11日目午後(巡礼者)
「ソルちゃんとルナちゃん。久しぶりね。」
そういいながら、ソルへと持っていたポーションで手当てをする、この人物はロベルト。自身が信仰するべき神を求めて異界を旅する巡礼者である。
「それで、どうして二人だけでここにいるのかしら?フィリアちゃんとアイルちゃんはどうしたの?」
「えっと…二人は別の方向に調査…」
「なんでまたそんな無茶を。あなたたちはどこの異界にも所属してなかったでしょうに。」
「違うよ!ソルたちはマモルにーの異界で暮らしてるの。」
「…ソルちゃん。どう言うことかしら?」
ロベルトはソルとルナのつたない説明を聴いていく。既に気づいているだろうがロベルトは4人と面識がある。というか、ロベルトが必死に生きる4人を気にして気にかけていたというのが真実だ。
(どうやら、騙されて酷使されている状況ではなさそうね。もし、そうならこんなに笑顔で話さないわ。それに、ソルちゃんは人懐っこいようで、ちゃんと人を選ぶ子だし。それに親愛の神ね…)
「ねえ、ソルちゃん。少しいいかしら?」
「なに?」
「今から帰るその異界に私も着いていっていいかしら?」
…
(あらー、なんというか想像以上ね~)
ルナたちの案内で護の異界へと訪れたロベルトの感想がこれである。4人が訪れてから多少は発展しているとはいえ、まだまだ村と呼ぶにも烏滸がましいレベルである。だって、商店ぽいのが2つあるだけで人用の家すらないんだもの。
「ねえーソルちゃん、ルナちゃん?みんなはどこに暮らしてるのかしら?もしかして、あそこのお店とか?」
(もしそうなら、期待外れなのだけど…私のことを裏切らないでね♪)
「違うよー!ソルたちのおうちはあっち!」
そういって指さす方向にあるのは教会。
「あらーソルちゃんあっちは教会よ。そんな場所に人を住まわせる神様なんて聞いたことはないわ。」
「うん?間違ってないよ!」
困惑するロベルト。しかし、ソルは構わずロベルトの手を持って走り出す。
「ただいま!」
「ん…!」
「二人ともお疲れ様。とりあえずお腹すいたでしょ。っと、二人とのその方は?」
扉を開いて現れたのは、フライパンを持った護。教会には肉の焼ける良いにおいが漂っている。
(また、教会で生活している人間ね。もしかしてこの異界はこれが普通なのかしら?)
「初めましてね。私はロベルトよ。」
「おっと、これはご丁寧。私は護。一応個々の主神をしています。」
そういって、
「…え?御冗談よね?あなたが神様?」
つい、心の声が漏れるロベルト。しかし、これは仕方ないことだ。だってあまりにも護は人間味が溢れすぎている。一般的な常識があるほど、護を神と認識できないのは仕方ないことだった。
「それは別の人にも言われましたよ。」
「マモルにー?いつもとしゃべり方違うよ?大丈夫?」
「ん…なんか不気味…」
「良いか二人とも。大人は初対面の相手と話すときはこうやって外面を作るんだ。」
「「??」」
「…俺の癖だから気にせず飯食ってこい」
「は~い!」「ん…!」
2人を見送った護が、再度ロベルトへと視線を移す。
「それで、ロベルトさん?二人に何があったのでしょうか?」
「えっと、それより私にもいつもの口調で構わないわ。というか、そうし頂戴。」
神に敬語を使われて会話するなど、普通にありえない。だって普通に考えて神って偉いし。偉い人に一般市民が突然敬語で対応されても困ってしまう。護も少しは自身が偉くなった理解しよう。
「そうですか。いや、そうか。それで改めて何があったか教えて欲しい。」
「ええ、まずは…」
そうして、ロベルトはこれまでの経緯を護に説明する。
「なるほど。ロベルトさん、二人を助けてくれてありがとうございます。」
「頭を上げて頂戴。私も知人だから助けただけ。普段は別に助けたりなんてしないわ。」
「それでも、ソルが無駄に傷つかずに済んだのはロベルトさん。あなたのおかげだ。本当にありがとう。」
顔を上げて改めて護は感謝を口にする。そんな護の対応に後ろから覗き込んでいたソルとルナが少し慌てているのはロベルトだけが気づいていた。
(ふふ、4人ともよかったわね。私も一安心だわ。)
ロベリアが慌てる二人に優しい視線を向ける。しかし、悪いことをした認識している2人は慌ててキッチンへと慌てて戻っていく。
「それじゃあ感謝は受け取らせていただくわ。その恩に漬け込むようで申し訳んないのだけど、今夜はこの異界に止まらせていただけないかしら?。」
「何にもないけどそれでよければ自由にしていってくれ。」
「感謝するわ。それじゃ、その辺にテントを立てるからこれで失礼するわね。」
「テント?別にこの教会に泊まってもらっていいぞ?」
(いろんな異界を回ってきたけど、初めて会った人間。しかも私みたいななのを教会に泊まらせる神なんて聞いたことないわよ!)
ロベルトが心の中で叫ぶ。ロベリアも自身が異端に映ることぐらいは理解している。
(でも…だからこそ私の求める場所になりえるかもしれないわね。)
「そうね。じゃあお言葉に甘えるわ。短い期間かもだけどよろしくお願いしますわ。」
「ああ、俺は何日でのいいから自由に過ごしていってくれ。」
「久しぶりねフィリアちゃん。元気だったかしら?」
「ロベリアさん!どうしてここに!?」
少ししてフィリアたちが戻ってくる。ちなみに、ネオンとアイル、あとなぜかロアも一緒だ。
「ふふ、たまたまソルちゃんと合ってね。折角だから付いてきちゃったわ。」
「そうだったんですね。あれ?ソルとルナがそういえばいないですね?」
「あら二人ならあっちよ。」
そういってロベリアが指さした方向は教会の外。場所としては鉱山の方である。
「ちょっと二人が無茶をしたことをマモルちゃんに説明したら、お説教されて、今は「そんなに強いやつと戦いなら俺が相手してやる。ただし、やるのは魔法の訓練だ」って言って連れて行ったわよ。本当に変わった神様ね。」
「何をしたんですかあの二人は…」
「それはこれからゆっくり話すわ。だ・か・ら、二人もこれまでどんなことをしてきたのか教えて頂戴。」
「で、何とかダンジョンを攻略して、次はそのサキュレート・シャークの対抗する準備を始めた感じです。」
「そうです~。アイルも大活躍だったんですよ~。」
「濃厚すぎじゃない?」
「濃厚ですね。でも楽しいですよ?」
「…そうとも言うわね。」
ロベルトは目の前の状況に目を向ける。そして、まさに今目の前にある
「ソル!聞いてるんですか!?」
「マモルにー!助けて!」
「ん…ヘルプ!」
「…フィリアー!聞かせる気があるなら魔法をやめて、て!あっぶな!」
「マモル様は黙っててください!いいですか!あれほど!見てくるだけと!」
「「「ぎゃー!!」」」
フィリアの水魔法が2人と傍にいた護へと放たれる。もはや、説教というか刑罰である。それにしては、フィリアを除いて楽しそうではあるが。
「これは…楽しくなりそうね。」
「何か言いましたか?」
「いいえ!そうだアイルちゃん!お仲間をお探しなのよね!いい情報あるわよ。」
こうして、久しぶりの再会は賑やかに過ぎていった。
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