8日目(初収穫)

「それじゃみんな、協力よろしく!」


「はーい!」「ん!」「了解です。」「任せてください。」「ワン!」


この日は待ちに待った収穫日。丸々と育った野菜を皆で手分けして収穫していく。


「ワン!」


「ネオンすごーい!ソルも負けないよー!」


ネオン&ソルは収穫に時間がかかるジャガイモを担当している。既に二人とも土で黒くなっているが、まあ楽しそうなのでいいだろう。


「アイル兄さん…こう?」


「もう少し下かな。」


アイルとソルはトランブロッコリーを担当。可食部になる茎は大根並みに太く、そこそこの太さがある。しかし、ブロッコリー特有の花蕾は、茎の先にお気持ち程度あるだけである。


「ここ…?」


「そうそう。そこからナイフで収穫しちゃって」


そんな、トランブロッコリーをアイルに説明されながらアイルがナイフを入れる。


シャキ!


小気味よい音を鳴らしながら、ランブロッコリーが切り取られる。その切口から滴る水滴にルナが驚き、アイルが興味深そうに眺める。


「フィリアこっち側は収穫終わったけど。」


「こっちももうすぐ完了です。」


「なら、こっちは任せるね。俺はキャベツの収穫進めるよ。」


「わかりました。」


フィリアと護はトマトを収穫を進めていく。


(会った当初なら、俺が収穫に手伝いを使用とするだけで慌ててたのに成長したな)


「…マモル様?なんかすごく失礼なこと考えてません?」


「いいや?ただ、フィリアも馴染んだ成長したなーって。」


「なんか発言に含みがありませんでしたか!?ねえ!護様!?」


「ははは、そんなことないよー(棒)」


「完全に棒読みですよ!怒りませんから本当のことを教えてください!」


「すでに怒ってるじゃん!」


何かを感じ取ったフィリアが護へと食って掛かる。


「あー!フィリアねーとマモルにーが遊んでる!ダメなんだよー!ね、ネオン?」


「ワン!」


「ほら、ネオンもそう言ってる」


それをここぞとばかりにソルが注意する。なお、ネオンの感情は「あそぶ!あそぶの!?」であることは護だけが知っている。果たして初めの頃の忠犬ぶりはどこに行ったのやら…


「これが密ホウズキか。」


「マモル様、割らないように慎重!慎重に収穫してくださいね!」


なんやかんやありながらも護たちは最後に残った密ホウズキの収穫を行っていく。名前の通りその見ためは黄色いホオズキ。しかし、表面萼がくは6角ではなく8角状になっており、その中にたっぷりと花の蜜が詰まっている。


(うわ!思った以上に柔らかい。なんというか水を満たしたビニール袋みたいな感触)


収穫のために手にした密ホウズキがふにゃりと形を変える。無理やりもぎ取ることはたぶん可能。しかし、もしそのまま握り潰してしまうことがあれば、横で監視見守るっているフィリアが何をするかわからない。故に護は安全策を選択する。


「フィリア一度ルナからナイフ借りてきてもらっていい?」


「読んだ…?」


目の前に収穫に神経を集中していた二人の後ろからルナが顔を出す。見れば、アイル達が担当していた収穫もほぼ終わっており、アイルはソルたちが掘り起こしたジャガイモとカブの回収を行っている。どうやらソルとネオンは掘り出すことが楽しくて肝心の回収を忘れていたようだ


「あ、ちょうど良いところに。悪いんだけどナイフを貸してもらっていい?」


「ん…」


借りたナイフを片手に再度収穫に挑む。


(あれ、うまく切り取れない?)


「ああ!マモル様!力入れすぎです!そのままだと潰れちゃいますよ!」


思った以上にナイフが進まない。しかし、力を籠めると密ホウズキにも力が加わってしまう。そうして苦労していると横からルナが手を伸ばす。


「ん…」


ナイフを握った手を器用に操り、あまりにも簡単に切り取る。


「…ぼくが収穫…やろうか?」


「…お願いします。ルナ先生。」


「…ん!」


結局ルナが全て収穫するのだった。


大方の作業が終わったのは太陽が天高くに昇ったころであった。作業自体は早朝に始めたので、時間としては4時間程度。現在は収穫したものを食糧庫に運び込んでいる。なお、護の無制限インベントリーがあるので後片付けはかなりスムーズ。


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収穫結果

収穫物

トマト+1

ジャガイモ+1

カブ+1

キャベツ+1

トランブロッコリー+1

密ホウズキ+1


副産物

トマトの種×2

ジャガイモの種×2

カブの種×2

キャベツの種×2

トランブロッコリーの種×2

密ホウズキの種×2

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数が多いので個数は省略。大体、一週間は余裕そうな量である。なお、横に添えられた+1は、【畑】で丁寧に育て場合につくもので、今回の場合は日々のフィリアの水やりが該当。この値が大きいほど、味がよく、食材の効果を上昇させてくれる。当然、これを使った生成物の高kぁも上昇させてくれるぞ。


午後はダンジョン攻略のため、4人のレベルアップを行う。まあ、前回の段階である程度方針が決まっていたため、今回はそこまで時間はかからなかった。ただ、そのせいで中途半端に時間が余ってしまったので、この日はみんなで夕食を作ることに。


「ソル、トランブロッコリーはこんな感じで切ってくれる?あとその剣はしまってね?」


「はーい!」


「とか言いながら、剣を振り上げないでね!?」


「弱火で1時間ということは…強火なら15分でしょうか?」


「料理は…あんまり知らないけど…それは違うと思うよ?」


「ルナ。すまないけどフィリア目を離さないでくれるかな?」


「マモル兄さん…できるだけ頑張る。」


「え…あの、護様?」


その後も、フィリアが料理に密ホウズキをアレンジと言い張って入れようとしたり、ソルが我慢できず蒸かしている蓋を開けようとしたりとハプニングはあったが、男性陣の尽力により何とか料理が完成する。


「「「「「いただきます!」」」」」


本日の夕食は収穫したカブと、残っていたベーコン、そこにトランブロッコリーを入れたスープと、新じゃがの蒸かし物である。


「シャキシャキ!おいしい!」


「ん…(ぱくぱく)」


「あちゅい…あ、でもトランブロッコリーの食感と交互に食べるとずっと食べられそうです。」


「疲れた…」


「右に同じく…」


なんか一部疲労がピークに達しているものもいるが気にしてはいけない。ちなみにスープの味付けは塩と胡椒。そんなシンプルな味付け故に一口目からカブの優しい味が口の中に広がる。また、口の中で存在は主張するトランブロッコリーは噛むほどシャキシャキと優しい甘さが溢れてくる。何より、自分たちで育てた初めての食材とみんなで作った料理ということが4人にとって最高のスパイスとなっていた。


「「「「「ごちそうさま」」」」」


さあ、英気は養った。明日はゴブリンダンジョン攻略のはじまりだ。

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