第6話:百鬼姉妹③

《奈良県海原市妙宮寺町百鬼家なきりけ


百鬼家とは日本における遥か昔、平安の時代より続く超有名一家。

輝かしい日々が続いていたが、有り余る富に限界が来ていた。


散財を尽くすその一家は、蓄えられた財産を使い潰した結果、次第に家のお金も無くなっていき、最終的に手を染めたのが犯罪だった。

輝かしい名門一家は道を踏み外し、人の死体の上で金を手に握り笑う人道を外れた一家へと変わっていった。


しかしそれは影がそうであり、表向きは有名な家庭を演じ続けていた。それが数年前までの話。


今じゃ世間からも犯罪者一家と蔑まれ、これから生まれ育っていく姉妹も同じ道を歩んで行くこととなった───


─────────


《2021年|海原市立伊瀬小学校》



小学担任〖百鬼 真尋!!〗


〘っ...!?は、はい!〙


〖授業中に寝るな。ちゃんと授業聞け。〗


〘っ....はぁい.....〙



小学生の時私は勉強がだーい嫌いだった。

今でも嫌いだけど、その時は将来の自分を考えると仕方なく頑張れた。


友達はあんまり出来なかった。

私自身友達って存在が苦手で中々出来なかった。


けど私には妹が居た。一年下の"百鬼 瑠衣"

瑠衣だけが私の友達・妹。話し相手だ。


私という人間は、誰かを守ったり...誰かと仲良く関わって楽しい事をしたいとか....そういう普通の人間の価値観とはかなりズレていた。


友達なんて、ちょっとでも機嫌を損ねると裏で嫌われ...それが次第に表面化してきて最終的に関係が切れる。


直接言ったらいいものを、言わないで距離を離される存在に私は嫌悪感を隠しきれない。

そう思ったのが小学校1.2年生の時で、私には友達という存在は合わないと感じたと共に........

人を殺したいと本気で思い始めたのも、その頃だった。


そのまま友達と関わらないで中学へ上がっていく。

当然中学でも友達は作らないままで、対して小学校と変わらない毎日が過ぎていった。


しかしある時から、私の妹を同じクラスの女子達が妹を虐めていると知った。

いじめた女はいわば陽キャでギャルっぽいテンションの女。あと数人はその取り巻き。


その事実を知った私はいてもたっても居られず、すぐにその女達を放課後呼び出した。

誰も居ない教室で私は女達に問い詰める。



〘───私の妹、瑠衣の事いじめてるってホント?〙



そう言うと女は言い返す。



<えぇ?笑だったらなに?笑>


取り巻きA{私らがいじめてる証拠とかあんの?}



コイツらはとぼけ、シラを切ってる。

それでも私は怒りを抑える。耐える。

抑えつつ続けて私は言った。



〘っ....イジめて何が楽しいの...?

アンタに...妹の痛みが分からないの?〙



ふつふつと煮えたぎる怒りを抑えて発した言葉に対して、その女は笑いながら言った。



<だーかーらー!だったらなんなのって!

私がいじめてるとしても、だからなんなのって話でしょ?笑


やられた相手が、やめてとも言わなけりゃ自分で抗わないのに...それでもやった側が悪いっておかしくなーい?


......ってかなんなのお前、私に楯突いて、タダで済むと思ってんの?陰キャ風情が生意気なんだよっ───!!!>



私にそう言うと、その瞬間私の腹を思い切り蹴り飛ばす。

私は後ろに倒れて咳き込む。



〘っ"!?がはっ!かはっかはっ...!〙


<陰キャの癖に逆らうんじゃねーよ!>


取り巻き{そうだ!!}



さらに私を殴り、蹴る。私は身体を埋め耐える。

何回かの打撃を耐えた末、ようやく終わり私に背を向けてそこを去り出す。



〘........くっ...!妹をいじめるやつは....許さない...!絶対に.....絶対に許さない───!!〙


<ん───?>



私は父が家に隠してあった銃を盗み持っていた。

感情が昂り我慢できなくなった私は、腰に隠し持っていた銃を取り出していじめっ子と取り巻きに向かって撃ちまくった。



〘許さない!!妹をいじめた事...!お前ら死ね!死ね!!!死ねよクソ野郎ー!!!〙



もう何発撃ったのかな?

