日常 【sunaoのとある一場面】

私は、ごくごく普通の都立の高校2年生。

私の生活は、部活動中心。

中学ではバスケ部に入っていたけど、中々思うように上達せず、身長も伸びなかったことから、悩んだ末、高校では別の部活に入ることにした。

色々考えたけど、バスケで磨かれた瞬発力と持久力には自信があったことから、長距離の選手を目指して陸上部に入ることにした。

努力の甲斐もあって、1年生の終わりには駅伝のメンバーにも入れてもらうことができた。

夏休み中盤の来週には、他校との合同の夏合宿が待っている。

それに伴い、大会前のような緊張感が日々の練習でも感じられている。


「そこっ!タスキの渡し方ダメ!」

「はい、すみません。」

「自分も疲れてるかもしれないけど、相手のことも考えて渡さないと。」

「本番の方が疲れてるんだから、今練習の内に身体に染み込ませとかないと、実際にできないよ!」


「はい、後半1km、100m20秒ペースだよー。周りじゃなくて自分の時計確認しながら、ペースを身体に覚えさせるように。」

「蔭原!遅れてるぞ!ペース維持!」


―ピッ―

「西三塚ぁ!スタート遅れたぞ!お前はスタートが大事なんだから、しっかり集中とけ!」

「粟松は60mから上げるように意識して。今のは早過ぎだぞ。」


強豪校でもない一般の都立高校ということもあり、他の部活動とも共存しながら、グラウンドの端っこで細々と部活動をしている。

グラウンドの7割は、サッカー部とソフトボール部が使用している。

野球部には、専用のグラウンドがある。。。

たまに、雨でもないのに『廊下を使って』ということもある。

プラスの言葉でいうと、柔軟性のある部活である。



そんな中、私も部活に打ち込んでいる。

「南朋―。腹筋一緒にやろぉ。」

「北嶋先輩、宜しくお願いします。」

北嶋先輩は、先輩の中でも一番仲の良い先輩。

というよりも、家も隣で幼馴染のような関係で、周りの目もあるため学校では先輩呼びをしているが、普段は「なお」「みおちゃん」と下の名前で呼び合っている。


「お、いた。時栖、ちょっと良いか。」

「はい、先生。北嶋先輩、失礼します。」

「うん、行ってきな。」


顧問の吉中先生は、部活中は厳しいが、それ以外の時には優しくて、考えもしっかりしている。

同じ女性として憧れる部分が多い。


少し歩き、場所を変えると吉中が口を開く。

「時栖、駅伝の方だが、今度の合宿から1区な。」

「え、私がですか?」

「そうだ。実力的にも問題ないと思うし、来年を見据えての編成だ。」

「いや、ちょっと。。。」

「お前のことだから、周りの目を気にすると思ったから、このぎりぎりのタイミングで伝えた。これは決定だ。上級生にもすでに伝えている。」

「えっ、、、。」


都内で開かれる駅伝は、1区が一番長く、基本的には各校のエースと呼ばれる人物が選ばれることになる風潮である。


「色々思うことはあるだろうが、以上だ。変わらず、練習に臨め。」

「は、はい。」


私は、正直嬉しいと思う気持ち出ないほど、困惑していた。

下を向いたまま、重い足取りで練習に戻る。


「おかえり、南朋。」

「みおちゃ、あ、北嶋先輩。知ってたんですか?」

「ん?あー、そうね。」

「なんで言ってくれなかったんですか?」

「んー。とりあえず今は練習だ。」

北嶋が時栖の頭をポンっと叩く。

と同時に、時栖の耳元に顔を寄せ、「今は部活中だし、他の生徒もみんないるからな。家で話しようね。」とささやく。


「あ、はい。。。」

私は我に返り、練習に集中しようと試みる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

トット oira @oira0718

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る