10日目午後(ジョブ)

この世界において、ある程度成長した異界はまずジョブ機能を解放することが当たり前とされている。


なぜか?


それは、ジョブを取得するで習得できるようになるアビリティの存在が大きい。アビリティは簡単には言ってしまえば、行動の簡略化。特定のワードをトリガーに最適化された行動を行う手段。


「あー、フィリアが技名言ってるのはそのせいなのか。てっきり…嫌なんでもない。」


「待ってください!今の間はなんですか!!」


「気にせず続けてくれ。他意は…多分ない」


「たっぷりありそうですね!はぁー…つまり、ジョブにつくことである、最適化された行動を即時できるようになるんです。ただし、ベースとなるジョブ以外には取得するのに条件があります。例えば私のジョブは私が生まれた異界では簡単に取得できますが、他では基本的に取得はできません。それに私が突然、近接戦闘向けのジョブにつこうとしても、ファイターなどの基本ジョブしかないです。」


要は適正のあるジョブしか習得できないということだ。


「まあ、いろいろ説明しましたが私もわからないことが多いです。なのでとりあえずジョブを習得してみることをおすすめします。」


結局はこうなる。まあ、ジョブの変更は信仰している神の教会でなら自由にできるので、スキルほど悩む必要はない。ちなみに、ジョブを最大レベルまで習得すると、免許皆伝となり他のジョブに着いていてもジョブ特有の恩恵を受けることができる。そして、複数のジョブを皆伝していくことで、オリジナルジョブとして認定される場合がある。この場合ジョブ産み出した者は開祖となり、他者に技を教えることでそのジョブを他の人も使えるようになるのだ。


そして、今現在4人が取得できるジョブはこんな感じ。


全員

ファイター

武器を用いた戦闘の基礎的なジョブ

メイジ

魔法を用いた戦闘の基礎的なジョブ

シーフ

速度と手数を用いた基本的なジョブ

ヒーラー

回復と補助に関する基本的なジョブ


ソル

剣士

剣を用いた戦闘時にその真価を発揮する。

ジョブのレベルに応じて、剣を用いた行動に補正が入る


魔法剣士

特性の属性を剣に付与して闘う際にその真価を発揮する。

ジョブのレベルに応じて、エンチャントで消費するMPを軽減する。


軽剣士

一撃の重さより、剣を振るう回数で戦うことでその真価を発揮する。

止まることなく、攻撃を続ける限り一撃の威力にバフがかかる。このバフは何らかの理由で攻撃が止まるまで持続し、ジョブのレベルまで重複できる。


ルナ

短剣士

短剣士を用いた戦闘時にその真価を発揮する。

ジョブのレベルに応じて、剣を用いた行動に補正が入る


アサシン

相手に認知されていない状態、もしくは相手の想定外の位置への攻撃の威力に補正がかかる。補正量はジョブのレベルに依存して倍率が上がる。


奇術師

あの手この手で、想定外の戦法相手を翻弄するジョブ。ジョブのレベルに依存して、隠蔽能力と、器用が上昇する


アイル

精霊術士

精霊と契約するものをサポートするジョブ。

ジョブのレベルに応じて、自身のMP量を上昇させる。


薬師

調薬を行う者をサポートするジョブ。ジョブのレベルに応じて器用と精神のステータスを上昇させる。


防人

パーティーメンバーのサポート、補助に特化したジョブ。ジョブのレベルに応じた防御バフをパーティーメンバーに与える。


フィリア

巫女

【巫女術】を使うことに特化したジョブ。

ジョブのレベルに応じて消費HP量を軽減する。


ブルーメイジ

水属性の魔法に特化したジョブ。

ジョブのレベルに応じて水属性魔法の威力と消費MP量の軽減がされる。


宝納権術 習得中(現在のLV6)

とある異界で主流となっている巫女術の流派。

他の流派よりHP自体、付与に特化した流派であり、特に付与する媒体が価値あるものであるほど、その威力を上昇させる。ジョブのレベル上昇に合わせて、HPの操作に補正が入る。


