第3怪「追う者と追われる者」※動物の残酷表現があります。

るなは、街灯がいとうが並ぶ住宅街を駆けて行く。

そのうち、ものもけがペタペタとはだしで、後ろから追いかけて来た。


『待てえ~!なぜ、逃げる。そのスマホをよこせ~』



るなは、追いつかれないように必死に逃げる。

彼女は、人通りの多い。商店街へ逃げようとして、身体の向きを変えた。

その時、ものもけが、物騒なことを口走った。

『人通りの多い場所に逃げやがったら、片っ端から、人間どもを喰ってやるぞお!』


るなに戦慄せんりつが走った。彼女は、涙を呑んで商店街の方へは行かず、そのまま、路地に入った。

必要以上に、るなを追いかけるものもけ。途中の電信柱の下、夜中だと言うのにごみ袋が出してあった。


袋を二匹の野良猫のらねこがあさっている。

るなが走って、通り過ぎようとすると、後ろからものもけの声がまた、聞こえた。


『うまそうな。猫だな~』

その声を聞いて、るなは猫を助けようとした。


しかし、ものもけさんの白い手が長く伸びてきて、一匹捕らえられる。

「シャーッ!」

激しく抵抗して、威嚇いかくの声をあげる猫。


「ああっ、猫が!」

ものもけは、猫を口の中に放り込むと口を閉めた。


ゴリ、ゴリバキン!モグモグ……。


骨を砕く音がして、猫は、あっという間に喰われてしまった。

ものもけは、口の周りに付いた血をベロリと舐めとると、にたりと笑う。


『けあ~!めんこい猫、うまかったあ!どれ、もう一匹』

腕をもう一度、伸ばそうとする。

るなは、とっさに生き残った猫を抱き上げ、全速力で走りだした。


『おらのメシ、返せえ~!』

ものもけも、るなに追いつく勢いで、駆けて来た。



◆ ◆ ◆


るなは、途中で現在は、誰も住んでいない。空き家を見つけ、門扉もんぴを登って忍び込んだ。

家の庭は、雑草が腰の高さまで生い茂っていて、身を隠すのには適していると思う。


彼女は、ドアを見た。だが、案の定、ドアには鍵が掛かっていて、チェーンが掛けられていた。

しかしここなら、少しは時間が稼げるだろう。


るなは、裏庭にまわり、しばらく疲れた身体を休ませることにした。

昼間とは違い、静まり返った住宅街。虫の鳴き声だけが響いている。

こんな場所で、信じられない恐怖を味わっているとは、誰も思わないだろう。


怪異かいい相手では、警察も動かないだろうし、このまま、逃げ続ければ疲れ果ててそのうち、遅かれ早かれ、捕まるかもしれない。

それを思うと、絶望感がるなを襲って来た。


「死にたいと思っていたけど。あんなのに食われるのは嫌。お母さん助けて……」

彼女は、うなだれた。


「にゃ~ん」

その時、腕に抱いている。


猫が鳴いて、彼女の手をペロペロと舐めた。

るなは、込み上げてきて、泣きながら猫を抱いた。


「そうだ。私だけじゃなかったね。きみもいたんだった。この子を守らなきゃ!」


彼女は、顔を上げこわばらせて、逃げ方を思案しあんした。

その時、草むらが、がささと音を立てて揺れた。

驚き、音がした方向を見ると、何と、ものもけがにたにたと笑いながら、立っていた。



『み~つけた』


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


ものもけさんに見つかってしまった、るな。

るなの運命は…?

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