3日目午後(教会内の冒険)

「マモルにー!ひま?」


「暇だよー」


午後はこれといって予定もなく、なんとなく教会の椅子に座っていた護へソルが声をかけてくる。見れば、後ろにルナも連れ添っており、こちらはどこかすまなそうな顔をしていた。


「なら!教会のなか案内する!マモルにーきてきて!」


「ルナ…マモル様…これでも神様なんだ…から。」


元気すぎるソルをルナが注意する。その際、なぜか護に流れ弾が行くのはご愛敬と言うやつだ。


「えーでも、マモルにー前にきらく?に話していいっていったよ!」


「そうだぞー。ルナも呼びやすいように呼んでいいからな?」


「ん…なら、マモル兄さん…で」


「おう!で、教会の中を案内してくれるのか?」


「そうだった!マモルにー前に言ってたよね!こんど案内してって!」


なお、護は基本的に自由時間は神域に戻ってしまっている。これは4人に考慮している面もあるが、それ以上に知識を得るためである。決して娯楽が多いからではない。そういった理由もあり、これまで護は教会内はキッチン付近以外はあまり訪れたことはなかった。


「せっかくだし、行くか~」


「うん!」


そういって駆け出すソルとルナ。そんな二人だが、対象的な性格に対して髪色以外は良く似た兄妹である。というより、ルナが中性的な見た目なので何も知らなければ双子の姉妹と思われることが多い。そんな猫耳と尻尾がかわいい兄妹である。


そんなんことを護が考えている間にも、二人は東側の扉を開き、キッチンへと入っていく。


「ここが!キッチン!」


「ん…ここがお風呂…」


まるで捉えた獲物を自慢するように護へと紹介していく。そうして、説明を終えるとまた次の部屋へと向かう。


「ここが、トイレ!」


「でここが…倉庫?」


「ここから外にでられるの!」


礼拝堂を、抜けて真っ直ぐ。西側に当たる扉の先で、二人が交互に話す。部屋と言うよりは通路に近い場所となっており、そこから、倉庫、お手洗い、そして二階へと別れている。倉庫には入ってきた場所とは別にドアがあり、そこからは外に出ることができる。また、空間サイズ、時間を無視できる食料庫がここと、キッチンに設置されている。食料庫は全て繋がっているため、収穫してきた食材をここにいれておけばキッチンで取り出しすることも可能となっている。


「マモルにー!こっちこっち!!」


そう言いながらソルとルナが階段を駆け上がって行った後を護が追いかける。階段は途中で切り返しているタイプで勾配は緩やか。そんな階段を上りきった先には手前と奥に合計2つの扉が設置されていた。


「こっちがフィリアねーのお部屋!」


「こっちは…アイル兄さんの…部屋だよ。」


「あれ?二人はどっちにいるの?」


「んーと!?今日はどっちだっけ?」


「朝は…フィリア姉さんの部屋が良いって…言ってたよ?」


「じゃあ!こっち!!」


要は日替わりで行きたい方に行っているんだと護は理解する。二人はまだ5才程度。きっと男女で分けるよりも自由にさせた方がいいという判断なのだろう。


「ソル?どうかしたのですか?」


そうやって扉の前で騒いでいると、部屋の中からフィリアの声が聞こえる。


「あ!フィリアねー!今ねマモルにーをあんない?してるの!お部屋入るねー!」


「え?」


(え、どうしましょう!なにもない部屋ではあるのですが…それはそれとして、こんな場所に神様を招いて良いのでしょうか?)


「フィリア?ソルはこう言ってるけど入って大丈夫?」


「え-と、特に何もない場所ですよ?」


「それはそれとして、部屋のサイズとかは見ておきたいかな?まあ、今日になったのは完全に流れだけど。」


「そういうことでしたか。もちろん大丈夫です。今開けますね。」


そういって開かれた部屋は文字通りなにもなかった。唯一、備え付けの毛布が端に畳まれて置かれている。一つだけ凹んでいるのはフィリアが先ほどまでそこにいたのだろう。


「予想はしてたけど本当になにもないね。今さらだけど必要なものあったりする?」


「正直に言いますと必要なものばかりです。それでも最優先は衣服類ですね。」


「服かー。さすがにすぐは無理だね。神格が上がって解決してくれると良いんだけど。」


「確か、施設の中には金銭と物品を交換する施設もあります。性能などは人が作った物に劣りますが、生活用品は大概揃いますのそれを利用できればいいのですが…さすがにいつ作れるかは私では把握してませんので。お力になれず申し訳ありません。」


「いやいや、そのことを知れたことだけで十分だよ。それにフィリアは率先して奉納もしてくれたし、十分力になってるって。」


「そう言ってくれると助かります。」


少し補足すると、現在の神格値はフィリアが所有していた経験値分、量にして20点が奉納されている。よって次の神格に上がるまで残り80点が目下必要になる経験値だ。なお、シードフィッシュを大量に倒していたフィリアが20点しかないのは、彼らが群生の魔物だったことで5体で1体カウントとなっていた故である。


「ねー!お話終わった?」


「あっ!ごめんなさいソル。護様、この話はここまでにしましょう。」


「そうだね。ソルお待たせ。」


そうして再びソルたちに手を引かれて部屋を出る。そのまま廊下を進んでいく。


「ソル大体部屋は見たと思うけど、今度はどこに行ってるの?」


「まだあるよ?こっちこっち!」


そういってソルは階段とは逆側に護を連れていく。たどり着いた場所の窓枠を足場にするすると登っていく。よく見れば天井の一部が外れるようになっており、そこからソルとルナ天井へと入っていく。


「マモルにー!これ使って!」


降ろされたのは縄はしご。日本の安定した梯子しか使ったことがない護は不慣れながらも、どうにか上っていく。そうしてたどり着いた部屋は支柱が抜き出しで、場所により天井の高さが異なる。いわゆる天井部屋と呼ばれる部屋であった。部屋全体は薄暗く、開かれた換気窓から入る光が唯一の光源となっている。


「ここが…最後…」


「隠し部屋だよ!私たちの秘密基地!」」


確かにRPGならば、隠し宝箱がありそうな雰囲気。それに屋根裏の秘密基地はあこがれた人も多いだろう。少なくとも護はあこがれた側の人間だ。


「秘密基地なら、ハンモックなんかもおきたいよね。」


「はんもっく?」


「柱と柱の吊るすゆらゆら揺れるベット。うーん言葉で説明するのは難しい…」


「マモル兄さん…他には?」


「そうだな…」


そうして、アイルに呼ばれるまで理想の秘密基地について語りあう3人なのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る