6日目午後(再調査と精霊②)
護は転生前はボードゲーム、中でもTRPGが好きであった。当然デシタルなゲームも好きだし良くやったが、会話でストーリーが進む故の柔軟な展開が何よりも好きであった。
そんな護をそれができる環境に置いて、やっていい大義名分与えたらどうなるのか。それは目の前で作成されたものが証明していた。
ロア沼のバリスタ弾丸
名前こそふざけているが、その性質は間違いなく悪質であった。
まず、製作の条件として、どこかが接続している必要があった。そこで採用されたのが分裂させたいパーツを細く弱い土で繋ぎ、衝撃で分裂させるという方法。これにより、バリスタ内部はクモの巣のように細い土が張り巡らされ、無数の小さな玉を繋いでいる。
しかし、これではただ着弾した地点に小石がばらまかれるだけ。少しつまらない。そこで、槍先の接続部分の一部をあえて弱くし、軸となる矢の部分と小さい粒を納めている筒部分が滑空の途中でパージするように調整していた。要は、現代兵器である、クラスタ弾とショットガンを混ぜ合わせたようなものがこのバリスタ弾丸の正体である。
まあ、何はともあれ強力なダンジョン攻略アイテムを入手に成功した護たちであった。
「では~あとは当日に~…う~ん?」
「どうかしたの?」
そうして自身のやるべきことを終えたロアが話を閉めようとしたところで何かに気が付く。
「今~、外にゴブリン達が来てます~。そうです~!せっかくだからアイルも~練習しましょう~」
「どういうこと?」
「だって~ダンジョン攻略の時は~アイルと仮契約しますから~今のうちに慣れましょ~」
「いや聞いてないからね?」
「あれ~?でも今言えたから大丈夫ですね~。では~行きますよ~」
「ちょっと!マモルさんも止めてくださいよ…」
「うん?いいじゃん頑張れ!」
慌てるアイルだったが、この場にはマイペースなロアと成長のためなら多少の犠牲は仕方ないと割り切る
結局、アイルでは止めること叶わず、やがて沼地の端にゴブリン達が現れる。よく見ればその集団を指揮しているのはゴブリンリーダ。合計5体にもなる、そこそこの規模の集団であった。さすがに数が数のため、護も警戒度を上げる。しかし、
「おお~きました~きました~♪それじゃあ~、アイル行きますよ~♪」
そんなことは関係なしとロアはそのマイペースを崩さない。そんなロアを追いかけてアイルも沼地の上を歩いていく。
「あ~、精霊さんたち~今回はお手伝いは不要ですよ~。あくまで~これは私の力である必要がありますから~ではアイル~今から契約しますね~」
そういったロアはアイルとの仮契約をするため、パスをつなぐ。
精霊との契約とは、簡単に言えばその精霊と魔力のつながりを作ること。これにより、精霊は術者からより効率的に魔力を受け取ることできるようになる。ただし、どれだけやっても周辺環境の影響を受けるのが精霊の魔法と人の魔法の違いである。つまり、環境を見方にした今のロアはかなり強いってことだ。
「ここは私のテリトリ~ですので~♪」
のんびりと、しかし自信に溢れた言葉と共に周辺の沼地が波打ち、どろどろとした球体が浮かぶ。
「アイルも~魔力を回してくださ~い」
「もう…次はちゃんと相談してくださいね?」
「は~い」
アイルの魔力がロアへと流れる。今までは周囲に拡散するように溢れていた魔力であったが、今は繋いだパスを真っ直ぐと流れていく。
「あ、来ました~来ました~♪。あぁ~、やっぱりアイルの魔力は馴染みます~♪」
ロアは恍惚とした表情でアイルの魔力を味わう。はじめは、ゆっくりとであったその速度は段々と上がっていき、それに合わせて周囲の球体もその体積を膨らませていく。
「ってロア!ちょっと取り込むペース早いって!」
