11日目午後(報告)

「フィリアちゃんは変わったわね。」


「お願いします。忘れてください…」


しばらく暴れた挙句、最終的に護がネオンを召喚して4対1で必死に魔法で対抗すること30分。どうにか正気に戻ったフィリアは今、ロベルトの前で顔を赤くしていた。


「それで、フィリアたちの方はどうだった?」


「ゴブリンダンジョンの西側は墓地のようエリアで推奨レベルは2でした。少し覗いてみましたがボーンと呼ばれる人骨の魔物が徘徊してますが、ロア単独でも倒せる程度には弱いです。」


「東側は湖畔といった感じです。推奨レベルは8で亀形の魔物を確認できました。ただ、多くは水辺でしたので、水生の魔物がいると思います。」


ちなみに二人のリザルトはこんな感じ。


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2人のリザルト

ゴブリンLv1× 4


ドロップ

棍棒× 2

魔石(ゴブリン) Lv1×4

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アイルのリザルト

ゴブリンLv1× 3

ボーンLv2× 3


ドロップ

棍棒× 1

魔石(ゴブリン) Lv1×3

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フィリアのリザルト

ゴブリンLv1× 4


ドロップ

棍棒× 1

魔石(ゴブリン) Lv1×4

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どうやら途中までは一緒に移動して、ロアと合流した後フィリア&ネオンとアイル&ロアに分かれたらしい。ちなみに道中のゴブリンの討伐が少ないのはダンジョンを攻略の後に護がポップ数を変更したからである。


「なら、墓地の方から探していく感じでいいかな?」


「あら?そんなことをしなくても私が一か所心当たりがあるわよ?」


まるで当たり前のように新情報を口にするロベルト。そしてその情報は3人の出鼻をくじくには十分であった。


「私がルナちゃんと再会したエリアの二つ先。そこに少し前にお世話になった異界があるわ。そこも少し変わった神様だったけど、多分事情を説明すれば手を貸してくれると思うわよ?」


「あ~そうでした~アイル~私もお知らせすることがありました~今日行った異界の先から~かなり強い精霊の力を~感じました~。数も多かったので~多分かなり大きい異界があると思いますよ~」


背後から追い打ち!しかしおかげで選択肢が生まれ、議論は白熱した。そうして、話は詳細なスケジュールそしてサキュレート・シャークへと変わっていく。


「アイルちゃんから聞いてたけど、だいぶ面白いことになってるわね。」


「ロベルトさん興味があるなら参加されますせん?」


「あら?いいのかしら?でも、そうするとかなり長いすることになるわね?」


ダメもとでフィリアはそう声をかける。しかし、返ってきたのは意外な回答であった。ロベルトは話しかけてきたフィリアではなく、護の方へと問いかける。


「むしろお願いしたいぐらいだよ。」


「なら、参加させてもらおうかしら。しばらくよろしくお願いするわね。」


「ロアも~」


「いやロアはまだリュカさんから許可もらえてないでしょう。」


「う~ん?あ~まだお伝えしてませんでした~。リュカお姉様の力も戻ってきましたので~正式にアイルと契約できるようになりました~。これからよろしくお願いいたしますね~」


((そういえば正式な契約はしてなかった…))


アイルとロアのやり取りを聴いていた護とフィリアの感想がこれである。まあ、ボスゴブリン戦の段階で仮契約とは名ばかりの状況だったし、ほぼ毎日顔を会わせているのだ。忘れるのもしかない。


「それじゃあ、契約しますね~」


「うん、これからもよろしく」


「はい~…あれ~?」


「どうしたの?」


「どうやら、既に本契約並みに繋がってたみたいです~」


「「やっぱり契約済みじゃん!」」


いつも通り閉まらない一行なのであった。




月明かりの差し込む教会でロベルトは一人今日のことを回想する。


「今の彼女たちはまるで家族ね。いや、どちらかというと4兄弟姉妹かしら?」


少し前までならソルとルナは決して無茶をしなかった。それに、フィリアが誰かを頼ることも、アイルが誰か信用することも決してなかった。それが今ではお互いを信頼して作業を分担するようになっている。ロベルトはそれは素直にうれしかった


「本当に今日はいい日だわ。そう思わない?」


「あれ、気が付いてた?」


「ええ、異界によっては結構怖いとこもあるのよ。だから自然と身につくのよ。まあ、この異界ではその心配してないわ。」


そういってロベリアは振り返り、護を見る。


「それでこんな時間に何の用かしら?」


「それはこっちのセリフでもあるんだけどね?」


「あら?なんのことかわからないわね。」


「またまた。出会ってからずっと俺のことを観察しているくせに」


教会は神の領域。特に今いる礼拝堂は神の住む場所に直接つながる場所である。この場所で待っていれば護に会うことになることがわからないロベリアではない。つまりはそういうことだ。


「あなた、結構周りを見ているのね。少し以外だわ。」


「まあ、この技能が必須な環境で生活したからね。それで、観察の結果は聞いていいのかな?」


(前って何のことかしら?)


皆はわかっているだろうが、日本で生きる上で必須技能である。後、地味に親愛に親子愛が含まれているので、人の感情や行動には敏感になっていたりする。


「先に行っておくと別にあなたに裏があるかなんて考えてないわ。私が気にしているのはあなたが私が信仰するべき神なのか。その一点だけよ。だから、一つだけ聞かせて頂戴。あなたは信者私たちに何を求めるのかしら?」


これはロベリアの本心であり、巡礼者の本懐である。巡礼者は異界をめぐり、真に敬うべき神を見つける者。そのため、訪れた異界の神を信仰しては、旅を繰り替えす。しかし、そんな巡礼者だってすべての神を信仰するわけではない。だからこその最後の確認。


「仲良く、支えあうこと。ただそれだけ。」


返ってきたのは子供の頃に一度は言われる当たり前の言葉。だが、そうか君はなんて…


「強欲ね。」


「確かに。」


「でも気に入ったわ。だから巡礼者らしく、しばらくはあなたを信仰させて頂戴。」


こうして護の信者がまた一人増えたのだった。



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巡礼者について少し補足です。


巡礼は宗教上重要と見なされる土地や建造物のある場所を、信者が訪ねることを意味する語です。しかし、この物語では多数の神が出てくるので、複数の神を信仰する行動は巡礼とは違うのではという感想が出てくると思います。


とはいっても回答は簡単で、この世界ではどの神を信仰しようとそれは創造神デミレアの崇拝に極限的には帰結しているからになるんです。例えば、人々が集めた経験値は神にわたって神格値になり、神はそれを消費して創造神の力の一部を再現し、その際消費した神格値は創造神へと収められています。このようにどの神を信仰しようと最終的には創造神への信仰につながるため、信仰する異界を探すものを巡礼者と表現しています。


わかりにくかったら、世界を学校、異界を部活、巡礼者をやりたい部活を探して体験入部を繰り返している学生とでも思ってください。

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