第47話 相手にならない


なかなか速い。


喧嘩慣れしているのか、四人一緒に殴ってくる。


連携がとれているから、案外プロの格闘家でも苦戦するかも知れない。


だけど、残念。


目の前にいるのは正真正銘の化け物。


そんなのは通じないんだよね。


ああは言った物の本当に殺す気はない。


これから、尋問をして色々吐かせないといけないし、そう簡単に人を殺していたら、そのうち足がつくかも知れない。


仕方ないな。


俺はパンチを躱しながらデコピンを繰り出した。


「ぎゃぁぁぁぁーーっ痛い! 痛てぇぇぇぇぇーー」


まぁ、痛いよ。


今のデコピンで恐らく頭蓋骨に皹位は入っているだろうからね。


「なんだこいつ、変な技を使っているぞ! 拳法か?」


そんな物じゃあえりません。


ただのデコピン。


だが、これは都合が良いかも知れない。


三人はジリジリと間合いを詰めてくる。


「俺は、指先一つで人など殺せる」


こう言って置けば、多分拳法かなにかと勘違いするだろう。


「こっちは三人いるんだ!」


「多少は強いのかも知れないが、これに敵うかな」


「そうだな……おい『LOVE』のホスト! お前等も加勢しろ! さもないと後で只じゃおかねーぞ!」


三人がナイフを持ち出し、さっきまで正座していたホスト達も立ち上がり、三人の後ろに立った。


ホスト20人に半グレ5人。


そのうちホスト2人と半グレ2人はスクラップ。


片腕にした奴は死にかけている。


敵は約21人。


少し、厄介だな。


「それじゃ、この場にいる全員が敵。そう言う事でいいんだな?」


一応、確認をしてみた。


もし、この中に戦いたくない。


そう言う奴がいたら可哀そうだよな……


「ふははははっ、この人数に勝てると思うか?」


「馬鹿じゃないの? 21人相手に勝てるわけないだろう」


「ただの21人じゃない! 武装した21人だからな」


そう言うとホスト達はボトルを割って此方へ向けてきた。


高いボトルもあるのに……勿体ない。


「そうか……それじゃ仕方が無いな。手加減はしてあげるよ! だけど、それでも死んだら……ごめん諦めて!」


とはいえ、余り手加減も出来ない。


確かに俺はバンパイアとサキュバスの化け物。


強靭な体と再生力はあるけど、痛い事は痛い。


「死ねーーっ」


「殺してやる」


そうかよ。


ならこうだ。


割ったボトルを持った奴が俺に向かってきた。


そのまま避けて軽く顔面にパンチを入れる。


殺さないように気をつけて……だが、それでも……


ミシッと音を立てて回転して床にぶつかった。


「ぎゃぁぁぁぁーーっ」


痛さで転げまわる男をよそに……


「とっとと掛かって来いよ! 時間の無駄だ!」


半グレの奴は椅子に座ってニヤつきながらこちらを見ている。


こいつら、仲間意識がないのか……


「救急車を呼んでくれ……」


さっき腕を千切った奴が虫の息で仲間に言っているが、誰も助ける気が無いようだ。


こりゃ、死ぬな。


三人、四人と攻撃を躱し片端から軽くパンチをぶち込む。


軽く殴るように気をつけていたのに……


全員が、何処かしら骨折して転げまわっている。


「助けて…たすけ…」


「嫌だーーいやだ死にたくねー」


「ハァハァ、あぐあっ、あうあああーーっ」


顎が割れた奴が一番多い。


わざと一人のドラゴンの牙の構成員だけ怪我させないで終わらした。


「ドラゴンの牙のたむろっている場所に案内してくれ!」


「ひぃ……」


俺は、ドラゴンの牙の構成員を小突きながらLOVEを後にした。




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