第14話:105時間の旅

《東京都新宿区某所》



【鳴霾は英里奈に会えたようだな。

2人を連れ戻せ、東浜に居なけりゃ場所を突き止めて必ず連れ帰すんだ!俺の元へ!】


────────


《あれから20時間|静岡県駿河市静岡区》


私は反対した。

命を狙われているので手段を選んではられないが、いくらなんでも歩いて奈良まで行くなんて....マラソン世界王者でも嫌と反対するに決まってる。


そんな24時間マラソン顔負けの長距離移動、常軌を逸してる。


反対虚しく私達は今静岡に来た。



〚───ここ、ファミレスだけど.....?〛


〘うん、ここはファミレス。腹が減ったんだから仕方ないでしょ。〙


[瑠衣もお腹空いたー!何食べよ〜♪]


〚こんな状況で───ギュルルルル.....〛


〘.....ぷッ....アンタも腹減ってんじゃんよ。

ほら、さっさと中入るよ?来て。〙


〚ッ〜/////〛



本音を言うと確かにお腹が空いた。

お腹があんなにも盛大に鳴ると、流石の私も恥ずかしくなった。


仕方なくついて行き、4人席のテーブルに座る。


食事中に、一応敵である真尋にこんな事を聞いた。



〚ねぇ....2人はさ...私達をどうしたいの?

わざわざ奈良に連れて行くとかさ...殺すつもりなら今殺したらいいんじゃ...?〛


〘......ファミレスで人を殺す程殺意に飢えてないけど...?私達のことなんだと思ってる訳?〙


〚いや、そういうつもりで言ったったんじゃ....〛


〘てゆーか、飯不味くなんだけど?もっと明るい話でもしてくれない?猫可愛くない?とか。〙


〚あぁ...ご、ごめん......〛



気まずくしてしまって変な気持ちになる。

その時、ボソッと真尋は言った。



〘ただアンタらに、聞きたいことがあるから.....〙


〚え?今なんて───?〛


〘あー美味かった!ファミレスもたまにはいいねー?人肉より遥かに美味しい!

皆食べ終わったね。んじゃ早速行きますか。〙



そう言って真尋は席を立つ。

それに続いて私達も席を立って店を出る。

店を出る時に真尋の妹が、私の耳元でこう言った。



[お姉ちゃんって素直じゃないんだよね...笑

だから───]


〘瑠衣!〙


[っ....ごめーん...笑]


〚っ........〛



素直じゃない.....か......まるで英里奈そっくりだ......英里奈も...素直じゃなくて、私にきちんと気持ちを伝えずに姿を消した。

あの真意を...今度ちゃんと聞けたらな.......。



〘なんか今日日差し眩しすぎない...?目が痛いよ....〙


[うん...目痛いし、日差しが皮膚にあたるだけでヒリヒリする.....]


『そう言えばファミレスに入った時、冷房が異様に寒かった様な.......』


〚.....っ?え皆何言ってんの...?痛くないし、冷房もちょうど良かったでしょ.....どうしたの皆?〛



目の痛みに皮膚の痛み、更には冷房が異様に寒いと訴え始める。

しかしその全てに理解が出来なかった。

皆いきなりどうしたんだろう.....。


町中を歩いて歩いて歩き続けた時、皆がいきなり足を止める。

気付かず私は真尋の背中に顔をぶつけてしまった。



〚ぅあっ!ご、ごめん...!〛


〘ハァ──ハァ──ハァ──〙


〚.....真尋...?大丈夫?....後ろの2人も.....息切れしてない...?どうして...?〛



それもそのはず、東浜からあのファミレスまで歩き続けたけど息切れを起こす程疲れた事は無かった。

ファミレスから現在地もそこまで歩いたわけじゃないのに、ちょっとの距離で疲れてしまってる。


溜まってた疲れが一気に来たとしても、何故今なの?ファミレスの時にでも来てるはずなのに。

さっきから皆変だよ....。



〚なんで皆息切れしてるの...?そんな長い距離歩いてないでしょ...?たった数十メートルしか.....〛


[ハァ...ハァ...ハァ.....なんでだろっ......立って...られないくらい.....身体が.....ぁあっ.....]



そう言って真尋の妹は通行路で座り込んでしまった。

続いて真尋や英里奈も座り込む。



『ハァ...ハァ...ハァ......これは.....』


〘これは....敵の仕業...なのかも......明らかに.....異常な息切れ...だよ......身体だってさっきまで.....全然疲れて...無かったのに.......〙


[止まっちゃダメなのに.....進まなくちゃいけないのに.......身体が疲れて言うことを....聞かない....!]



傍から見れば道に座り込む変な集団に見えるが、それどころでは無い。

足腰が立たなくなり、息も中々通常に戻らず次第に苦しくなってくる。



〘距離が近ければ近いほど......能力の効き目も強くなる.......敵はもうすぐ近くに....来てた...!〙


『耳に入る音で....耳がっ....痛いっ...!!

耳鳴りもする...!』


[お姉....ちゃ...ん.....疲れ...て....眠く...なっ....て───]



その言葉を境に、私と英里奈以外の二人が疲れのあまり眠ってしまった。

私達だけが眠ることなくその場が静かになった。



〚皆っ...!?寝ちゃってる...?〛


『あれ....呼吸が整ってきた...?さっきのはなんだったの...?』



2人は路上で眠ってしまった。

それを見て私は言った。



〚今なら....今なら逃げれる.....英里奈、逃げなきゃ...!この2人から!今なら逃げられる!〛


『で、でもどこに...?』


〚とにかく距離を離さないと!!〛



私と英里奈は、手を繋いでそこから走り去る。

しかしその瞬間、身体に異常が起きる。



〚ここを出て、駅でも徒歩でもなんでもいい...!

遠くへ離れて東京に戻らないと───〛


『っ────』



な...なに...?身体がっ....動かない...?

それどころか....声が...だ、出せない...!?

そんなまさかっ....真尋が目を覚まして.....いやそんなわけが........まさか別の敵が...!?



?‹逃げるなんて許されません。貴女達は私達から逃げる事なんて出来ませんから。›


〚(だ、誰...!?コイツは.....コイツの仕業なの...!?)〛



突如私の前に知らない女性が現れる。

その女性は、私の頬に手を滑らして言う。



‹哀れですね.....こんなに可愛い貴女が...私達の世界で命を追われる身となってしまってる事が.....

あの人が貴女を必要としてる事に、愛情を感じますね......›


〚(あの人...?誰の事を言って.......っもしかしてあの女達の事...?コイツはその下についてるってこと...?)〛


‹まぁ.....貴女達を逃がす訳にはいきませんし.....さぁ、"新宿"へ帰りましょう......›



そう言って私達を車に乗せさせる。

そして真尋達を置いて、車が発進してしまった。


─────────


《それから20分後|静岡県路上》


[っ───っ.....んっ....はっ!]


〘瑠衣....やっと起きた?〙


[お姉ちゃん!あの二人は!?]


〘消えたよ。逃げたって最初は思ったけど、多分あの女達の刺客に連れ去られた。

私はそう思ってる。〙


[そんな......どうするのお姉ちゃん...?]


〘毎回聞いてくるんじゃないよ。

私達の計画はそんなんで終わる程ヤワじゃない。

行った手がかりがなければ最初に戻って考えるんだ。

東浜に戻る。徒歩は辞めて新幹線か電車で行く。〙


[っ...了解!]

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る