7話
伊藤君の意外な提案後、僕らはダンジョンからマスターの店へと戻ってきていた。
「おお、どこ行ってたんだ。」
「おじさん!お金の事なら心配しないで!私が何とかしてみせる。」
マスターの言葉を遮って彼女は宣言する。
「は?いや、タマちゃん。金の事ならこっちで何とかするから…」
「お願い、おじさん。1か月だけ私を信頼して。」
「でも、もし危ない事するってんなら…」
「大丈夫!鑑定士みたいに私の能力を使って補助系の仕事するだけだから!お願いおじさん!」
苦い顔をするマスターを必死に説得する伊藤君。
「私、悔しいよ。前田君達が怖くて学校から逃げて、そこから鑑定士始めたのに、また、お母さんやおじさんに迷惑を掛けて、あいつらから逃げるなんて…」
彼女は自分の服を強く握りしめながら涙を流す。
「自分が情けなくて仕方がないよ、だからお願いおじさん。私、おじさんにも、お母さんにも頼らずに、この事を解決したい。私に信用なんて無いと思うけど…一か月だけ時間を頂戴!」
「………分かったよ。」
意外にもマスターは早々に折れた。
「いいの!?」
「何で驚いてんだ。俺が何度タマちゃんのわがまま聞いてきたと思っているんだ。」
「うっ…」
身に覚えがあるのだろう、マスターの言葉に彼女は呻いていた。
「ただ、一か月だけだ。後、無理だけはするなよ。本当に金の事なら心配ないんだ。何時でも頼ってくれて良いからな。」
「ありがとう、おじさん!」
マスターの許可を得て喜んだ彼女はこちらを見る。
僕は彼女の期待の目に軽く頷く。
「うん?横山さんも関係しているのか?」
「うん!ダンジョン関係の仕事するからアドバイスを貰う!」
「そうか。なぁ、俺にダンジョンの事は良く分からねぇ、けど、あまりこの子に危ない事だけはさせないでくれ。」
「分かっています。」
僕は真剣な表情で彼に頷きながら嘘をついた。
ダンジョンに潜るのだ。
しかも僕らがやる事を考えたらどうしたってそこそこの難易度のダンジョンに潜る事になるだろう。
マスターに全てを話したらきっと止められる。
だから僕は嘘を吐くし、彼女も全てを話さない。
本来、大人として、人として正しいのはマスターだ。
だが伊藤君にとって重要なのは何が正しいかじゃない。
自分がどうこの件に向き合えば納得出来るかだ。
僕は彼女に協力をする。そう決めている。
それがたとえ彼女を危険な場所へ連れていく事だとしてもだ。
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金髪動画投稿者前田に脅迫された次の日。
僕と伊藤君は喫茶店に来ていた。
マスターの店ではなく、大手チェーン店の喫茶店だ。
彼女は飲み物の注文に手間取っていたり、周囲を挙動不審に見渡したりしていてたがコーヒーを半分飲み終わった頃には落ち着いた。
スケッチブックを取り出して何やら書き込み始める。
「私、横山さんの特性見てて実は思っていた事があって。」
彼女がこちらに見せたスケッチブックには【観測者 × 露出度 = 破壊力】と書いてあった。
「横山さんの能力って要はこういう事じゃない、ですか。」
「そうだね。」
「これってダンジョン配信と凄いマッチした能力だと思いませんか?ダンジョン配信って知ってますか?」
「うん、知ってるよ。」
加川君達と潜る際に僕はそのカメラマン役を担っている。
「仲間だけだと、おそらく5~6人の観測者が精々で、それにずっと横山さんを見ている訳には行かないと思いますけど…、でも配信ならリアルタイムで大勢の人間に横山さんに注目させる事が出来ます。」
僕はその提案にナイスアイデアだ!とは喜ばなかった。
その考えは僕にもあったからだ。
しかし…
「伊藤、これを見てほしい。一緒にダンジョンに潜っているルーキー達の配信者用のアカウントだ。」
加川君が作成した配信用のアカウントを彼女に見せる。
作成は一か月程前で、登録者数は6人しかいない。
ちなみにこの内の1人は僕で、後は彼らの友達だ。
「調べたけどダンジョン配信は今は新規参入が厳しいみたいだね。これも視聴者なんて1人、2人いればいい方だ。それが悪い案だとは思わないけど。ただ、猶予一か月で視聴者を得るのはかなり…」
「私がプロデュースします!」
弱気な僕に力強く宣言する伊藤君。
「横山さんを私がトップ配信者にします!」
