1日目(始まりの日)
転生の説明(結論のみ)を受けて、強制的に人間を卒業させられた護はベットの上で目を覚ました。護は身を起こして、周りの状況を確認する。
まず目に入ってきたのは壁一面の本棚。右手側には机と椅子があり、机の上には電気スタンドのようなものに灯りがともっている。設置されたブックスタンドにもいくつかの本がおかれていた。左側には扉が見えている。間違いなく護の記憶にない部屋だ。護は自分の頬をつねってこれが現実なのか確認する。
「そんなことをしなくてもこれは現実よ。」
唐突に女性の声が響く。護は辺りを確認するがの人影は見つからない。
「ちょっと!こっちよ見えないの!!」
キョロキョロと回りを確認していた護の方に、机の上の電気スタンドだと思っていた明かりが飛んでくる。
近くに来たそれは透き通る羽をもった手のひらサイズの人間、いわゆる精霊や妖精として伝わる外見をしていた。
「あなたは?」
「私の名前はリジア、あなたの教育係兼先輩ってところかしら。気軽にお姉ちゃん呼ぶことを認めてあげるわ!」
「あ、結構です」
「まさかの即答!この弟生意気ね!」
(あ、話が通じてないなこれ)
護はこの短時間に襲ってくる理不尽対応にだいぶ慣れてきていた。
「と、先にデミレアから伝言よ。今地球の神に事情を説明しているから少し遅くなるって。まあ、その間に私が説明してあげるはわ。感謝なさい!」
彼女は腰に手を当てながら胸を張る。そうしてこの世界 神と人が共存する世界 テオスについて説明を始める。
「先に言っておくと、このテオスという世界は地球とは大きく異なるわ。まず、中心となる
(俺こんな世界で生きていけるのか?)
護は想像以上に過酷な世界に自身の将来を思う。その顔を見たリジアは護に近づき頭をなでながらやさしく話始める。その手はとても小さかったが、護はどこか安心感を覚えた。
「安心なさい、人が暮らすのはこの世界ではないわ。この世界テオスはそれぞれの神が支配する小さな別世界。通称異界が多数存在しているのよ。この異界には基本的に魔物は存在しないし、その神の匙加減で自由にできるの。あとで説明するけど神にとって自分の異界に暮らす人が増えるのは自身の成長に直結するわ。ゆえに自分を信仰してくれる人向けの施設を建てる神が多いの。その結果、個性的な世界が多いだけどね。だからあなたがどんな世界を作るお姉ちゃんすごく楽しみなの」
「そうだ、ここに来るときに言われたこと。あれどういうこと!?」
護はこの場所に来る前に言われた言葉を思い出し、慌てて確認をする。
「いわれたこと?ああ、そういえば説明何も受けてないんだったわね。といっても私もデミレアから説明役を頼まれただけなのよ。」
「ではここからは私のほうから説明させていただこう」
左側にあったドアからデミレアが入ってくる
「すまなかったね、護君。思った以上に説明に時間がかかってしまったよ。まったく地球神の話は長くて困る。」
「あら来たのね。なら私はあっちで待ってるわ。護、またあとでね♪」
そういってリジアは手を振ってもといた場所に戻っていく。デミレアはどこからか取り出した椅子に腰を下ろして質問を待ってくれている。
「では、なぜ私はあなたの世界に転生する必要があったのでしょうか。」
「当然の疑問だね。ただこれには少々複雑な事情があってね。少し図解させていただきたい」
デミレアは何もない空間に【場所】【タイミング】【君の死亡】の文字が記載される。
「原因は大きく分けて3つある。1つは君が死亡したタイミングに私が居合わせてしまったこと。これについては私も申し訳ないと思っている。」
デミレアは【タイミング】を指さしながらそう謝罪を口にする。
「2つ目は場所。あの場所はもともと大きな桜が咲き誇っていたのだ。私が若いころは神たちの宴会場所としてよく利用していたものだよ。まあ結果、あの場所は
【場所】と記載された下に【神域】と書き足し【タイミング】と【場所】を円で囲み指差す。
「二つの条件が重なった結果、あの瞬間に限りあの場所が私の神域と判定されてしまった。」
先ほど記載した場所に【私の神域=私の世界】と書き足す。
「まあ、この状態で済んだのなら、他人の土地で勝手にピクニックをするようなものだったのだがね。そこに君が落ちてきてしまったのがまずかった。」
悪びれることもなく言いきると、デミレアは【君の死亡】から2本線を引き、【魂】【肉体】と記載する。そして【魂】と【私の神域=私の世界】を円で囲み、そこに【IF あのまま死亡した場合】と記載してこう続ける
「もしあのまま死亡した場合、君の魂は私の神域捧げられあの世界の住人となっていただろう。その場合、簡易的に作られた世界の管理人として君はあの場所に縛られることになっていた。私も、あの場所を不法占拠したとして、いろいろややこしいことになる。」
【IF あのまま死亡した場合】消しながら【肉体】と【魂】を囲み指差す。
「故にまだ、肉体と魂が繋がっている間に君を私の世界に転生させていただいた。まあ、神域に合わせて魂の変質が起きていたことと、僕が一つの世界の主神であったから種族が神になってしまったがね。」
「…要は、偶然に偶然が重なった結果?」
「結論だけを言えばそうなる。重ね重ねになるが同意もなく君を神にしたことは申し訳なかった」
そういって深々とでミレアは頭を下げた。それを見た護は慌ててデミレアに声をかける。
「頭を上げてください!確かにいろいろありすぎて混乱していますが、あの時あなたがいなかったら私は死亡していたんです。助けていただいて感謝こそしますが、恨んだりなんてしていません。」
「そういってくれか。」
「まあ、過去より未来です。ということで根本的なことなんですが神ってなにすればいいんですかね?何しろ今まで神って存在は空想上の存在と思っていたので。」
「それは地球に生きていては仕方ないことだよ。なんせ、あの世界はとうの昔に神と人の世界がわかれているのだからね。神がやることについてあちらの本にまとめてあるからそれを確認するといい。もし、わからないことがあっても彼女が答えてくれるはずだ。」
デミレアは机の方を指差す。護がこちらを見たことを確認したリジアは護の方に手を振る。
「わかりました。とりあえずできる範囲でやってみます。」
こうして、護の神様生活は始まるのだった。
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護の一言メモ
転生した世界は神と人が共存している世界。
神になったのは偶然だった。
多数ある作品から本作をお読みいただきありがとうございます。
設定に関する話が長くなったので、あとがきに内容の簡単なまとめを記載しています。
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