、なんの関係がある?】


〘......あの二人、英里奈と鳴霾......あの二人は私の獲物.......横取りされるのすっごく困るんだよね。〙



そう言うと女は座布団の上に立ち上がり、ぽつぽつとその辺を歩き出す。



〘誰だって自分の物を取られたら、取り返そうとするでしょ?

あの二人は私達の物。貴方が殺すものじゃない、分かる?〙


【.....あの二人を殺すことに変わりはないが......殺すのはこの俺だ。

組織に無断で侵入したお前に、決定権があると思うのか———?】



俺はその瞬間、女の背後に瞬間移動する。

持っていた銃を頭に突きつけた後発砲する、その時───



【後ろが空いてるぞ。死ね。】


〘っ!!"止まれ!"〙



その言葉と共に、俺の身体は指1本動かせなくなる。

その間に、女は俺を背負い投げして投げ飛ばす。

投げ飛ばされた瞬間、俺の体は元通りになり受け身も取れた。



【フン.......その能力、興味深いな.......従わせる能力か...?

実にうらやましい能力だ........俺にくれないか?】


〘くれないかって.....どうやるか知らないけどあげるわけないでしょ!〙


【ふっ......なぁ教えてくれよ......お前がなんでここに来たのかを。

あの二人を取り返しに来たんだろうが......本当の理由はなんだ?殺すため?そんなわけないだろ?】



部屋が静まり返った。

その時に、私は言った。



〘.....あってもお前にいちいち言うわけ———!〙



そう言いかけた時、私のスマホから電話が掛かってきた。

瑠衣からだ。



〘瑠衣...?───もしもし?どうした?〙


[おぉ.....お姉......ちゃん......たす.......け...て.......]


〘瑠衣...?瑠衣...!?瑠衣!?今どこ!?どこにいるの!?返事して!!〙


【っ........】


[おん.....なが.....っ...たしを......]



今にも消えかかりそうな喋り方で、言葉がほとんど聞き取れない。



〘何をされたの!?あの女に!?〙


[違...う......おん...なに....じゃあ....ないぃ.......

車...に.......はね飛ば.....された.......ドライバーが......こっちを......見ていた.....のに.......]


〘くっ...!どこにいるか教えて!!早く!!〙


[お姉ちゃん.....助け...て.......私...をはね飛ばした......ドライバーが.....こっち...に.....来る.......

女が......早...く───]


〘瑠衣ぃぃーーー!!!〙



通話は切断され、瑠衣は場所を言わなかった。

しかしいてもたったも居られず、部屋を抜け出して組織から飛び出した。



【っ.......計画は1歩前進....かなっ....

今話をしに行ってやる.....大事な話だ───】

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