魔方陣作成士

魔方陣の作成をサポートするジョブ。ジョブのレベルに応じて、精神と知力のステータスを上昇させる。


魔方陣術士

事前に作成した魔方陣を使った魔法を操るジョブ。ジョブのレベルに応じて魔方陣を用いた魔法の威力を上昇させる。


「ソルは【剣士】にする!」


流石のソルは即断即決である。ただ、強さを確認するため飛び出そうとしたので、フィリアに捕まった。その後、ルナは【アサシン】を、アイルは【防人】を選択。


「よし。それじゃ明日からがんばろー!」


「そうですね。明日からがんばりましょう!そうしましょう!」


「二人ともいい加減現実を見ようか?」


「「…はい」」


そういって、アイルが先送りにしていた加護の話を蒸し返す。まあ、いつまでも無視できるものではないのだから、ここいらで確認しておきたまえ。


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創始双愛

護が認めた者に、「守護神獣の卵」を与える。そこから孵化する神獣は、与えられた者の性質により姿と力は変わる。


子は親を見て育つ鏡。施すものには与えられ、奪うものは奪われる。

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一見するとそこまで問題が無いように見える加護の説明だ。しかし、それも最後の一文で台無しであるが。


今更だが護の権能は親愛で、その本質は施しである。つまりは自己犠牲なのだ。故に、護の加護にはデメリットが伴うことを護自身なんとなく理解している。だからむやみに扱うことにためらいが発生するのだ。


「さて、どうするか…」


「どうするも、与えてみるしかないんじゃないですか?」


「きゅるきゅる~」


アイルの正論になぜか同意するようにクロム。結局は試してみないとわからないのも事実。何よりクロムとソルとルナの期待する視線が護とフィリアに突き刺さる。


10秒の無言の圧。先に屈したのは護とフィリアであった。


「フィリアねーずるいー!」


「ずるくありません!何が起きるかわからないんですよ!」


ただし、初めに加護を受けるのはフィリア。これだけはフィリアが譲らなかった。


「それじゃ、行くね。」


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創始双愛をフィリアに使用しますか?

Yes / No

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見慣れた画面が表示され、Yesを選択する。すると、護から光があふれ、フィリアの腕の中に集まり輪郭を作っていく。その光が治まると…


「あの、これはどうすればいいのでしょうか?」


両手に収まるぐらいの卵こと、【守護神獣の卵】が手の中に収まっていた。同時に、その卵の基本的な情報が護の脳内に流れてきた。


「えっと、まず毎日MPを与えてあげて。それと、基本的に離れないと思うから傷つけないように注意するように。」


「離れないですか?あ、だめですよ。」


その言葉を肯定するように、生まれたばかりの【守護神獣の卵】はぷかぷかと浮き上がる。そして、まるで甘えるようにフィリアの胸の中に。初めは卵が飛んでいることに慌てたフィリアであったが、最終的にはそっと抱きしめ返す。


「これは…胎動してる?」


手の中に伝わる命の鼓動。そして、これが【魔物の卵】や【神獣の卵】との大きな違い。すなわち、この卵には既には魂が宿っていることを意味している。


「生きているからね。だからインベントリーに収納することはできないみたいだ。」


「それは、もし何かの事故でこの卵に攻撃が当たってしまうとし、死んでしまうのですか…」


その質問に答えるように、護の脳内に情報が追加される。


(てか、教えてくれるなら加護を得たときに教えてくれよ)


そう思った護に対して、「だって、聞かれんかったし…」と返された気がした。ちゃんとホウレンソウはするように。


「攻撃があたった場合は込められたMPを消費して自身を守るみたい。ちなみに雑に扱うとそれでもMPを失うようだ。もし足りない時は、強制的にMPとHPを加護を受けたものから奪い取るらしいから気を付けて。」


まとめると、孵化まではMPを毎日与えて、日数とMPが十分になると生まれる。途中何かあるとMP消費、日数リセットとなるわけだ。


「そう言ったデメリットがあるみたいだし希望者だけで…」


残念ながら、期待の目線は変わらず護に向けられている。むしろアイルの分が増えている。そして結局、全員が卵を手に入れるのだった。


余談


「t離れないんじゃなかったんですか?」


「な、なんでかなー」


「クルルー♪クルルー♪」


「わん!」


なぜか、護の手の中に来るフィリアの卵。楽しそうにクロムの元に集まるソルの卵に、ネオンの尻尾の傍から動からないルナの卵。まともに傍にいるのはアイルの卵のみ。他は自由奔放に生きるている(生まれてないの生きているでいいのかは置いておく)


と、とにかく、異界内に本人がいれば卵は自由なのだった。

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