6日目午後(再調査と精霊①)

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現在のリザルト 

ゴブリンLv1 × 9


ドロップ

棍棒×6

魔石(ゴブリン)Lv1×9


総経験値 9点

配分 各4.5点

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ゴブリンダンジョンに訪れた護とアイルは襲来するゴブリンをなぎ倒しながら奥へと進んでいく。そうしてしばらく進んでいれば、森の中には不釣り合いな建築物が見えきた。


「ここが話していたダンジョンになります。」


「へー。せっかくだしもう少し近づいてみるか。」


「あ、ちょっと!」


無遠慮に近づいていく護。ただ、接近したことで遠目からではわからなかったものも見えてきた。例えば一見すればただ丸太が積まれただけに見えた外壁だが、その表面は防水のためか、薬品によってコーティングされている。また、ところどころ開けられた穴はおそらく外部から接近してきた相手への迎撃用の小窓なのだろう。姑息なことに、穴の後ろに同色の壁を設置することで遠目ではわかりに食い設計となってる。ただ、今はその機能を利用されていないのでただの飾りでしかない。


「せめて一言くださいよ。」


「ごめんごめん。とりあえず次行こうか。」


アイルと合流した護に小言を言いながら、今度はソルたちが見つけたという場所へと移動する。


「ここですね。」


木登りと縄梯子に苦戦しながらも、どうにか上りきった護たちは、ツリーハウス内部に足を進める。


内部は小さな机と椅子の他、一体型のクローゼットも配置され、聞いていた以上に生活感を感じる空間となっていた。なお、今訪れているの2回目の探索で見つけた方のログハウスだが、ソルとルナの話では始めに見つけたものと内装に大きな違いはないらしい。


「確かこの部屋の外にバリスタがあるんだよね?」


「そうです。こっちですね。」


二人はバリスタを始め、手分けして周囲の探索を行う。しかし、ダンジョン周辺の壁と同じと思われる加工がウッドデッキや、ログハウスにもされていたこと以外に新たな発見はなかった。


「とりあえず、この椅子だけでも貰っていこうか。」


護はそう言って椅子を回収し、次の場所へと向うのだった。


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道中リザルト 

ゴブリンLv1 × 6


ドロップ

棍棒×1

魔石(ゴブリン)Lv1×6


総経験値 6点

配分 各3点

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そうして次に訪れたのは、ダンジョンの裏手側。現状、護たちが最も危険な場所と警戒している場所である。


「わかってたけどこの場所だけ浮いてるよな?」


草木は枯れ、沼地が広る。先程まで広がっていた緑豊かな光景が嘘のような光景がそこにはあった。そんな光景に若干の違和感を感じながらも護たちは進んでいく。


「精霊たちもこの場所だけ少しレベルが高いですね。せっかくなのでお手伝いをお願いしてみます。」


周囲にいる泥や、沼の精霊たちに向けてアイルは【精霊術】を使用する。それに答えた精霊たちが二人の回りの泥を固め、水分を移動させて二人の歩みを助ける。


「そういえば【精霊術】はレベルが上がって使用感は変わった?」


「なんというか、精霊に魔力を渡すときの無駄が減った感じです。言い方はあれですけど効率的に精霊を従えられるようになったというのでしょうか?」


そんな会話を挟みつつ、二人は沼地の中央に配置された巨大な琥珀色のクリスタルに向けて歩みを進めていく。周囲に集まった精霊たちにより彩られたそれは、幻想的な光景を作り出していた。


「それで、あのクリスタル何なんだと思う?」


「わからないですね。ただ、すごく精霊が集まってますね。」


そんな幻想的なクリスタルの中で静かな寝息を立てて眠る羽の生えた女の子が一人。手のひらに収まりそうな儚い少女は、しかし周囲の輝かしい光景の中豪胆に眠り続けていた。


「…すう…すう……」


「精霊…だよね?」


「はい、間違いなく精霊です。過去に読んだ本に力を持った精霊はその姿がはっきりと視認できるようになると書いてあったと思います。」


精霊はその力を強めるごとに、自我を獲得しはっきりと視認できるようになっていく。そうして、自我を持った精霊はその力に合わせて下級精霊、中級精霊、上級精霊、冠位精霊と位が上がる。なお、下位精霊に満たない精霊は浮遊精霊と呼ばれ、精霊術を持たないものには淡い光にしか見えない。要は、護たちの目の前にいる精霊は最低でも下級精霊と呼ばれる、他の精霊よりも強い力を持った存在だということだ。


『聞こえるかな?』


アイルは念のため【精霊術】を使いながら、今なお眠り続ける精霊に声をかける。まだ眠いのか、ゆったりとした動きで目をこすりながら、気怠げにその目を開いていく。


「…う~ん?あ~人間さんだ~。こんな場所にも~来てくれるんだね~」


『えっと、君は?』


「私は~沼地の精霊のロアです~。あなたの声は~すごく聞きやすいですね~。それに~そっちの方は~神様ですね~。」


そうして二人のことを順番に確認したロアは何かを考えるように顎に人差し指を当てながら瞳を閉じる。


「う~ん。精霊と~精霊に愛された人~。そんな方なら~きっと手伝ってもらえますよね~」


「いや、聞こえてるぞ?」


「そうでした~私の声も~聞こえるんですよね~。でも~どうせお話しますので~構いません~。実は~私を育ててくれたリュカ姉様を~あのダンジョンから救っていただきたいのです~」


これを聞いてアイルは悩む。というよりアイルとしては受けてあげたい。しかし、他のメンバーに相談せずに受けていいものだろうか。


『困ってるの?じゃ助けてあげる!』


『…うん…任せて』


『私が何と貸します。』


(あ、こう答えるのが容易に想像できる…それに、今の僕は親愛神の信者なんだしね。困った人を助けない理由なんて不要かな。)


考えれば考えるほど、断る理由がないことに気が付きロアに対して頷くアイル。それを見て少し護もうれしくなる。


「わ~い♪あ~当然私もお手伝いしますよ~。手始めに~これをどうぞ。」


「これは?」


手渡されたのは一見するとただの土。触れると簡単には形の変わるそれは、しかし決して指の隙間からこぼれることはなく、常に固まりとして存在していた。


「これは、変幻自在の泥粘土です~。本来は~加工して使うのですが~。私にかかれば~」


護の手の内でその形を剣へと変えていく。明らかに元の塊より体積が増したそれは、変化の完了を持って物理法則を思い出したように重く、そして固く変化する


「こんな感じで~好きな形に変えることができるのです~。そして~これをダンジョン内に突き刺して~ほしいのです~。ある程度は大きさわ~変更できます~。でも~どうしても私の影響が~大きく出てしまうので~泥以外にはできませ~ん。」


「うん?突き刺すだけでいいの?」


「そうです~。この粘土は~私の影響を強く受けてるのです~。なので~これが刺さった場所を起点に~周辺を支配して~サポートするのです~」


「ちなみに、剣以外にもできる?」


「できるのです~。でも~これだけで2つの武器を作るとかわ~無理~」


「俺からも一つ。例えばこの剣が途中で折れて二ヶ所に刺さったらどうなる?」


「二ヶ所から侵食できるので~お得です~なので~思いっきりぶつけて~砕いてほしい~の」


「ほおー…?いいんだな??」


「はい~。バラバラの~バラバラにしてください~」


後にこの時の護の笑顔をアイルは邪神の微笑みと表現。そして、その顔をしたら時の作戦には露骨に警戒するようになる。


そうして、護の熱心な説明により粘土槍のバリスタ弾は作成されたのだった。

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取得アイテム

マゼマゼ粘土のバリスタ弾

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