第48話 アジト
そうだ、このままこの場所をあとにしたら問題が起きるよな。
「ここでの事はホストと半グレの争い! 俺は関係ない。そう言う事で良いよな!?」
バンパイアの魔力をこめてそう叫んだ。
「「「「「「「「「「はい」」」」」」」」」」
これで暗示がかかり『そう思い込んだ』
暗示が溶けない限り安心だ。
さてと……
「ほらとっとと案内しろ!」
「ひぃ……」
今度こそ俺はLOVEを後にした。
◆◆◆
新宿にこんな場所があるのか?
10階建ての汚いビル。
治安が悪いのか、スプレーで落書きがしてある。
「なんだ、このビルは」
「いっておくが廃ビルじゃねーぞ! しっかりと買った俺達のアジトだ! 尤も持ち主の爺に『息子を殺す』って脅して二束三文で購入したもんだけどな」
「本当にきたねーんだな!」
「お前、逃げ出した方が良いんじゃねーの! ここに入ったら確実に死ぬぜ!」
普通の人間ならそうだが、俺は人間じゃない。
だから、残念ながら死なない。
「いや、多分死ぬのは俺じゃない」
流石に小悪党は殺すと良心が少しは痛む。
なかの惨状を見てから決めるかな。
入口の所に見張りの男が2人立っている。
良くいえば警察。
悪くいえばヤクザの事務所みたいな感じだ。
「おい! カチコミだーー早く!」
こいついきなり大きな声で……
すぐに後頭部に手刀をぶち込み気絶させたが、遅かった。
「お前、こんな所でなに……そいつは沢村……貴様洒落にならない事をしてくれたな! こっちに来い」
「なんだ、どうした? 」
「此奴が、伸びている沢村を持っているから、このままアジトにつれて言って話を聞こうと思うんだ」
「おい、お前何したんだ……まぁ良いついて来い」
これは逆について行った方が良いかも知れない。
何もしないで中に入れるなら、それに越した事はない。
「……解ったついていく」
黙って半グレの男について行く事にした。
中には結構な数の仲間がいる。
入った瞬間に目に入った数だけでも8人いた。
しかも、これはこのフロアーだけでの数。
10階建てと考えたら、何人いるか……まぁ問題はないな。
◆◆◆
バンパイアイヤー。
俺はバンパイアの特殊能力である。バンパイアイヤーで聴覚を高めた。
「俺達が貸した300万どうやって返すんだ!」
「私…そんなに借りていません……それにそのお金はLOVEから借りて……」
「そのLOVEのホストから、売掛の金の回収を頼まれたんだよ! どうやって返すんだって聞いているんだ!」
「私が借りたのは50万円」
「馬鹿じゃねーの。残りは利子だ。それでどうやって返すんだ」
「……」
「わからねーか! 体を売ればいんだよ! 売春してDVD数本出ればいいんだ。仕事なら俺が紹介してやるよ」
「いや……いやです」
「嫌ですじゃねーんだよ! 金が返せない以上はそれしかねーんだよ」
ビリビリビリッ
「いやぁぁぁぁーー」
「うるせーな。まずは俺が味見してやる」
「嫌です! やめてくだ……ぐふっ」
ドガッ
「逆らうなら良いぜ! 顔の形が変わるまで殴ってやる。最近はそういう暴力DVDも売れるしな。中にはボロボロになって抵抗できない女相手にSMをしたいという変態もいるから、それでも構わない」
「いやぁぁぁぁーー」
女の悲鳴が聞こえてきた。
「シクシク……助けて……だれか助けて……」
「誰も助けになんかこねーよ。馬鹿じゃねーの! 警察に駆け込むからこうなるんだ」
「此処までブサイクになった女抱きたい奴いる?」
「俺パス……元はそこそこだったけど、こんな顔が腫れた女じゃ勃たねー」
「俺も無理だな」
「それじゃ、此奴は要らないって事で殺しちゃおうか?」
「いや、いや……殺さないで……お願い、殺さないで」
「殺さないで? お前等どうする?」
「そうだな、そのまま裸踊りでもして見せろよ……面白かったら命は助けてやる」
「わかりました……」
聞けば聞くほどクズだな。
「クスリ……クスリを頂戴……なんでも、なんでもするから」
「おまえ、なんでもするって言うけど? 金を稼いでこないじゃん? 薬は10万。それ以下じゃ売れないの」
「ハァハァ、最初はただでくれたじゃない……なんで?」
「あれはサービスだ」
「私を抱いてもよいし、したい事なんでもするから」
「バーカ。そんな1000人からの男に抱かれた女。幾ら15歳でも価値なんてねーよ!ホ別1.5万円でも売れない女なんて誰が買うかっていうの」
「ハァハァ……そんな」
このビルの中に結構な数の女もいそうだ。
しかも、声の感じからしたら相当若い。
恐らく彼女達が『コマ横キッズ』に違いない気がする。
◆◆◆
気がつくと、エレベーターに乗せられ10階まできていた。
「さぁ入れ」
ここに誰がいるんだ。
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