アイルの魔力、その全てを吸収する勢いであったロアをアイルが慌てて止める。これが契約の怖いところである。送りやすいとは、即ち奪われ安いことに他ならないのだ。故に精霊との信頼感は大切となる。
「あ~ごめんなさ~い。少し夢中になってました~」
正気に戻ったロアが魔力の受け取りを緩め、小さな手を合わせながら謝罪する。その姿はどこかあざとい。
「ではでは~すこーし、遊びましょう~。」
無邪気に放たれた言の葉。それに答えるように周囲に浮かんだ泥が胎動し、ゴブリン達へと向かう。動きはそこまで早くない。しかし、蛇が動くよう不規則な軌道はまるで生き物のを思わせる。
「ゴギャー!?」
突然の出来事に握った棍棒を我武者羅に振って抵抗。しかし、いくら生き物ような動きでも、それはただの泥の魔法。棍棒に殴られようがそこから枝分かれしてゴブリンへと迫っていく。
「ゴボ…ガ…」
そのまま首元に巻き付いたそれは、口と鼻を塞ぐ。慌てて口元に手を伸ばすも、掴んだ泥は指の隙間からニュルリと抜けだるばかりで文字通りつかみどころがない。
「ロアこっち来るよ。」
「お任せを~え~い」
既に痙攣しているゴブリンを放置して、残りゴブリン進んでくる。対して、ロアは今度は球体のまま投げつけるが、ゴブリンにあたると、そのまま霧散する。
「あらら~効いてないですね~」
「さっきのあれはできない?」
「いや~…あれ思った以上に時間がかかるのと~コントールに魔力を消費しちゃいます~も~っとアイルの魔力
最後の言葉はどこか期待が込められた言葉である。ロアはこの場所の沼の精霊故に操れるのはこの柔らかな泥のみ。しかし、先程の攻撃を何度も刷るにはアイルの魔力が足りなすぎる。
(泥は正しくは、水と土が混ざった物。だからその密度を変えてあげれば…)
「ロア!僕に任せて。だからもう一回同じようにお願い。」
「は~い」
新たに生み出した球体が生み出される。そこにパスを介して、アイルが干渉し、多すぎる水分を分離させて土の密度を上げる。
「ロア行くよ」
「発射~」
掛け声と共に放たれた球体は泥というよりは粘土と表現すべき硬度。それが先ほどよりも早い速度でゴブリンへと放たれる。
「ゴギャ!」
「お~効いてますね~」
「ロア魔力消費はどうだった?」
「大丈夫で~す。ではまとめて行きますよ~」
そう言って今後は複数の球体を作成してはアイルが調整を行う。まるで雪合戦のように次々と放たれるその泥団子は、着弾後もゴブリンに付着しその動きを妨害していく。
「ゴギャギャー!」
しかし、それでもゴブリン達は止まらない。その数を3体に減らしながらもアイルとの距離をあと着実に積めていく。そうして、残り数歩となったところで握った棍棒を振り上げようとした。
「ゴギャ?」
いつもと違い、振り上げるのに抵抗を感じる。いや、手だけではない。踏み出す足も、見えてる視界もはじめからこうだったろうか?
思考するゴブリンリーダの視界の端に付着していた泥の一部が流れる。
「お疲れさま。」
アイルが小さく呟く。この時、ゴブリンリーダは目の前の存在こそが今の状況を作り上げたことを理解する。それと同時に付着した泥がその重量が増し、足場が
「ゴギャ!?ゴギャ!ゴギャ…ボゴ……」
慌てて足掻くも既に遅く、無慈悲にもゴブリンは沈みゆき、完全に動けなくなる。
「ロア。」
「は~い」
ロアとアイルは魔法を紡ぐ。そうして産み出されるは土でできた巨大なツララ。それがブリンリたちへと降り注ぎゴブリンリーダもろとも光へと変えるのだった。
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リザルト
ゴブリンLv1 × 4
ゴブリンリーダーLv3× 1
ドロップ
棍棒 ×1
魔石 Lv1×4
魔石 Lv3×1
総経験値 7点
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