1日目午後(共に生きる未来へ)
「フィリアねぇー!!」「フィリア姉さん!!」
双子の会心の飛び蹴りがサキュレント・シャークの横腹に炸裂する。不意の一撃に行動が止まるサキュレント・シャーク。その瞬間をアイルは見逃さない。
「精霊たち力を貸して!」
魔力を宿した声に答えて、周辺の精霊が風の刃を放つ。放たれた刃はサキュレント・シャークの横腹にあたり、堅牢な装甲に僅かに傷をつける。
「グギャャーーー!!」
自身の耐久値から見ればわずかな、しかし確かな損傷は、強者を自負するサキュレント・シャークの怒りを買うには十分であった。
サキュレント・シャークが攻撃の飛んできた方向に背中に生えた植物からトゲを乱射する。機関銃の如く放たれたそれは、周囲を蹂躙してく。しかし、わずかに狙いがズレたのでアイルへの被害は流れ弾が頬をかすった程度。
「グギャャーー」
サキュレント・シャークが再び大地に潜航しようとする。そこへ護が踏み込み、その拳を振るう。サメの鼻にあたる箇所を狙って放たれた右ストレート。それはわずかに避けられるも、仕切り直しを狙っていたサキュレント・シャークの行動を止めるには十分威力があった。
「フィリア姉さん!…逃げよう!」
ルナはフィリアに近づいて手を伸ばす。フィリアは何かを言いたそうにしていたが、ルナは有無を言わさずその腕を引いて駆け出した。
「ソル!アイル!二人は撤収!!」
救護者の回収を確認した護は迷わず逃げることを指示する。即座に撤収するソルとこちらの見て申し訳なさそうな顔をするアイル。2人が下がったことを確認して護は再び構える。
(さーて、初めての信者とその候補のためしっかり殿を務めますか。)
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山上 護
LV 4
HP 57/67
MP 63/68
筋力 14
体力 13
器用 18
精神 15
知力 13
感知 13
俊敏 16
スキル (ストック7)
ガーデナー Lv3 精密魔力操作 Lv2 格闘術 Lv6
料理 Lv1 鑑定 LV4 銃術 Lv1 精密魔力操作 Lv2
親愛神
神格 1(0/100)
神格値 50
権能
無垢な守り
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現在の護のステータスはこうなっている。子供たちの願いを受けてることで取得した権能【無垢な守り】。これは護の信者が、自己利益を求めない行動中に限りステータスを2倍にし、スキル効果を増加する効果がある。また、この効果を発動している信者を護が助ける場合に限り、護のステータスが一人につき2倍上昇する効果のおまけ付き。つまり現在、護のステータスは通常時の4倍となっている。これにより護は現在レベル20の相手に対等に立ち回れていた。
護は【ガーデナー】を発動。自身のHPとMPを消費して周辺の植物を操作する準備を完了させる。
静寂が周りを包む。睨み合うサキュレント・シャークと護。
「グギャャーーー!!」
先にしびれを切らしたサキュレント・シャークが凶悪な牙が並ぶ口を開いて護へと迫る。対する護は左への大きめのステップ。そこから反復横跳びの要領で横切るサキュレント・シャークへ右肘によるタックルを狙う。しかし、サキュレント・シャークもただで反撃を受けてくれるほど優しくなかった。
サキュレント・シャークはその構造状、前進以外の移動ができない。なら、側面からの攻撃はどう対処するのか?そんな疑問に答えるように、背中に生えた多肉植物よりトゲが乱射される。
ほぼ同時にお互いの一撃が相手に届く。
側面への攻撃で体制を崩され、一時的に推進力を失ったサキュレント・シャーク。対して護は超至近距離とも言えるほど密着していたことで被弾を抑えることに成功する。
(ここ!)