覚えてないくらい撃ち、取り巻き含めた女達は全員倒れて血をダラダラ流してた。


私は自分のした事に、何も間違いが無いと本気で思った。

コイツらは私の妹をいじめた。傷つけた。

だからこいつらは死んで当然のクソ女だよ。


子供だから?幼子が残虐な行為?

子供だって大人のような殺意を持つ。子供だって大人のように人を殺す。

年齢なんて何も関係ない。感じてきた1年2年で子供はどこまでも成長する。

それが良い方向でも、悪い方向でも、子供は自我を持つ。


静かな空間の中で、ギャル女の息がまだ少しあり掠れた声で私に乞う。



‹ご...ごめん...なさい......殺さ....ないで...ください......許してくださ───›



私はすぐにまた引き金を引いた。

すると呻き声を挙げずに絶命した。


完全に死んだ事を理解した時、焦りや恐怖等微塵も無く、ただただ清々した。

すると笑いがどんどん湧き上がって来て、笑いだした。



〘....皆死んで........っへへ...へへへへへ.......ざまぁみろ....私の妹に手を出した報いは、死んで償えクソ女......へへっ...へへへへへ.........

あーっはははははは!!!!〙



私は女の顔を思いっきり何度も何度も踏みつける。

私を殴り蹴った様に、顔がボコボコになるまで蹴った。


狂ってる?そうかもしれないね。

でも、私が狂ってておかしいと感じるのは違う。

狂ってるのはこの世界。こんな人間が子供大人だろうと、のさばってるこの世界が。


どんな人間にも限界があり、殺意を持ってる。

人を軽視して舐めてると、人によっては殺され、まだ理性のあるやつはボコって終わり。


この女達は運が無い。

私が殺すような人間と知らないで、軽率な発言で私を怒らせてしまったばっかりに.......


女達を撃ち殺したことで心がスカッとして、家に帰って妹にもそのことを伝えて安心させてあげた。


でも、良いようには続かないよね。

学校の監視カメラから、私とあの女の一連の流れが映っていた。


そのせいで学校に呼ばれては、警察にも呼ばれもうパーティー状態。

当然学校には入れず、警察にもお世話になりそうな時親は...ある日の朝───


─────────


《数時間前|伊丹空港→海原市内》


空港へ着陸してすぐにゲートを抜けて空港を出る。

そしてその辺に止めてある車を盗み奈良の街を走る。


ボスの情報によると、あの姉妹は海原市の妙宮寺町に家があるらしい。地元民にとっても有名な家系との事。

なのでその辺の人に聞いたらすぐに分かるのかも。



『........あれじゃない?あのクソでっかい家。

周辺の家と比べても雰囲気も見た目も違うし、車止めて調べようか。』


〚......この家、窓が塞がれてる。

中が見えないから居るのか分かんない....〛



近所に車を止めて、車を降りて家の前に行く。

表札にはしっかり"百鬼"という苗字が飾られている。


家の雰囲気はいいものの、柵の隙間へ微かに見える敷地内は整備されずに伸び続けた草が見えた。

家の見た目とは裏腹に、中はそこまで綺麗じゃないのかもしれない。


そんな感じで家周りを調べていると、通行人が私達に話しかけてきた。怪しまれてるのか、なんなのかは分かんないけど。



通行人〔貴女達、この家の近くで何をされてるのですか?〕



話しかけてきたのはよわい70を超えてるだろうおばあさん。

怪しんでると言うより、単なる興味本位とかその辺で声をかけたんだろう。



『え、えぇまぁ....仕事で...ね。東京から。』


〔東京〜!?はぁ〜それはそれは遠くからはるばるどうも〜

ところでこの家にはなんの仕事で?〕


『んぁ〜......調査...ですかね。はい、調査。』



そう言うと、おばあさんは目の色を変えてこう言った。



〔......この家の人と関わりがあるからですか?

