第4話 夢

黒岩の車に乗せてもらう。

なかなかの高級車だ。


「いい車だな」

「まあな。俺のじゃないが」

「じゃあ、誰の?」

「親父のだ」


黒岩の親父さんは、地元でも有名なカーマニアだった。


「親父さん、元気なの?」

「ああ・・・何とか生きているよ」

「何とか?」

「今は身体を壊して、自宅療養中なんだ」


淡々と語る黒岩。


「こんなど田舎じゃ、自動車がないと生活できないんだよ」

「それは、俺もある程度はわかるが・・・」


黒岩の横顔は、どこか寂し気だった。


「そういや黒岩は、野球選手になりたかったな」

「よく覚えているな」

「まあな」


あれだけ、騒いでいたからな。


「全くだめだったよ。」

「そうか・・・」


詳しくは訊かないのが吉だろう。


「加藤のところに行くんだろう?」

「ああ。よく知ってるな」

「頼まれたからな。彼女に」


タイミングが良すぎると思った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る