13日目午後(調薬)
訓練開始から2日目
本日も異界は平和。3人の剣士の元気な声が響き、空には時々、2匹の猫獣人が飛んでいる。そんな、平和な異界で護とアイルは【調薬】を用いたポーションの作成に挑もうとしていた。
「それじゃまずは、薬草をすり鉢ですり潰して…」
「了解です。」
作成方法については既に護とリジアが例の場所で調査済み。その中から、少ない道具でも方法をアイルに伝えていく。
「なんかドロッとしてきましたね。」
「そしたら、今度は水を適量加えて…」
「適量ってどれぐらいですかね?」
「…感で」
とりあえず味噌を溶かす感覚で完全にサラサラになるまで水を加えていく。これでうまくいけばいいのだが。
「あとは、魔力を加えて混ぜるだけらしい」
簡易調薬セットにあったガラス製の器に液体を移して、かき混ぜながら少しづつ魔力を加えていく。これで全ての行程が完成だ。
「これでポーションになってるんでしょうか?」
「とりあえず【鑑定】と」
----------------------------------------------------
【薬草の味のする水】
薬草混ぜた緑色の水。飲むとHPが回復したような気分になれる。
----------------------------------------------------
「【薬草の味のする水】だってさ」
「それはただの水ですね。」
まあ、護たちも一発でうまくいくと思っていない。説明文を読む限り、水分量が多すぎたのだろうと判断してアイルは再度調薬に取りかかる。。
----------------------------------------------------
【薬草の味のする水】
薬草混ぜた水。飲むとHPが回復したような気分になれるがすごくまずい。
----------------------------------------------------
2回目にできたものは味があった。しかし、名称は【薬草の味のする水】のまま。なお、この結果に護は「それは青汁なのでは?」とつぶやいた。そうして3回目は再度二人で相談をしながら進めることに。
「これぐらいですかね?」
「多分?」
「それじゃあ、魔力を込めながら、混ぜ合わせて…」
「少し、魔力を込めるのが早すぎるかも?」
今度は魔力が込められると、混ぜている液体に変化が現れた。ただし、その変化が発生した場所は転々としており、反応した箇所だけが薬草成分が活性されているように見える。結果、液体の色は薄いが、容器の底には緑の濁りが貯まったなんとも名状しがたいものとなった。正直、鑑定するまでもなく失敗ではあるが、一応調べる護。
----------------------------------------------------
【沈殿したポーション】
効果が出てくればHPが少量回復するポーション。
ただし、薬効がある沈殿物は飲みにくく、吸収されるまで時間がかかる。
----------------------------------------------------
まったく使い道はわからないが一応はポーション判定のようだ。まあ、作成したアイルはそのポーションを前でうなだれるがね。どうやら完全に集中力が切れたアイルはいったん調薬は休み。護の錬金術の観察することにた。
さて、ファンタジーで、定番となっている錬金術だが、その扱いは様々だ。では、この世界でのあつかいは?
その答えは物質が含む微小な魔力への干渉すれ技術である。そもそも魔力、すなわちMPとは創造神の力の残滓である。だからこそMPを消費して
そして、この世界は創造神が全てを作成している。それはつまりすべての者には魔力が宿っていることに他ならない。その1にも満たないような魔力を関知、干渉する技術こそが錬金術なのだ。
取り出したのは、錬金術をサポートする魔法陣と材料。ちなみに魔法陣の効果は上に乗せた魔力をわずかにブーストする。要は顕微鏡のようなもの。そして材料として取り出したのは、黒い砂。
「その砂のは?」
「鉱山で集めてきたものだよ。まだ鉱石は採取できないけど、微少な鉱石なら含まれてると思ってね。」
砂に含まれた僅かな魔力の差を【錬金術】のスキルの補助を受けながら感じ取っていく。
(うん?)
参考書にはこう書いてあった。『物質に含まれる魔力量は同じ物質でもそれぞれ異なる。故に錬金術を扱うものは、多くの経験を持って心理に達するのだ。』と。
しかし、護には全て同じに感じるのだ。いや、確か石の魔力には斑がある。しかし、それは当然である。だって、石って言っても複数の原子でできているのだ。だから、その構成はケイ素、酸素、ナトリウム、マグネシウムex..そういった様々の原子でできている。少なくとも護は考えている。そして、原子単位で考えた時、それらが保有する魔力量は大体同じだったのだ。
護の手の中で、砂の山からキラキラした小さな白い山ができる。さらには白の、赤茶色の、そして真っ黒といった色とりどりの山々。
「錬金術ってもっと難しいと聞いてたんですが?」
「そうだね?ちなみにアイルは原子論って知ってる?」
「知らないですね…」
これが全ての答えだった。まあ、この世界では魔力で物質創造ができる、なので、物質の構成要素なんて調べなのだろうし、よくて魔力である、と結論がつけられるのだろう。
そんな意外な気付きがありながらしばらく。二人は黙々と作業していく。そして、ポーション作成に成功したところで、アイルの集中が限界に達した。
「少し休もうか。」
護は自身のインベントリーに準備していたものを取り出しながらアイルへと話しかける。
「正直限界だったので助かります。」
アイルが受け取ったのはよく冷えたハニーレモン。作成者は護で出資者はロベルト。
ついでに護が使用した錬金セットもロベルトのポケットマネーだったりする。曰く、「私の勝手で戦闘訓練するのだから、補填するのは当然じゃない?」とのこと。おかげで醤油、砂糖、味噌、少量の酒といった基礎的な調味料が揃った。
「さっぱりとした酸味と、優しい甘みが疲れた脳に聞きますね。」
「…zzは! アイル~何かおいしものの話しましたか~?」
「クルルー♪」
「ワン!」
何か感じとったようにアイルの頭の上で眠っていたロアが目を覚まし、抱えていたアイルの卵が揺れる。さらにはソルとルナの傍にいたはずのネオンとクロムもソルとルナの卵を引き連れて護たちを囲っていた。それに戦闘訓練をしていたソルたちもこちらに向かって来ているようだ。
しかし、ご安心を。この護、事前に人数分準備をしている。これで安心…
「私の分もありますのよね?」
どっから出てきた!?でも、前述のようにドリンクは人数分ある。ついでにロベルトも巻き込んで、久々の甘未を皆で楽しむのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます