第9話:昔話

昔昔ある所に、らいと言う苗字の家系があった。


全てが台湾の血、もしくは混血の家庭。

ただ普通の父母子供の、何気なくごく普通の家庭だったのだけれど、何代目かに生まれたとある男の存在によって徠という家庭の存在が、普通の家族の良い評判を悪名に変えてしまった。


2000年代台湾台北市内の病院。

そこで1人の男の子が生まれた。


名前は"魈鳴しょうめい"

生まれてからすくすくと育っていく子供の姿を見て、両親は幸せの海の中を泳いでるようだった。


魈鳴君には底の無い好奇心がありました。

これをしたらどうなるんだろう?そう思うと行動せずにはいられない。それがどんなに危なくても。


危なっかしすぎる子供の行動や言動に手を焼いていても、そんな子供の姿も可愛く愛おしい.....両親はそう思っていました。


しかしある日、魈鳴君はこんな事を思いつきました。


"人は死ぬ時どんな姿なのか"


そんなのは実行するまでもなく、残されてる情報から何となく予想や妄想が出来るが、その子供は妄想等では収まらなかった。


自分のこの目で見たい....その気持ちが昂り、魈鳴君は台所に向かいました。

包丁を取り出し、休みの日でテレビを見る親の背後に近づき......好奇心で溢れる興奮のまま包丁を背中から突き刺しました。


母は痛みで苦しみ子供を見る。

母が見た子供の表情は子供の顔じゃなかった。


そばに居た父は母に近寄り慌てふためいて、子供は成し遂げた好奇心に満足気で部屋に戻っていく。

父は魈鳴君を呼び止めたが、魈鳴君は耳を傾けることも無く部屋に戻っていった。


父はすぐに救急車を呼んだが、魈鳴君が刺した包丁が母の心臓をモロに突き刺してたので即死だった。


父は自身の妻の死に泣き、絶望し、我が子が妻を殺した事実を信じることが出来なかった。

しかしその悲しみが次第に憎しみへと変わり、魈鳴君は捨てられてしまいました。


それから途方に暮れる中でも好奇心だけは未だ尽きることがありませんでした。

魈鳴君は思いました───


"───これで自由でなんでも出来る"


魈鳴君は日頃家で人を殺す方法や弱点諸々を本で勉強していました。

それ故学校の宿題はいつもやらずに通っていました。


しかし学校にも行く必要が無くなり、独り身の魈鳴君はこれからやりたい事を好きなだけやろうと決めました。


それから何年かが経過した。

魈鳴君は17歳になり、気付けば魈鳴君はマフィアの一員となっていた。


それも彼が望んだことなんだろう。

しかし彼はそんな日々の中こう思うようになっていきました───


"───自分は一体どう死ぬのか"


はっきり魈鳴君の殺しの技術はマフィアの中でトップクラスだ。

このままマフィアの一員として時間を過ごすのは、彼にとっても時間の無駄と感じていたようだ。


そこで彼は組織を相手に謀反を画策しました。

構成員が魈鳴を反逆者として始末しようと襲いかかるのを、1人で返り討ちにして最終的にボスの首をとる事に成功した。


魈鳴の所属するマフィアにはルールが存在する。

信頼に劣る行為、信用を失墜させる行為、謀反や裏切り行為をしてはならない、至極当然のルールが存在するが、1つ特殊なルールが存在する。


それは"ボスを殺した場合、殺した者が次期組織を統べる者とする"だ。


そんなのがあってはボスという存在は殺され放題ではないか......実は意外にそうでも無い。


組織に属する構成員が、何にも縛られずに仕えているはずも無い。

組織に属する条件として、家族恋人友達、全てが人質状態となり、裏切り行為等を行った場合問答無用で殺されることになっている。

その裏切り行為がたとえ失敗してもだ。


それ故ボスに謀反を起こすものも居ない。

ボスを殺せば、人質を殺す決定権も自分に移り変わる。


仮に魈鳴が失敗しても、彼には家族も恋人も、ましてや友達なんて1人もいない。

だから彼はそれも理解した上でボスを殺し自身がボスに成り代わったんだろう。


魈鳴がボスとなって以降、そのマフィアは台湾全土を統べる犯罪組織へと成り上がっていった。

そして彼が設けた子供は日本に渡り、子供の名を残し台湾の地で謀反を起こされ死を遂げた。


最期まで彼は底の無い好奇心の元やりたい放題し続け、謀反を起こした構成員にも最期まで自分の要求を言い続け、子供の頃と変わらないまま殺された。


享年30歳。墓は作られず死体は闇市に解体されて売られた。その収益も組織の金庫に入れられた。


彼がもたらした徠 魈鳴という名前は、台湾国民全員が知る犯罪者を代表するものとなった。

そしてその子孫が、日本という国で親と同じ人生を歩む事となる。

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