第8話 【過去】暗闇の地獄



スキルが使えないしステータスも見れない。


多分、俺が奪ったスキルの中に生命力をあげたり、死ににくくする物があったのかも知れない。


あれだけのバンパイアに血を吸われサキュバスに精を吸われたのに、俺は生きている。


どうやら、俺は簡単には死ねない体になったようだ。


「ごめんね、夢魔として快楽の中死なせてあげようと思ったんだけど…無理みたいね」


「…」


バンパイアに血を吸われるのもサキュバスに精を吸われるのも痛みはない。


だが、途轍もなく気分が悪くなる。


重度の車酔いの状態みたいな感じだ。


『死ねれば良かった』


俺は死ねなかった為にエサになってしまった。


逃げないように手足を切り落とされ、吊るされた状態になっている。


そして、お腹が空いたバンパイアやサキュバスが食いつき吸う。


まるで動物園の鳥のエサみたいだ。


しかも、俺の血が余程美味しいのか、俺は延命処置されているようだ。


元々死ににくい体だが、ようやくこと切れるんじゃないか…そう言う状態になると、回復系の魔法みたいな物を掛けてくる。


そして「折角の血が薄くなった気がする」だれかが言うと口に気持ち悪い内臓の様な物を無理やり詰め込まれ食べさせられる。


北京ダックを思い出した。


今の俺は家畜みたいな物だ。


体中はバンパイアに噛まれて穴だらけ。


頭の中はサキュバスのせいで興奮状態で狂っている気がする。


身も心も完全に壊れている。


俺の頭のなかには同級生への恨みしかない。


『魔王に負けて死んじまえ』呪う事しか出来ない。


幾ら美人でも噛みつかれて口から血を流すのは頂けない。


今の俺は美女の顔はただただ恐怖でしかない。


暗闇の中、頭の中は同級生への恨み、バンパイア、サキュバスへの恐怖、そして性欲この3つしかない。


此処は真っ暗なので時間の感覚が無い。


今はあれからどの位経ったのだろうか?


1週間? 1か月? 3か月…全く解らない。


何も出来ずにただエサとして吊るされているだけ…


もう、何も解らない。


恐怖は随分薄れた気がする。


その代わり、美人、美少女、美幼女…そういう思いが全く無くなった。


きっと俺はもし助かっても、恋愛は出来ない。


そんな感じがする。


だって女を綺麗だと思う感情が無くなってしまったから。


その前に、俺はきっと助からない。


未来永劫長い時間、死ぬ事も出来ず、此処でエサとして生かされ続ける。


それだけだ。


誰か助けて…そう願うが無理だろう…


俺を此処に追いやったのは同級生『勇者』たちだ。


そして、それを許可したのは王たちだ。


俺を助ける能力や権力を持った者が俺をこんな風にした黒幕。


俺はきっと助からない。


未来永劫、暗闇の地獄で暮すしかない…

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る