十四話・メッセージ。
とりあえず、天霧さんの名前や七海のことは伏せて一連の騒動と今日の昼休みのことを沢村さんに話した。
「なるほど。ってそれ事件だよ花山くん!!だって脅しだよ?えっと、警察に...」
「ちょっ、ちょっと待って沢村さん!!まだそこまですることじゃないと思うよ?!」
「あっ、そ、そう?ごめん私、花山くんのことが心配で慌てちゃって...」
ま、まぁそうだよな。名前に加えて振り回されてる相手が女子ってことも教えてないし。
俺の説明が下手なのもあってきっと沢村さんの頭の中では「花山くんが黒ずくめの組織に!」みたいな想像が巻き起こってたんだろう。
「でもさ、その人は花山くんにどうしてそこまでするんだろうね?」
落ち着いた沢村さんは不思議そうな顔で言った。
どうしてもなにも、天霧さんは日頃のストレスの解消って言ってたよな確か。
「な、なんか、八つ当たりみたいなものだってその相手は言ってたかな確か...」
「えぇーひどーい!てっきり恨みとかがあるのかと思ったけど、そんな単純な...」
「へへっ、だよね。でも恨みとかだったらもっと大変なことになってだかもしれないからまだいい方なのかも」
まぁ、天霧さんと俺はそもそも最初は接点もなにもなかったわけだし。あぁ言う形で知り合いたくはなかったけども...
「そっかぁ。花山くんも大変なんだね色々。私も悩みとかはないけど落ち込む時とか多いから気持ちわかるなぁ〜」
「えっ、沢村さんも落ち込む時とかあるの?」
「あるよー!もう毎日だよ毎日!」
そ、そうなのか。俺みたいな陰キャからしたら沢村さんみたいな一軍女子は雲の上の存在だからそんなことないと思ってた。
沢村さんは少し息を吐いて続ける。
「まぁでも、警察に言わないにしてもそれは心配だから、何かあったらまたいつでも相談して?」
「え、ほ、本当?」
「うん!もちろんだよ!」
や、やっぱ天使だよ本当に!ラブコメの神様ありがとうございますっ!!
と、心の中で感謝していると、沢村さんはおもむろにスマホを取り出した。
「あ、あのさ。花山くんリムやってる?」
スマホを待った沢村さんは恥ずかし気に言う。
ちなみに「リム」とら大人から子供まで幅広く利用されているメッセージアプリのことだ。
「や、やってるけど、どうかした?」
「えっと、と、図書委員でも一緒だし交換しとけば相談とか色々聞けるかなって...」
「えぇっ、こ、交換って俺と沢村さんが?!」
「う、うん、ダメかな...?」
いやいや、ダメなわけない!!一緒のクラスの女の子と連絡先交換とかしたことないもん!
「だ、ダメじゃないよ。沢村さんがよければもちろん交換しよう」
「本当!!やったぁー!!」
平然を装った俺の返事に沢村さんは喜んではしゃいでくれた。そして、交換用の二次元バーコードの読み取り画面をだす。
「じゃ、じゃあ読み取るね」
「うん!ありがとー!花山くんっ!!」
こ、これはラブコメって言っていいんじゃないか?!いや、確実にラブコメ展開だ!!
通知音が鳴り、俺の連絡先は一人増えた。
あ、アイコンかわいい。女子って感じだ。
「あ、あの、本当にありがとう沢村さん」
感動のあまりに、俺の口から自然と感謝の言葉が出る。
「ううん。私ができることはこのくらいだし、相談聞いといて解決できてなくてごめんね?」
「い、いやいや!沢村さんが聞いてくれたから凄いスッキリしたし!も、もう大丈夫!!」
「ほ、本当?そ、それなら嬉しい」
俺は少し恥ずかしくなって目を逸らす。顔が熱くて多分赤くなってるな、俺。心臓がおかしいくらいドキドキしてるしま、マジやばい。
「え、えっと、じゃあ私はそろそろ帰るね!この後塾があって。」
「あ、ええっと、うん!そ、そうなんだ!!」
沢村さんの言葉に俺は全く何も思ってないフリをして返す。
だよなあ、こんな幸せな時間ずっとは続かないよなあ。
「あ、あの花山くん。塾が終わったら連絡してもいいかな。」
「え、あの、う、うん!!もちろんだよ!」
「そ、そっか!嬉しい!それじゃあまた明日ね!花山くんっ!!」
言いながら沢村さんは手を振って教室から出て行く。うわぁ、最後まで可愛いかったなあ本当に。
沢村さんのことが好きなのかと聞かれれば、それはまだ何とも言えない。けれど、俺の中で沢村さんは本当にいい子だ。
******
その日の夜。俺は何をするわけでもなく、ベッドに寝そべっていた。もちろん沢村さんのことを考えながら。
いやぁ、ほんと可愛かったなあ沢村さん。なんて言うか仕草も可愛いんだけど、顔とか髪型とかほんっと可愛いくて、何よりあのいい匂い...
と、よからぬ事を考えそうになったところで、不意にスマホの通知が鳴った。
「な、なんだ?」
一人で呟きながらスマホを手に取ると「リム」からの通知が一件来ていた。
も、もしかして、沢村さん?!!そう言えば塾が終わった後連絡するって!!
俺は期待を抱きながらそのメッセージを開く。しかし、それは沢村さんからの通知ではなかった。
「ん、誰だ、これ。」
見たこともないアイコン、そしてアカウント名を見た俺は目を疑った。だってそこには......
———天霧茜。
と、はっきり映っていたから。
う、嘘だろ。ど、どうして天霧さんが...
「こんばんは。花山くんっ」
焦る俺をよそに天霧さんから来たメッセージはそんな悠長なものだった。
ど、どうしてだ、何で天霧さんが...
そんな事を考えている間にメッセージがさらに一件来た。天霧さんではなく、それは沢村さんからのものだった。
「ねぇ、花山くん。急で申し訳ないんだけど天霧さんの連絡先欲しいって言ってたの?」
な、何の話だ。や、やっと沢村さんから連絡来たと思ったのに、こ、これってどう言うことだよぉおおお!!!
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