護は周囲の植物を操作して、サキュレント・シャークへ巻きつける。絡まった植物はビチビチと千切れながらも、段々と残った慣性を奪っていく。そこに護が接近する。対してサキュレント・シャークも拘束されていない多肉植物を向け、迎撃の意思を示す。
「それが来るのは予想できた!」
護はサキュレント・シャークから大きく離れないようにしながら移動していく。トゲの乱射は命中精度はそこまで高くない。その事はサキュレント・シャークも理解しているからこそ、自身に当たるかもしれない状況でトリガーを引くことに躊躇が生じる。そうしてできた時間で護はサキュレント・シャークの眼前へたどり着いた。
「ここに来るまでに地球の面影を残すものが多かった。なら、お前もそうなんだろ?」
地球ではB級映画などで恐怖の象徴であるサメだが、実は明確な弱点をいくつか持っている。肉質の異なるエラ、脳に直結している目玉。そして…
「神経が集中している鼻先。さっき、ここへの攻撃だけは明確に避けたよな!」
これまでの攻防で明確に回避行動をしたのは初めの護の一撃だけ。サキュレント・シャークは慌てて、トリガーを引く。
「単純!避けられないこの状況でお前が迎撃することは予想しできてるんだよ!」
しかし、振るわれたのは引かれた拳ではなく、下方からの蹴り。掬い上げるように放たれたことでサキュレント・シャークの頭部が自身の放った攻撃の射線上へ躍り出る。
「ギギャー!!」
自身の一撃を受けたことに驚いたサキュレント・シャークがそれ以上の攻撃を止め、頭部を元の位置へ戻そうとする。しかし、そこには拳を構えた護がいた。渾身の力を込められた一撃がサキュレント・シャークの鼻先を捕える。
「ッグギャャーー!!!」
全身に響く激痛に拘束している植物で自身が傷つくことも構わず暴れる。感情のない瞳に明確な殺意が宿り、護を睨みつける。形のよかった鼻にはひびが走り、全身に大量の擦り傷。
「グギャャーーー!!!!!!」
これまでの怒りを込めた咆哮が響く。それに合わせて周囲の植物が枯れ、代わりに背中の植物が2本、3本とその房を増やす。周囲を死の大地にしながらサキュレント・シャークはその姿を変えていく。体格は一回り大きく、背中には細長く赤い花が何輪も開花する。そのうち一輪が護に向けられる。
(あ、これはやばそう…)
多肉植物はその肉厚の葉に多くの水分を含んでいる。本来は水分の少ない地域で生息するための生態だ。ではこの世界では何に使われるのか。答えは水分と魔力の貯蔵だ。
護は走り出す。向けられた花から放たれた水流は護がいた場所に貫き、背後にあった木の幹に穴をあける。それを皮切りに他の花弁からも一斉に放たれていく。周辺を無差別に破壊するそれは、まるで地上に咲いた花火のようであった。
…
(上、右、スライディングから飛んで…)
数時間にも感じる数分間。目まぐるしく変わる環境を強化された視力と瞬発力で避け続ける。しかし、どんなことにも終わりがある。既に背中の多肉植物の半数は中身のない風船のように垂れ下がってきていた。
(身を捩じって、そのまま転がって、前にはし!?)
護の足が絡まる。見えていた世界が加速する。思考は鈍化し、突然息が切れ、力が向ける。それは敗北の知らせで目標の達成の知らせ。
護の体を水流が捕える。左腕が、右足が貫かれる。そして、最後に頭部に迫る。
パリン
生命の危機にHPが物理的な壁を作って護を守り、残り僅かなHPの諸費し切る。護の全身の力が抜け、立っていることが難しくなる。世界は設定されたルールに従い60秒間の時間を護に与える。それは
フィリアたちの現在の到達率 100%
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肉体の損傷で生命活動に影響がある場合に限りHPによる物理的な壁で防がれます。しかし、この方法が行われた場合HPは通常以上に諸費されます。いわゆるクリティカルヒットです。
なお、HPの壁でガードした場合その場所にそこそこの痛みがあります。これは肉体に損傷を知らせるためです。そして、HPの壁が砕けた場合は超過したダメージに合わせてリスポーンしたときに激痛が発生します。
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