「策はあるのかい?」
彼女は僕が問いかけると携帯の画面を突き出してくる。
そこには【猫珠ねるねのげーむちゃんねる】という方の配信アカウントが移っていた。
登録者数は243人。
「これ、私のアカウントです。」
「伊藤君の!?3桁じゃないか!凄い!」
「い、いえ、まあ正直それは別に全然凄くないんですけど…、ただ一応これは収益化が通っているアカウントです。これを横山さんの配信用のアカウントとして使えば、審査を待たずにお金を配信で得られます。」
「それは、良いの?」
「はい、趣味程度でやってただけなので問題ありません。元の視聴者も精々20人かそこらなので急に変えても大丈夫な、はず、です。後は、どうやって視聴者を得るか、です。」
彼女は今度は加川君達のアカウントを開く。
「正直、この人達に人が着かないのは当たり前、です。今はダンジョン配信だけなら数多くある中で高難易度でもないダンジョンにただ潜るだけじゃ新規の視聴者はつかないです。」
加川君が聞いたら泣きそうな話をする伊藤君。
「なので、ただのダンジョン配信とは違う事をアピールして人を呼びこみます。」
彼女はスケッチブックに文字を書き込んでいく。
ソロ、高難易度、全裸
「縛りプレイはゲームでもダンジョン配信でも人気のジャンルです。ソロでの探索とか、でもダンジョン配信で高難易度のダンジョンでやる人は少ないです。なおかつ、素手や防具縛り、こっちもやる人は少ないです。何故なら命に係わるから、です。でも…」
「僕の特性ならそれが可能なんじゃないかって事だね?」
「はい、そもそも特性の発動には肌を晒さないといけないですし、高難易度程、視聴者が着くので横山さんの特性にあっていると思います。ソロでやるのは、仲間を集める時間がないのと、被写体が多いと横山さんへの視線が減るからです。そして、配信では横山さんの特性を隠します。」
プロデュースを任せてほしいと言うだけあって彼女も色々考えている様だ。
確かに、縛りプレイのはずなのにそれによってむしろ難易度が下がるというのは視聴者が冷めるだろうから隠した方が良い情報だろう。
「カメラマンは私がします。そして最初の配信で潜る場所、それとやり方は私が決めたい、です。」
「…分かった。やってみようか。」
どうせ僕の案はあのダンジョンの報告だけなのだ。
であるならばやる気を出している彼女に任せた方が良いだろう。
彼女は了承の言葉に目を輝かせる。
「じゃあ、僕と伊藤君は仲間になるわけだ。」
「え、えぅ…そ、そうですね。」
「チームを組む時にまず決める必要があるのは取り分だ。この話は一番初めにしておいた方がいい。」
僕も何度金の話で揉めた事か。
関係を大事にしたいと思えば思うほど、金関係の取り決めはドライにきっちり決めておくべきだ。
「私は、戦う訳じゃない、ですから。だからダンジョンでの稼ぎは私の取り分はゼロで良いです。でも、代わりにダンジョン配信での収入を何割か頂きたいです。その、おこがましいかもしれないですけど、20%とか…」
「分かった。じゃあ、ダンジョンの取り分は僕が10割、配信での取り分は君が10割にしよう。」
「えっ!?」
僕の提案に彼女は驚く。
「その方がモチベーションが上がるだろ?僕も配信に人が来なければ力を得られないんだ。その配信をプロデュースしてくれるっていうなら、僕は配信の取り分はゼロでいい。」
「でも…」
「僕のダンジョンに対する思いは前に話したよね。君はそれに協力してくれるパートナーなんだ。これは君の正当な取り分だ。ただ、その代わり僕を有名人にしてくれよ?」
遠慮した様な顔をする彼女に僕は茶化した様に笑って見せる。
「はい…、分かりました。正直、前田君達の言う通りにお金を払うのには抵抗があり、ます。でも今はそれ以外に切り抜ける方法が思いつきま、せん。だけど、これを切っ掛けに鑑定士を辞めたりとか、お母さんやおじさんに迷惑を掛けてまた引きこもるとか、そういう後ろ向きな行動は、したくない、です。だから、むしろこれを切っ掛けにお金を稼いでやりたい!、です。」
彼女はギラついた目で僕を見る。
自ら思考し、行動しリスクを取って成果を得る探索者の顔だ。
それは僕好みの表情だった。
僕と伊藤君の目的は合致し、ダンジョン配信者としての一歩を踏み出すのだった。
「それで、最初の配信はどうするんだい?」
