第32話 本当の所は知らない

バンパイアであり、インキュバスの俺は、羽を出さなくても短時間なら、空を飛べる。


だが、流石に、飛んだら不味いから…空を歩いたように見せた。


「「「「「空を歩いた…のか?」」」」」


「亀岡流、中級技術空歩…騒ぐほどの事じゃ無い、足を素早く動かし空に浮かんだだけだ」


「ゴオオオオーーーッ」


最早、これはワニじゃ無く化け物だ。


10メートルのワニ。


こんな奴に遭遇したらカバやサイ、ゾウでも危ないだろう。


南条財閥は『残酷ショー』が見たいのか…


「残酷ショーの始まりだーーっ」


「食え、くーーえーー!」


確かにこの大きさのワニを相手にしたら普通は死ぬよな…


此処に居る奴らは、俺が殺されるのを見に来た奴らか…


残念ながら…俺は此奴より強い。


巨大なワニが俺に襲い掛かってきた。


本来なら詰みだが、俺は違う。


俺は、人では無いのだから…


まるで戦車の様にこちらに走って来る。


「亀岡流、瞬歩」


ただ、言っているだけだ。


元から俺の体は素早く動ける。


「ワニの突進から逃れたぞ…」


「あれが亀岡仙人の技を受け継ぐ者か…あの素早さなら熊位なら倒せそうだ」


「ああっ、だが、あの化け物には通じない…死ぬだけだ」


「普通のワニなら通じたのかも知れないが…あれは無理だ」


普通ならそう思うだろうが…


ワニの弱点は目と目の間の額…そこに小さな脳味噌がある。


そこをぶち抜けば死ぬ。


だが、此処迄大きなワニが口を開きながら威嚇してくる。


おいそれとは狙えない。


仕方が無い…


「虎穴に入らずんば虎子を得ず…」


俺は走っていきワニの口に飛び込んだ。


普通ならこれで終わりだ。


「あっけなかったな…ワニに食われて終わりか」


「もう少しはやると思っていたんだ見込み違いか」


普通の生物ならこのまま消化されて終わる。


だが、俺はインキュバスでもある。


俺には普段隠れている鋭い爪がある。


口の中から頭部を破壊すれば良い。


ザクザクと爪で口のなかを切裂きながら脳味噌まで切裂いた。


「亀岡流、村正斬―――っ」


そう叫びながら、もう既に死に絶えたワニの口のなかから這い出した。


「人が…人が勝った…」


「誰か人間側が勝つに賭けた奴いるか…」


「居ないだろう…普通」


「亀岡流…亀岡仙人の伝説は本物だったのか…」


「我が亀岡流は無敵なり! 人類最強等ではない、まして地上最強等ではない…地球最強…それを目指したのが亀岡流だ…」


本当の事は知らんけど…


全部、亀岡流に被せれば…多分誤魔化せるだろう。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る