第33話 若き後継者と高校


「亀岡流は本当だった!」


この会場に居る、全ての人間がそれを実感した。


拳1つで獣を叩き殺す、その拳法。


拳法は完成したが、完成が遅すぎた。


だから獣に勝てる技でありながら勝てなかった亀岡仙人。


技は成したが、体が若さが無かったから…通用しなかった。


最後は意地で戦った海のなか…そして死んだ。


だが、今ここに『若き亀岡流の使い手』が現れた。


白熊でも敵わない巨大なワニをその技で倒したのだ…


『亀岡流は獣に勝てる』


それを見ていた者に証明した。


都市伝説でも嘘でも無かった。


この日一部の者にのみ、それは伝わる事となる。


◆◆◆


「南条さん、彼は何者なんだい?」


「もし、スカウトして良いなら、私のSPに欲しいのだが、内閣総理大臣の…」


「いいや、あれなら」


「黙らんか?! 此処での事は外には持ち出さない、それがルールじゃ! それを守れないなら、南条が付き合う事は無い」


「「はっ、すいません」」


「解れば良い」


しかし、凄まじい物だ。


あのワニを倒すのかよ…


しかも、何とも言えない、人を引き付ける魅力がある。


案外、異世界では勇者だったのかも知れぬな。


儂の怖さを知っている者が一瞬、儂を忘れ話おった。


それより重症なのが…


「あの、あの少年とお見合いをお願いできませんか?」


「欲しいわ…あの子、愛人になってくれるなら月3億出しても良いわ」


女たちだ…


これでも全員、令嬢と言って可笑しくない存在だ。


それが、まるで俗物の女に成り下がった様に可笑しな目で見つめておる。


一体どうしたものか…


「今夜は解散じゃ!理人についての話は必ず儂を通せ」


南条としても何かしらの対応は必要だ。



◆◆◆


流石は南条、次の日にはしっかりと200億が振り込まれていた。


今迄苦労させた分、親孝行もしたい。


両親には、自分で事業を起こして成功したと伝え、仕送りでもしようか?


前から欲しがっていた家を買ってあげても良いかも知れない。


ただ、何にしてもバレない様にしないと不味い。


どうせ、また南条が絡んでくるだろう。


その時に相談すれば良い。


◆◆◆


「いってらっしゃ~い、う~んチュッ」


「行ってきます」


此処暫く、サボり勝ちだった高校に久々に通った。


「おはよう…」


一応は顔見知りに挨拶をしたんだが…


「おっおはよう…ゴメン」


どうしたんだ?


前みたいな陰口は聞こえてこないが、その分、なんだか訝しげな顔でこちらを見ている。


一番近い感じは、猛獣でも見ている顔だ。


「あいつの悪口絶対に言うなよ…賢吾みたいになりたく無ければな」


「賢吾くん、もう二度とボクシング出来ないんでしょう…酷いわ」


「ボクシング処か後遺症が…日常生活すら難しいみたいだぞ」


「俺、お見舞いに行ったんだけど…見てられなかったよ」


そういう事か。


他の事は兎も角、賢吾を倒した事は学校中に知れ渡っていたようだ。


流石に、後の二人の事は知られていない。


だが『ボクシング部部長』をぶっ壊した。


それだけでも高校だったら話題になるな…


絡んで来なくなったのは良いが、これはこれで面白くないな。



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