第二章:女は立ち向かう
第11話:垢のついた生き方と帰り道
《2039年|新宿組織本部|歌舞伎町》
10年前、英里奈が組織から姿を消えた。
私が最後に彼女と話した時、彼女は私に謝った。
何か言い残すと思いきや私に対して謝ってきたんだ。
私はその意味を今でも理解が出来ない。
何故私に謝ってきたのか分からない。
英里奈が組織から姿を消したと同時期に、ボスの部屋からボスの死体が発見された。
我々組織は逃げ出した英里奈による犯行と断定。
依然として行方を追っている。
私としては今の状況は物凄く複雑だ。
かつて仲間であり相棒でもあったのに.....一体あの二人の間で何があったんだろう.......
(『鳴霾、ごめんね』)
〚........どこ行っちゃったんだろう......また会いたいな...会って話がしたいよ.....〛
?【おい鳴霾、こっちに来い】
コイツは突然組織に現れては王座に就いた鳴利って言う男。
ボスになったけど私はこいつに忠誠心は無い。
トップについていい気になってんのか態度がデカくて気に入らない。
鳴利は私をボスの部屋に呼ぶ。
部屋に入ると鳴利は言った。
【鳴霾、お前には行かなくてはならない場所がある.....場所は"神奈川県東浜市旧横浜市町"だ。】
〚神奈川...?なんで?〛
【英里奈が見つかった。しかし困った事にヤツは1人じゃない。仲間らしき人物が居る。】
〚え?英里奈見つかったの?ホント?前みたいな人違いじゃないよね??〛
見つかったと聞いて私は質問攻めにした。
しかし鳴利は冷静にこう返す。
【あぁ、今回は大マジだ。
人違いではないし、今回は顔も本人であると確認出来た。
あれは間違いなく英里奈だ───】
それを聞いた瞬間、鳴利を置いてすぐに準備をして東浜市に向かった。
かつての旧友と再会を胸に抱いて。
〚英里奈.....今度こそ居るよね.....〛
──────────
《神奈川県東浜市西区旧横浜市町|旧横浜駅》
駅を飛び出してすぐに私は鳴利から送られた住所へ走って向かう。
その最中私の体は疲れを忘れてしまう程に嬉しい気持ちで溢れていた。
今までずっと会いたかった人と今会えるかもしれないのだから。
それは嬉しい以外に形容出来る言葉は無いだろう。
駅から15分で着いた場所は、東浜市を代表する高層ビルの"ランドマークタワー"
どうやらその建物の下には秘密の地下室があるらしい。
私はその入口を探す為にランドマークタワーの中へと足を踏み入れる。
鳴利情報によると、ランドマークタワーに新設されたエレベーターの階数ボタンを【1/9/6/6】の順番で押すとエレベーターが地下室へ向かって降下していくとの事。
私はそれを信じてエレベーターに乗り試してみる。
順番に押していく........が、エレベーターはうんともすんともいわない。
それどころかドアが閉まったっきり開かなくなった上動かなくなった。
〚え、ちょっと閉じ込められたんだけど.....鳴利嘘ついたとか...そんなわけ無いよね.......〛
幾ら経ってもエレベーターは動く事が無く、私はエレベーターに完全に閉じ込められてしまった。
携帯も何故か圏外になってしまい、連絡手段も絶たれてしまいまさに何も出来なくなった。
〚嘘でしょ...?この先の未来、落ちて身体がぐちゃぐちゃになって死ぬ未来しか見えないんだけど.....勘弁して───〛
その時、エレベーターがガコン!と激しく揺れた。
その瞬間私の神経全体が危険を感じて、全身に鳥肌が立つ。
〚えちょっと待って待って!私まだここで死にたくなんてないんだけど!?え待ってマジでほんとに勘弁して───あぁ!!!〛
またガコンと激しく揺れると、その瞬間エレベーターが急降下していく。
身体が宙に浮いたような浮遊感を感じ、身体が軽く感じる。
〚あああぁぁぁぁあああ!!!〛
急降下していくエレベーターだが、次第に、器用にもそのエレベーターは衝撃を消すかの如く速度をゆっくり下げていく。
そして最終的に私は無事で、エレベーターもいつも通りの止まり方で止まった。
〚────っ.......し...心臓が....心臓がほんとに.....と...止まるかと........〛
エレベーターのドアが開き、その先へ私は弱々しく歩き出す。
地下室の割には綺麗で、私が今居るところは通路の様な、壁や天井や床がSFチックのメタリックな通路が先へ先へと続いている。
歩いて歩いて歩き抜くと、通路の奥にドアが1つ佇んでいるのを見つけた。
私はドアの奥にきっと英里奈がいるんだと思い、ドアの方に走って向かい、ドアノブを握って勢いよくドアを開ける───!
〚英里奈───!!!.......え?〛
結論から言いたいと思う。
英里奈は私の目の前に居た。でも、異常な光景が目に飛び込んできた。
それは、英里奈が....最期のキリストの様に十字の柱に磔にされて拷問を受けていた......
一瞬でそうだと分かってしまうのはおかしいが、それ以外に考えようが無い......
〚英里奈!?大丈夫!?ねぇ!鳴霾だよ!?.......何この首輪.....首に刺さってない...?〛
『鳴...霾....?何しにきた...の.....どうして.....ここに来た...?来ちゃ...ダメなのに......』
〚なんで来たって.....英里奈がここに居るって聞いて来たんだよ?ねぇ帰ろ?あの組織にさ。
私と一緒に帰ろ?〛
英里奈を柱から降ろそうと縄を解こうとするが、縄が強くて中々解けない。
縄に苦戦してる最中に、英里奈が言った。
『......鳴霾は...人を信じ過ぎてる......この世界ではね...仲間にも疑いの目を常に向けてなきゃいけないんだ......辛い世界だけど....郷に行けば郷に従えってのは.....そういうことなんだよ.......』
〚え...?それってどういう事なの?〛
『私を置いて.....ここから立ち去って...?
ここに居たら...鳴霾にも危害が及んでしまう.....私は鳴霾が大好きだから.......だからここから早く立ち去って........私の事は忘れて...組織も抜けて真っ当に生きるんだよ...?』
10年経って英里奈は変わってしまった。
こんな事を言うような人ではなかったのに、何が英里奈をそうさせてしまったんだろう......
私はその言葉を無視して縄を解こうとする。
その最中も英里奈は話し続ける。
『あの組織はもう私のいた時とは.....違うんだよ.....まるっきり変わってしまった.......
あの組織は今洗脳された構成員で溢れてる.......組織全体で私を敵と思い込ませ....私を殺す為に永遠に刺客が送り込まれる.......
そして10年の間に私はここへ連れてこられ、こうして磔にされて放置される.......
時々女二人がやってきてはサンドバッグ代わりにいたぶられる......』
〚うるさい!!黙っててよ!!
組織がどうか今はどうでもいいって!縄を解くのに集中してんだから少し黙ってて!!〛
『鳴霾っ.......』
英里奈が口を閉ざし、縄を解くのに気をひかしていると....何処からか声が聞こえてきた。
〖ちょいちょーい、侵入者は誰かなと思ったらァ.....鳴霾じゃ〜ないのよ〜〗
〘ホントだ.....鳴霾だ....やっと見つけた.....〙
『逃げて....鳴霾........』
〚え...?誰...?ねぇ英里奈誰なのこの女達は......まさかさっき言ってた女二人って───〛
『英里奈っ...!!後ろっ───!!』
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