第44話 LOVEに纏わる闇

空気が悪いな。


2人も横取りをしたものだから、店の空気が悪い。


此方を警戒しながら接客をしている。


まだ、お目当てのものを目にしていない。


このお店『LOVE』の俺が来た理由はオーナーの孝蔵に頼まれたからだ。


この店のホストが『麻薬、未成年売春に関わっている疑いがあるから、どうにかして欲しい』そう孝蔵から頼まれたからだ。


時は少し遡る。


「ハァハァ…もう駄目」


俺が正にホテルで9人目の女を夢の世界に導き、気絶させた時だった。


ドアの外から男の気配がしてきた。


敵意は無いらしいが、ドアの外からこちらの様子をうかがっている様だった。


恐らく、こちらが終わるのを待っている。


そんな感じがした。


それなら、行為を止める事はない。


今日の最後の相手十人目の女の相手をしてからで良いだろう。


「それじゃ、さっさと始めるか?」


「お願い致します……ハァハァ、抱いて貰うのが待ち同しくて……体が火照っていて大変だったんです」


「すぐに楽にしてあげるから」


これで、今日のノルマは終わりだ。


気絶した十人の裸の女を眺めながら、一人シャワー室に行きシャワーを浴びた。


◆◆◆


ドアの外では初老のスーツ姿の小柄な男が待っていた。


「異世界帰りは腕力が強いだけじゃなく、女にも強いのですか? いや羨ましい限りですな」


「そんな、良いもんじゃない。強い腕力の弊害で性的な高ぶりが来る。それだけだよ。話があるならラウンジで聞こうか?」


「察しが良くて助かります」


そのまま一緒にラウンジに降りた。


「それで、俺に何かよう? 特に借りはないよな?」


出張ホストとして雇ってもらっているが、ちゃんとマネージメント料はとられている。


それに俺が抱いている女はどうやら、それなりに権力を持っている女が多く、最近になり、南条財閥の接待を兼ねているのがわかった。


あのワニとの戦いの観覧から出来た。ファンみたいなものだ。


今現在、俺のファンとも言える、女性から指名を受けて抱く事で『食事』を賄っている。


最初は個別で指名を受けていたのだが、重なる事があり、色々あって今は纏めて相手する事になった。


十名位を相手にすると流石に鎮まるから都合が良い。


インキュバスとバンパイアの能力を使い。


魅了と催淫を使えば、桃色空間の出来上がり。


後はひたすらヤルだけだ。


「確かにそうですが、以前孝蔵様と話をされた時に『南条系のホストクラブに自由に出入りしたい』そういうお話があったと思いますが」


「あっ、それならもういいや」


今現在、血も精も充分。


この生活で満足している。


「それなのですが、実は孝蔵様からのお願いがあるのです」


「お願い? 俺にか? 天下の南条孝蔵が俺に頼みたい事なんてあるのかな?」


「ええっ、まぁ、実は昔からある老舗のホストクラブ『LOVE』というお店を南条で手に入れたのですが、色々問題がありまして」


「問題?」


どんな問題でも南条なら簡単だろう。


そこでなぜ俺なんだ?


「はい、コマ横キッズというのはご存じですか?」


良くは分からないがコマ横の建物の近くにたむろしている未成年で、売春をしてホストに貢いだり、暴力事件を起こしたり、麻薬絡の問題とかネットニュースでなら見た事がある。


「ネットで見た事がある程度なら」


「そうでしょう。それで問題なのが『LOVE』という買収したホストクラブのホストの多くがコマ横キッズに関りがあるようなのです」


「どういう事だ?」


「売春させて貢がせたり、麻薬を使い離れていかないようにしたりなどです。暴力的な事にも多数関わっています」


「そう言えば15歳の少女が薬物絡みで死んだ話を聞いたような気がする」


「恐らく、それにも絡んでいる可能性があります」


だったらなぜ動かない。


「南条なら幾らでも解決できるだろう。裏でも表でも」


「確かに、ですが『LOVE』は老舗なのでなにかと話題になりやすくマスコミ沙汰になりやすいのです」


「その位どうにでもなるんじゃないのか?」


「そうですね。ただ『面倒くさい』のだそうです。それに理人様は活動拠点が必要なのでしょう? もし、この問題を解決したらそのまま『LOVE』を理人様に与えても良いという事です……どうです? やってみませんか?」


「俺は未成年だけど、店が持てるのか?」


開業資金は山ほどあるが、そこが問題で開業してない。


「どうにかします」


「もし、問題が起きたら?」


「火消し位はしますが、理人様ならどうにか出来るでしょう」


「店を滅茶苦茶にするかも知れないぞ」


「元から、南条が動けばそうなるのですから、構わないと思います」


「わかった……ただ、俺も悪人かも知れないぞ」


「それは、まぁ……信頼しています」


「わかった。どうなるか解らないけど行くだけ行ってやるよ」


こうして俺は『LOVE』に入店する事になった。





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