八話・委員会決め。

数日後。ある日の4時間目のこと。

今日はこの時間を使って委員会決めなどをするらしい。

新しいクラスになってからそれらしい事もしていなかったのでやっとって感じだ。


けれど俺は、そんなことよりもある疑問に直面していた。

いやね、青春ラブコメを実現するって言うのはいいけども、青春ラブコメって具体的にどうすればいいんだ?


今まで考えていなかったのが不思議っていか、我ながらアホだとは思う。けど、本当にどうしたらいいかが分からん。


「花山...おい花山!聞いてるのか!!」


「は、はいっ?!!」


考えごとにうつつを抜かしていると、大声で呼ばれたので咄嗟に返事をしながら前を向く。

すると、担任の夏林先生がこっちを睨んでいた。


「聞いているのかと言っているのだ、まだこの時間が始まって五分しか経ってないぞ?」


「あっ、あぁ、すみません。少し考えごとを.....」


「そうか、私の話より考え事が大事か......」


「い、いえ!そんなことはありません!!」


と、普段美人な夏林先生がさらにその顔にシワを寄せて言ってきたので俺は背筋を伸ばした。


クラスの陽キャ達の一部は夏林先生に注意される俺を見てクスクスと笑っている。


「うむ。以後気をつけろよ花山」


「は、はい!!」


「それじゃあ委員会決めについて続きを話すぞ〜!!」


と、夏林先生が説明に戻ったところで俺は大きく溜息を吐いた。


やっぱ青春ラブコメ以前の話だよなー。まずこの陽キャ達を相手にしながら馴染むところからだ。

青春ラブコメは具体的にどうすればなんてことは、その壁を乗り越えてからにしよう。


心の中でそう決めたところで、隣からクスクスと笑い声が聞こえてきた。


「怒られちゃいましたね、花山くん」


「あ、天霧さん。う、うん、別に大した考え事じゃないんだけどそっちに集中しちゃって」


と、俺は面白そうに笑いながら口に手を当てている天霧さんにぎこちなく返した。


や、やっぱあんなことがあったからイメージは崩れたけど、天霧さんて本当に可愛いよな。流石一軍女子......


「何か悩み事ですか?私で良ければ聞きますよ?」


と、余計なことを考える俺に天霧さんは優し気な声をかけてくれた。


「い、いや大丈夫だよ!本当に小さな悩みだからさ!」


「そうですか。では、本当に悩んで仕方がなかったらいつでも相談してくださいねっ!」


「う、うん。ありがとう。天霧さん......」


そう言うと、天霧さんは可愛らしく頷く。


もし何の気もなく言ってくれたのなら有難いけど、七海からまだ油断するなって言われてるし、相談できるような内容でもないしここは断って正解だろう。


そうこうしているうちに、我がクラス二年二組の学級委員が決まったらしい。


「えーそれじゃあ今決まった通り学級委員、男子は宮村、女子は桐山だ。異論はないな?」


夏林先生がそう言うと、クラス全体から軽く拍手が起こった。


宮村が学級委員やるんだ、確かにやりたいって言いそうだし。それと桐山さん、確か天霧さんと凄く仲が良さそうだった子だよな?


「次は各委員を決めていくぞ〜せっかく学級委員になったんだ、宮村と桐山、後の進行はお前達に任せるぞ〜」


と、夏林先生に呼ばれた二人は立ち上がって黒板の前に出る。


「えーっと、それじゃなっちゃんに任されちゃったのでここからは俺らで決めてきまーすっ」


少しお調子者風に宮村が言うと軽く笑いが起こる。

その隣で一緒になった桐山さんもはにかみながら続いて口を開く。


「とりあえず最初は体育委員からってことで聞いていくから挙手して、被ったらじゃんけんで!」


宮村に続いて明るく桐山さんが言い終えると、さっきまで静かだったクラス全体が盛り上がった。


うわぁ、すげえ陽キャだよこれが陽キャ。俺だったら皆んなの前で話すだけで声が震えてくるもん。


そんなことを考えているうちに、一つまた一つと委員が決まっていく。


ここであまり物になるんじゃなくて、俺も自分から手を挙げていかないとな。


「んじゃ次は〜!図書委員になりたい人〜!」


おっ、ちょうど良いタイミングだ。本は好きだし何せボッチだった俺にとって図書室は庭みたいなもんだからな。


そう思いつつ、俺は控えめに手を上げた。


「おっ、やっと手上げたなぁ花山、それともう一人はーおっ、沢村さんっ」


「他に図書委員やりたい人は〜!」


と、宮村に続いてクラス全体に桐山さんが声を掛けると、俺と沢村さん以外に一人だけ手を挙げる生徒が居た。


「おっ、天霧さんも図書委員希望か。それじゃ男子は他に居ないっぽいから花山で決定な」


そう、もう一人の生徒とは今宮村が言った通り天霧さんだった。

コ、コレって、多分天霧さんは何かを企んで俺と同じ委員を希望してるよな?


「それじゃ天霧さんと沢村さんはじゃんけんでっ!」


「はいっ分かりましたっ」


桐山さんに言われ天霧さんが返事をして立つと窓際の沢村さんもそれた合わせて席を立つ。

天霧さんは俺をチラッと見てクスリと笑う。

こ、怖えぇ。た、頼む沢村さん、勝ってくれ!


「二人ともいくぞー!さーいしょはグー!」


宮村は周りを盛り上げるように声を張り上げる。

沢村さんと天霧さんはそれに合わせてぎゅっと握ったてを振った。


「ジャーンケーン!!」


「「ぽいっ!」」


有無も言わさず、勝ち負けはその一回で決まった。


「そんじゃ図書委員は花山と沢村さんで決定な〜!よーし次行くぞ〜」


そう宮村がまた全体に声を掛けると何事も無かったかのように他の生徒達は委員決めに戻った。


やった、やったよ青春ラブコメの神様、そしてありがとう沢村さん。


「チッ...何で私が負けないといけないのよ、これじゃ計画が台無しだわ。」


俺が感謝しているとそんな恐ろしい小声で聞こえたので、俺は知らないフリをしながら一緒の委員になった沢村さんに目を向けた。


沢村茉都香(さわむらまどか)確か彼女は去年もクラスでも一緒だったはず。


陽キャの中では割と静かな方だけれど、可愛いルックスと誰にでも優しい温和な雰囲気で話しかけやすく、人気だ。


窓際の沢村さんを眺めていると不意に視線が合ってしまった。


沢村さんはすぐに目を逸らしたが、少し恥ずかしそうに頬を赤くしている。


か、可愛い。人気なのが分かる、良かったあの子と一緒に図書委員になれて。


「すっごく嬉しそうですねぇ、花山くん。」


「えっ?!い、いやそんなことないよ?!」


不意に天霧さんに言われたので、一旦沢村さんから視線を離して否定した。


天霧さんは笑顔なのだけど、眉間にシワがよっていて言われなくても怒っているのが分かる。



ま、まぁ、ともかくだ。あんな子と一緒の委員会になれたんだから、何もしないわけにわいかないよな。


なんか分かんないけど青春ラブコメって感じがしてきたぞ!!



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