第4話 巫女




 気配がする。

 祖母の生霊が言った。

 毒虫の毒牙にかかって、目覚める為の薬が足りないからと与えられないまま、眠り続ける祖母はそれでも巫女であったおかげか、生霊になって一日に一回話しかけて来る。


 その祖母の生霊が言ったのだ。

 毒虫の気配がする。

 対処方法は以前教えたとおりだ。

 レッドドラゴンフライの位置も目覚めさせる方法も。


 あたしを、まだ眠ったままの人間を目覚めさせておくれ。


 祖母の生霊は願いを口にして、それきり姿を現す事がなかった。




「ちょっとの間、待ってろよ。ばあちゃん」


 秋津は眠り続ける祖母の白髪をそっと撫でると、我が家を後にした。

 毒虫の気配がするという隣国に向かって歩き出したのだ。

 酒を飲みながら。











(2023.10.14)



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