だとしたらいい事をお教えしましょう。

私の家にいらして下さい。〕



そう言われ突如家へと来るよう言われた。

行きたくもないしめんどくさいし適当に断ろうと思ったけど、いい事を教えるって言葉に釣られてぼちぼち着いていくことに。


おばあさんの家に上がらせてもらい、昔っぽい座敷の間に通され座る。

鳴霾は部屋を見渡して、私はおばあさんが座るのを見ていた。


そして座ると、おばあさんは話し始める。



〔......あの家はね...ホント昔からある家で.....

私が生まれた1954年よりも前からある歴史ある家なんです。


平安時代ってあるじゃない...?1100年頃から続く平安の一族....百鬼という家族なの。〕


〚なっがいねぇ〜.....その家族はどうして今でも続く一族な訳?〛


〔ハッキリ言うと......ただ続いてるだけですね。

お金はあったらしいですが、それは数年前とかの話で、今じゃ一般家庭かそれ以下の経済状況と聞いておりますね。〕



それから色んな話を、おばあさんから聞いた。


あの女二人が百鬼家の末裔で、何年か前から犯罪に手を染めて生計を立ててる話や、奇妙な能力を持っている話等。


おばあさんにお礼をして、おばあさんの家を出てまたすぐに百鬼家に行った。


─────────


《一方その頃おばあさん》



〔ふぅ.......さっ、お皿洗いでもしましょ──〕



台所へ行き水を流しながら皿洗いしてると、おばあさんは後ろに気配を感じてふと振り返る。

すると───



〔───っ!?〕


〘はぁい、こんにちは〜〙



真尋が、おばあさんの家に侵入して、家主であるおばあさんの後ろに立っていた。

手には台所にあったであろう包丁を握っていた。



〔い、いつから私の家に...!?〕


〘んー?アンタがあの二人を家に招いた時に、2階の窓から入ったんだよ?

気づいてなかったみたいだけど、それは私の能力で気付かないよう"命令"してたからだよ。〙



そう言いながら一歩一歩とおばあさんに近づいていく。



〘それよりさぁ.....アンタ私達の家の事をあの二人にベラベラ話したみたいだけどさ......何話してんの?

人の家系の歴史や詳細を、赤の他人に話すなんてさ.....ババアどんな神経してる訳?〙


〔あ...ぁあ貴女達家族に近所の皆が迷惑してるの...!

早くこの町から出て行きなさい!!〕


〘.......ふーん.....お前が出てけよクソババア。

アンタみたいな生き遅れの老いぼれの方が、この町には要らねぇよ。

ほら、これ───〙



そう言って真尋は持っていた包丁を、恐怖で床にへたり込むおばあさんの前に投げ落とす。



〔.....っ?〕


〘なにボケっとしてんの?早くこの包丁で喉をぶっ刺して。ここで見ててあげる。

安心して、1人にはしないからさ...笑〙



その下衆をも超える発言と共に、ゆっくりとおばあさんの手は包丁の方に伸びていく。



〔っ...!?なんなのこれ....て、手が勝手に...!

あぁ....〕


〘ほらほら頑張れ〜!もう少しで届くよー!〙



包丁を手に取ったおばあさんは、両手で包丁を持ち自分の首に包丁の尖った先端を向ける。



〘ストップ。あのさぁ、私言ったよねぇ?1人にはしないって.....そんなに怖がって泣く事はないじゃんか......私の言葉が嘘だって言いたいの?〙


〔あ...あぁ.....あ...あ....ぁああぁ.....〕


〘はぁ.....残念だよ.....大人は嘘ついて生きれば良い人生送れていいよね。嘘も、疑いも、常に胸の内に秘めて生きてりゃ、いいもんねぇ。


........。〙



止まっていたおばあさんの腕が、今度は少し前に動き、その瞬間包丁が首に突き刺さり、おばあさんの口から血が吐き出てくる。



〔ガハッ!!〕


〘.......お疲れ様。私の言う通りに、死んでくれたねぇ.....偉い偉い。

さぁ、次はあの2人だね......〙

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