第四話 LINA

「なんか量多くないですか?私食べられないかもしれません…。」

「そう?私もう食べ終わるけど。」

彼女は私の器を覗き込んで感心した様子で、こう言った。

「凛さんって結構大食いなんですね…。」

「まあね。でも私も前は完食出来なかったよ。」


実を言うと、このラーメン屋は初心者向けではないのだ。それもそのはず。このラーメン屋の最大の特徴はこの量なのだ。


「食べないなら私が食べても良い?」

「いいんですか?」

彼女はいかにも「救世主!」とでも言いそうな顔でそう言った。

「うん。まだ全然食べれるから。」



「ご馳走様でしたー。」


無事完食し、私たちは店の外に出た。


「鮎河さんはこの後どうする?」

「あ、ちょっと待ってください。」「ん?どうかした?」

私は彼女のその声で立ち止まって後ろを振り向いた。

「その『鮎河さん』って呼ぶのむず痒いんで下の名前で読んでください!」


「分かったよ。架澄ちゃん。」

「えへへ。ありがとうございます!凛さん!」

彼女はまたあの笑顔でそう言った。


「それで架澄ちゃんはこの後どうする?私は仕事ないし帰るけど。」

「私は次の収録があるので直で向かいますね。」

「そう。じゃあ午後も頑張ってね。」

「はい!あ、あと!」


もうひとつ何か言いたい事を思い出したのか彼女は私を止めた。


「LINA交換しましょうよ!」


なんだ。そんな事かと思い、QR画面を出す。


「いいよ。はい。」

「ありがとうございます!」

彼女は嬉しそうにそう言い、またあの屈託のない笑みを見せた。

「じゃあまたね。」

「はい!また!」


別れた後に振り返って見えた彼女の背中はどこか大きく見えた。

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