1日目午前(初めての神様)

護が扉を開いて出てきた先は壇上。護の目の前には両開きの扉があり、そこへと至る道が均等に並べられた長椅子によって形作られる。


「あれ?」


扉を閉じようと伸ばした腕が空を切る。不思議に思って振り返れば出てきた扉はすでに消え始めており、背後に置かれている空っぽの台座が透けて見えていた。護はそんな、どこかもの物寂しさを感じるその光景から目をそらし、両扉の前に移動へと移動する。


「これは…不思議な光景だな。」


日差しに照らされ輝く草原。どこまでも続きしそうなその光景は真っ白なベールによって唐突に遮られている。そのベールの追いかけて空を見上げれば青と白のコンストラクトが護を迎えた。


「まずは周辺を一周してみようかな」


護は何もない草原にポツンと建つ教会の周りを確認していく。


「本当に何もないんだな。とりあえず畑を作ってしまうか。」


畑の設置を教会の裏手に決めた護はさっそく、畑の設置の準備を進める。そうは言っても行うのはステータス画面の操作だけだ。


「とりあえず神格の画面を開いて、畑を選択すると!」


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この場所に畑を設置しますか?

Yes / No

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(Yesと)


その瞬間、選択した場所が光輝く。光がなくなると6列の畝が並んでおり、種を植えられる時を待っている。


「地球にいたころの常識では考えられない現象だよな。」


(うまく作れたようね。畑に植える作物は異界の外で収穫できるはずよ。)


脳内にリジアの声が響く。


「了解。って、これ聞こえてるのか?」


(聞こえているわ。わかっていると思うけど外に出ると魔物が襲ってくるから気をつけなさい。あんたレベル1なんだから)


「見つけたら全力で逃げるから任せろ。」


(その宣言はなんかダサいわね…)


くだらない雑談で緊張を解していく。過去に護身術を習っていた護ではあるが、それも高校生まで。そもそも平和な日本に生きていたので、実戦経験などあるはずもない。故にHPがあれば死むことはないとわかっていても試練の世界外の世界に恐怖するのは仕方のないことであった。


異界の出口である、黒い渦の前に立つと震える足に気合を入れて、先へと進んでいくのだった。



木漏れ日がこぼれる森の中。流れる風は心地よく、少し先からは鳥の鳴き声が響いてくる。様々な植物が根付いた大地を護は周りを気にしながら進んでいた。


「あ、これ見たことあるな。」


白く小さな花弁が下向きに並んだ植物には護は意識を向ける。


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スズラン

見た目はきれいだが、有毒。

球根に魔力を多く含み、夜になると毒に変換されて花弁まで運ばれる。

大量の魔力を含んでいると毒とともに魔力も送られるため、淡く輝く。

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護が取得している【鑑定】がその結果を報告してくる。


(俺の知ってるスズランと同じで有毒ではあるけど、魔力がある世界に適合進化しているのか。でも、地球と同じ植物があるのは幸いだ。)


護は知っている植物はないと考えていたため、すべての植物に鑑定を行う覚悟でいた。しかし、地球と同じような植物が存在するならばある程度は視覚での探索が可能となってくる。そう判断した護は地球での感覚を頼りに探索を実施する。


そうして、しばらく夢中になって探索を行っていた護は幸いにも食用植物の発見に至る。

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トマト

真っ赤に実った果実は瑞々しい。

食用可能だが、一部ではその見た目で避けられることもある。

栄養価が高いが、そのままでは痛むのも早い。

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「よし!」


いそいそと収穫を開始した護は次々とトマトをインベントリに格納していく。このインベントリーはこの世界の住民、神が使用できるもので人なら一定量のアイテムを、神なら無制限に格納しておける。


しかし、この時護は完全に油断していた。食用の植物があるとはすなわち、それを食す存在がいるということ。そして、その存在がまさに今、息を殺して近づいていることを。


ガサ!


背後の茂みが揺らし飛び出したそれは、不出来な棍棒を護へと振り降ろす。


(っ!!、油断した! HPは!)


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山上 護

LV 1

HP  21/30

MP  30/30

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ギリギリで頭への攻撃を避けられたのは、【格闘】スキルのおかげか、はたまた偶然か。しかし、その代償として左肩を強打され、しびれるような痛みが護を襲う。


「グギギッ!」


人型のそれは、小柄な体を生かして護を足場にして距離をとる。


緑色の小柄な体は粗末な服で隠され、いびつに膨らんだ鼻が目立つそれはファンタジーの定番となっているモンスターに酷似している。


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ゴブリン Lv1

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護の初めての戦闘が今始まる。


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初更新記念に今回の2話更新させていただきます。

次回以降は毎週月曜日の18時に更新していきたいと思います。


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