1日目午後(新たな日常へ)
頭に響く激痛が護を襲う。
「ふふ、お疲れ様。って聞こえてないわね…」
HPが0になり教会に送られると、それまでに受けた傷は修復される。しかし、それは肉体だけであり、HPは1での復活となる。その結果発生するのが
「しかし、この世界に来てその日にHP0にしてこの部屋に戻ってくるなんてね。」
どこかあきれたような、心配するような声音でリジアが護に話しかける。
「異世界転生からゴブリンとチュートリアルして、そのままサメと殴り合いと弾幕ゲーからのリスポーン。言葉にしても意味が分からないほど濃厚な一日だよ。」
「でも、悔いはしてないんでしょ?」
護は小さく頷く。
「自分でも不思議なんだけどね。願いが聞こえたとき、なぜかそれを叶えることが当たり前だと思ったんだ。それに助けを求められた放置できるような性格でもないからね。」
護は自傷気味に笑いながらそう言い切る。
「…そうなのね。でも、お姉ちゃんはそんな弟を、持って誇らしい!」
「あ、暴走した…」
そんな、どこか落ち着く会話をしている頃
「やっとついた!」
ゴブリンエリアを抜けてどこか肩の力を抜くアイル。対照的に一度は捨てた異界という場所に緊張するフィリア。
「本当にいくのですか?」
「心配しすぎ…あの神様は…悪い人ではないと、思う。」
「いや~、私も悪い方ではないと思いますし、あって感謝を伝えたいとも思いますが…それはそれとして、その…」
「…ソル…ごー」
「おー!!」
「ちょっと!引っ張らないで~」
駆け寄っていたソルがフィリアの手を掴むとそのまま黒い渦目指して駆けていく。それを確認したルナは満足そうに歩みだす。
(なんだかんだ、ルナは強引だよね。)
そんなことを考えながら、アイルも3人を追いかけるのであった。
…
フィリアは目の前に広がった空間に目を疑っていた。
(あれ?異界ってもっとこう、いろいろありますよね??)
フィリアがこう感じるのも仕方ないことだ。なんせ、異界には、最低限必要となる施設がいくつかある。しかし、ここにはその最低限すら存在しない。というか、教会と何も育てていない畑がポツンとあるだけの世界を見たらだれでも戸惑う。
「えっと、とりあえず教会に行ってみましょうか~」
「ルナ!にーいこうー!」
「あ、いつのまに…ひ、引っ張らないで…」
唯一文化的な《教会》建築物へ向かって駆け出すソル。それに手を引かれ慌てるルナは文句を言いながらも尻尾が上に向いて揺れている。二人が離れたことを確認してフィリアはあとから来たアイルに話しかける。
「アイルはどこまで気が付いてたんですか?」
「神様本人ってことと、所属人数は少ないだろってところまで。ここまでは考えてなかったよ。でも、フィリアさんにとってはこの方がよかったんじゃない?」
「まあ、そうですね…」
アイルはフィリアがなんとなく異界を嫌っていることを察していた。理由はわからないが、異界の話になると露骨に話を変えるのだからすぐにわかる。
(ごめんねフィリアさん。でも、通常の異界とは大きく異なるこの
アイルはこの先の展開を考えて心の中で謝罪した。
気が付けば4人は教会の前にたどり着いていた。フィリアが代表で木製の両開きドアを開くと静寂が支配する礼拝堂が出迎える。4人は歩みを進めていく。興味津々と周囲を確認する兄妹は椅子の並ぶ道を抜け、日差しが差し込む教壇へ進む。
「あの~、どなたかいますでしょうか~?」
フィリアの声が反響する。それに反応したように何もなかった教壇に扉が出現した。扉が自然と開きはじめ、中から護が顔を出す。
「ようこそ。まあ、何もないところだけどゆっくりしていって。」
護は軽い口調で話しかける。なお、進められた椅子に座ったのはアイル、フィリアだけ。残り2名については見慣れないものばかりの空間に好奇心を、刺激されそわそわとしている。
「神様!冒険してきていいですか!!」
「ソル~だ「いいよ。行ってきな。」めです…よ?」
フィリアが止める前に護が許可を出す。護としては、子供は椅子に座っているよりも遊んでいる方いいだろぐらいの感覚。しかし、この世界において神というのは敬うものであり、地球の感覚で言えば、王族のような存在だ。少なくとも気軽にお願いすることがで切る存在ではない。
「というか俺もこの建物に何があるか知らないんだよね。だから後で何があったか教えてくれるかな?」
「うん!任せて!ルナにーいこー!」
「うん…!」
狭い椅子の隙間を器用に走っていく。そんな二人を見送る護と目の前の出来事についていけてないフィリア。そんな彼女に変わりアイルが口を開く
「えっと、護様。この教会の構造を知らないというは一体?」
なお、アイルが冷静とは誰も言っていない。
「いや、神になってまだ一日ぐらいしかたってないし…昨日まではこことは別の世界で普通の人間として生きていたんだけどねー。人生何が起きるかわかんないや。」
アイルは思う。どうして冷静になろうと確認をして、さらに混乱しなくてはならないのかと。
「…なるほど?」
何とか絞り出した当たり障りのない答え。周辺が困惑する中空気を読まず護今までのできことを話し続ける。
「だから、かしこまらないで接してくれると嬉しいな。そうだ、せっかくなら君たちから見たこの世界とか教えてくれない?ほら、神のこと以前にこの世界のことすらよく知らないから。」
そこからは、護が質問する形で話が進む。この世界でどういった生活をしていたのか。みんなはどういった集まりなのか。どうしてあんなことになったのか。アイルの感想を聞きながら、つらかった日々と確かにあった楽しかった思い出が語られていく。そして直近の森での出来事へとつながり話が閉じる。
「といった感じです。改めてあの時はありがとうございます。」
「どういたしまして。うん、やっぱりあの時君たちを助けられてよかった。」
その一言を最後周囲を静寂が包む。そんな静寂の中、恐る恐るとフィリアが声を上げる。
「あ、あの…護様は…私たちをどうするつもりなんですか?」
既に3人が祝福を受けた以上、この異界に所属する以外の選択はない。であるならば、まだ所属することが決まっていないフィリア自身を対価に少しでも、良い条件を引き出す他ない。そう考えての一言。
「あれ?アイルから聞いてないの?」
「あー、いいわすれてましたー(棒)」
「??」
「いや、無事4人で生還できたらここで生活したいって言われてたんだよ。何にもないよって言ったんだけど、なら手伝いますって。まあ、俺としても一人だと何にもできないしありがたい提案なんだけど…」
「聞いてないですよ!」
「そうだったんだ。なら、改めて俺からお願いさせほしい。どうか、俺に君たちを幸せにさせてほしい。」
護は頭を下げる。
「あ、頭を上げてください!決して嫌と言うわけでなくて、そう!拠点を決めるという重要なことをアイルが勝手に決めたことに焦っただけなのです!」
別に謝罪されたわけでもないのに、言い訳を始めるフィリア。
「フィリアさん落ち着いて。ほら、とりあえず回答しないと。」
(アイル後で覚えておいてください!)
「それで、どうだろう?」
「…謹んで、ご提案受けさせていただきます。」
こうして、護の異界に4人目の住人がうまれた。
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