5日目午後(帰還と既視感と危機感)
「あ!フィリアねーたちが返ってきた!」
いろいろトラブルがあったことで、結局アイルたちよりも遅い帰還となった護たち。そんな一行をめざとく見つけたソルが駆け寄る。
「ただいまです。ソルも怪我はないですか?」
「うん!」
駆け寄ってくるソルをフィリアが慣れた手つきで抱きしめなが、お互いの無事を確認しあう。見れば、ソルの声に反応してアイルとソルもこっちに向かってき歩いて来ているようだ。
「お疲れ様です。こっちは順調でしたけど…そちらは何かあったみたいですね…」
アイルは連れ添っているネオンを見ながらそう問いかける。いや、呆れていると表現すべきだろうか。
「あはは、こっちはいろいろとね。詳しい話は後で話すよ。」
「だいたい護様が首を突っ込んだせいですけどね!」
「いや、フィリアも途中からノリノリだったじゃん。」
「いいえ、護様があの場所に行かなければ、あんな選択はしません。ま、まあ、ネオンはかわいいので悪い選択ではなかったとは思いますが…」
自身の無実を主張している最中、ネオンがすり寄ってきたことで、その主張がだんだん弱くなる。そこで、ソルがネオンの存在に気がついた。
「この子、ねおんって言うの?かわいい!」
「わん!」
「あ…」
フィリアから離れたソルが遠慮なくネオンの頭を撫で、ネオンもお返しとソルの顔を舐める。それを少し離れたところでルナがうらやましそうに眺めていた。
「えへへ、くすぐったいよ!」
「…」
「ルナも行ってくれば?」
「ん…!」
ルナは待ってましたと言わんばかりにソルの横に向かう。そうして恐る恐るといった感じで手を伸ばす。
「ワオン?」
どうしたの?もっと撫でて!そんな意思を伝えるようにネオンがルナにすり寄る。
「え…?」
「ルナにー!ネオンが撫でてって言ってるよ!」
(いや、ソルの順応性高すぎないか?)
実は護にはネオンの気持ちが伝わってきている。これはテイムの際に疑似とはいえ自身の魂を分け与えていることが原因だ。しかし、それとはまったく関係のないはずのソルが完璧にネオンの感情を理解していた。護はネオンとソルを見比べる。
「ワオン??」
「どうしたの??」
(((あぁー、似てるのか)))
奇しくも全く同じ角度で顔を傾ける1匹と一人。それを見たルナ以外の3人が一つの結論へ至らせるのだった。
そんなネオンとのファーストコンタクトを終えて、教会内でいつもの3人が集まり、今日の成果を話し合う。なお、ソルとルナは引き続きネオンと交流中だ。
「…といった感じでネオンが仲間になったんだ。」
「そうだったんですね。こっちは余り大きなことはなかったのですが…」
そう前置きをして、アイルたちの戦果を話していく。
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アイル達のリザルト
ゴブリンLv1 × 21
ドロップ
棍棒 ×9
魔石 Lv1×21
回収アイテム
柿 ×15
渋柿 × 4(未鑑定)
イチゴ × 17
木苺 × 67
取得経験値 各8.4点
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前回同様ゴブリン討伐しつつ、今回は果実などの収穫もしてくれていたらしい。討伐数自体は減っているが、同行人数が3人になったことで一人辺りの経験値取得量は増加しており、この調子ならレベル2を超えて3に到達するのも直ぐだろう。
「良い感じですね。何か困ったことありましたか?」
「こっちは特に問題はなかったです。」
そういって前置きしてアイルは、これまで探索していなかった方向に行ったこと。そこでまた高台とバリスタがあったこと。北側にはダンジョンへの入り口はなく、そっち側だけ堀があったことを報告する。
「それと…これは僕個人の感想なんだけど…北側になんというか違和感があるんだ」
「違和感ですか?」
「うん、なんというか高台から見た距離と実際に距離が違う気が済んだよね。」
曰く、高台から教会側も北側も距離は変わらないが、歩いてみると疲労感が違うらしい。ただ、なぜなのかがわからないのだそうだ。しかし、この場で悩んでいても答えは出ない。
「なるほどね、興味もあるし俺も一度ゴブリンダンジョンに行ってみようかな。ほら、ダンジョン攻略の時のために一度バリスタとかも確認もしたいし。」
悩む2人に護が提案する。フィリアとしては今回のように何か起きそうで断りたいが、逆に護が行けば何か変化があるかもと期待する気持ちもある。アイルも、視点の異なる護の意見は参考になるのと考えているので反対する理由はない。結果、護の意見は簡単に通るのだった。
「でも、みんなのレベルアップの邪魔もしたくないし、なんなら一人で見てくるよ?」
「…何度も言いますけど万が一でも護さんがやられてしまうと困るんですが?…すごーく困るんですが!?」
「ははは、冗談冗談。」
「じゃあ、またフィリアさんがついてく感じですか?」
もう!もう!と、怒っている?フィリアにアイルが確認する。しかし、それを聞いたフィリアは小首をかしげながら、意外な答えを口にした。
「いいえ?今回着いてくのはアイルですよ?」
「え?」
「ソルとルナは戦闘向きですので、言い方はあれですが勝手に成長してきます。でも、アイルの場合は前にも言いましたが少しテコ入れが必要だと思っていましたので良い機会だと思いますよ。」
「確かに2人なら、経験値効率はいいですね。わかりました。マモルさん次回はよろしくお願いします。」
「護様、アイルをよろしくお願いしますね。もし、怪我をさせたりしたら…」
「フィリアみたいに前に出ないだろうし、今回よりは楽だね。」
「なんですか?まるで私が諸突猛進の猪女だと言いたいんですか?」
「そこまで言ってないけど…割と感情的になるところはあるよね?」
「言い切りましたね!?確かにありますけど!」
「あ、自覚はあるんだ…まあ、それもフィリアらしさだし大切にしてね。後、アイルに怪我もさせないから。そこは信用してほしいかな。」
「…ま、まあ、護様も反省しているようなので今回は見逃してあげます!」
「うん、ありがと。後、改めてアイル次回はよろしく。」
「あ、はい。こちらこそよろしくお願いします。」
「よし!難しい話おしまい!それよりせっかくお肉がたくさん手に入ったんだから今日ぐらいは満足いくまで食べようか!」
「そうですね。レベルアップも方向性を決めてからの方がいいですし、今日はここまでにしましょう。」
「よし、大量に焼くからアイルも手伝ってくれる?」
「わかりました。それと料理中に少しスキルについて相談が…」
「OK!任せろ。」
「では、わたしはソルと、ルナの方でステータスや、スキルの取得について話してきます。」
そう言い残してフィリアは足早に部屋から出ていく。護たちはそれを見送ったところでさっそく調理を始めるのだった。
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