第46話 1人2億円

素早く入り口側にまわり、残りの奴らもぶん殴った。


顔を怪我させないように体を重点的に殴る。


昔のドラマの『ボディにしなボディに』ののりだ。


勿論、思いっきり手加減してだ。


そうしないと一発で死んでしまう。


「ううっ、まさか、そんな……」


「可哀そうだから手加減してあげたよ! 本当は肉片にしてあげても良かったんだけど……」


俺が周りを見ながら、怒気を孕んだ目で睨む。


その瞬間、その場にいた18人のホストは体を震わせながら、崩れるように跪いた。


「たたたた、助けて……嫌だ殺さないで……いやだぁぁぁーー」


「うわぁぁぁぁーー殺される」


二人だけが走って逃げようとこちらに来た。


「死にたいのか? 此処迄はサービスだ!」


そう言いながら、ナイフを水平に引いた。


二人同時にシャツが裂け、その下の皮膚も切裂く。


「「ああっ、あああーーっ」」


「あと数ミリ深く切ったら、内臓をぶちまけていたかもな?」


「「ひっひぃぃぃぃーー」」


「次は殺すから、いいから座れ!」


俺は土下座をしろと強要してなかったのだが全員が土下座した。


この位で丁度良い。


力関係を教えておかないといつ牙を剥いてくるかわからない。


「単刀直入に聞く! この中に未成年に売春をさせて貢がせたり、ドラッグに関わっている様な奴はいるか?」


「「「「「「「「「「……」」」」」」」」」」


だんまりか?


「今、話せば何もしないが、あとでわかったら殺すよ!」


無言で圧力をかけ話す。


「あの……今話せば、本当になにかしたりしませんか?」


ギルティ。


こいつが絡んでいる事はわかった。


半分土下座していたから、ナイフを右の手に突き刺した。


「ぎゃぁぁぁぁぁーーっ」


「俺は、命の保証をしてやる。そう言っただけだ! そのまま、話せ。話さないと殺す! 話せば命は保証してやる!」


「ハァハァ……うっ痛い。確かに俺達はその件に絡んでいる! だが、俺達の裏には竜星会がいる……今のうちに」


なんだ、ヤクザが絡んでいるのか?


いや、嘘だな。


こいつの汗や目、その他のしぐさが嘘だと言っている。


「お前嘘をついたな!」


俺は刺していたナイフをそのまま倒した付け根ごと薬指と小指が切断される。


「うっぎゃぁぁぁぁぁーーっ! 俺の、俺の手がぁぁぁぁーー」


「嘘をつくからこうなる! 流星会は麻薬はご法度の組だった筈だ。それに昔気質の組長だから、未成年の売春に絡む事はない! ちがうか?」


「ちが……」


「もういいや、とりあえず、嘘をついたんだから……殺すか……」


「いや、殺さないで……殺さないで……」


凄いな。


バンパイアの力のせいか、周りの人間は誰も助けようと動かない。


幾ら強くても普通に考えたら、全員で襲い掛かれば『勝てる』そう考える筈だが……ただただ体を震わせてこちらを見ている。


「だったら……話せ!」


周りから誰も助けが入らないと解ると、ポツリポツリとそのホストは話し始めた。


「実は……」


『LOVE』は老舗のホスト店で昔はヤクザ相手にも一歩も引かない男堅気のホストが集まるホストクラブだったが。


時代と共に腐っていった。


ここの地域を取り仕切っていたヤクザ、流星会は昔気質な極道だったが、時代と共に衰退していき暴対法ができてからからはその存在はほぼ名前だけになった。


そして、それに反して力をつけたのが半グレ集団、ドラゴンの牙。


そういう事だった。


そのドラゴンの牙が今回の件に絡んでいる。


そして、ここのホストは……


「それじゃ、お前等を含む、ここのホスト全員が、絡んでいるのか? 支配人の優斗は……」


「ああっ責任者だから一枚嚙んでいる。っていうか、ドラゴンの牙とのパイプ役が優斗さんだ」


という事は全員が絡んでいる。


そういう事か?


「話は解った。取り敢えず、今日の所は黙って……」


ドガッ、バタン!


勢いよくドアが開いた。


「理人って奴はどいつだ!」


「あいひゆでふ」


勇樹と将人、そしてその後ろにタンクトップを着た、竜の刺青を入れた厳つい男が5人立っている。


多分、此奴らが、話に出ていた。ドラゴンの牙か。


「なんかようか!」


「お前、洒落にならない事をしてくれたな? 此奴らもうホストが出来ないじゃないか? 慰謝料と俺らに迷惑料を払ってくれないか?」


「それで幾ら欲しいんだ!」


「1人一千万で2人で二千万、払って貰うぞ」


随分安いな。


「いや、1人2億で7人だから14億払ってやるよ! 但し、本当に売ってくれるならな!」


「14億、訳がわからないが、そんなに金を払いたいなら……えっ」


俺は厳つい男の一人に近づき腕を掴み引き千切った。


「ぎゃぁぁぁぁぁーーっ! 俺の腕がぁぁぁぁーー」


「人一人の命は2億円位らしいからな7人の命で14億! どうした? 売ってくれるんだろう? 大丈夫、お前等全員殺したあと14億をドラゴンの牙に届けてやるよ!」


「「「「殺してやるからな」」」」


無事な4人が一斉に飛び掛かってきた。

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