「最初は…有名配信者にレイドします!」
そして彼女プロデュースの記念すべき初配信は炎上覚悟の売名配信に決定した。
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僕らは山梨県管轄の中型ダンジョンに来ていた。
今日ここが僕が変質者としてデビューする舞台である。
いわゆるここは水系のダンジョンだ。
今現在僕らが立っている場所も足裏にうっすらと水の感触を感じる程度に水が薄っすらとある。
そして大小様々な水で出来た大玉が空中を漂っている。
小さなもので本当に水滴程度の物から大きなもので5メートル程の物が視界に入る。
確かここの推奨レベルは34だ。
「わあ…」
ダンジョン壁や天井にある光源を水玉が反射しあたりは幻想的な明かりに包まれている。
伊藤君もその光景に目を奪われている。
「綺麗な場所だね。」
「そ、そうです、ね。浅層は比較的危険が少ない、っていうのもあってここはネットで最近映えるって人気、です。」
彼女は僕にスマホの画面を見せてくる。
そこには配信サイトが映し出されていた。
「今日、ここで有名ダンジョン配信者兼、コスプレイヤーのえなりんが配信をしています。」
「視聴者は3,000人ちょっとか…」
「もっと人を集めている配信者がいれば良かったんですけど。時間がないので妥協しました。」
本人に聞かれていたら大分失礼な事を交えながら伊藤君と打ち合わせする。
僕らは現在荒野を歩く放浪者のようにボロ布を全身に被っておりツアー客に怪訝そうに見られている。
この場所は県によって運営されており雇われた探索者達によってツアーが組まれたりする。
「えなりん、はこのダンジョン最奥の俗称【山梨空中水族館レベル地獄】まで行く予定になって、います。護衛に有力探索者を連れて。」
「そこに僕が乱入すれば良いんだね?」
「は、はい、有力冒険者を護衛につけているので彼女に、危険はないと思いますが…。モンスターが彼女に近づいたタイミングで無理矢理介入します。そこ、で圧倒的な力を見せつけて目立ちます。そ、そして話題性をゲットして視聴者もゲットして有名配信者になります!」
彼女は小さなホワイトボードに図を描いて僕らにとって都合の良い未来に向けての筋道を説明する。
こんなに上手くは行かず、失敗するかもしれないが、何事もやってみなければ始まらない。
スマホのメモアプリに記載した台本を見ながらダンジョンの奥へと進んでいく。
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「わあ☆きれーい。幻想的ですねぇ~」
:えなりんの方が綺麗だよ
:*******
:俺の方が綺麗だよ。
:気を付けてね!
:観光地化されてるし大丈夫でしょ。
:言うてレベル30越え。
サメをモチーフにした水着の様なコスプレをした女の子を映し、その女の子が中身のない話をしているだけに見えるけれどもその配信は盛り上がっていた。
「はあ~、えなりんマジ萌ゆる~。」
そして僕の相方の伊藤君も鼻息を荒くしながら彼女の配信を見ている。
僕には分からないが人を引き付ける魅力は確かにこのえなりんという配信者にはあるようだ。
「彼女の事、伊藤君好きなの?」
「えひゅ!?あ、ああ、はい。私、結構配信色んな人の見ているんです。え、えなりんはいつも見ている訳じゃないんですけど私の推しとコラボしてた事もあって。」
その推しを利用する事になるけど、良いの?
なんていうのは意地悪な質問なので僕はしない。
そんな事は彼女も百も承知だろう。
今の僕らに必要なのは正論や良識的な意見ではない。
問題を前向きに解決する術だ。
僕達は今、このダンジョン最奥近くまで来ている。
えなりんは今、ダンジョン最奥にて配信を行っている。
その場所は大きな円筒上の様な形をしており地球の物理法則は完全に無視されており水で満たされている層となにもない空間のみの層、それが数秒毎に位置を変え続ける異様な空間。
しかし、光の反射も相まってその空間はえなりんが言うように大変幻想的だった。
僕達はその円筒水族館の入口近くで介入するタイミングを伺っている。
現状、彼女に近づくモンスターは護衛の有力冒険者によって完全にブロックされている。
「な、なんか厄介オタクを剥がすセキュリティみたい、じゃないですか?へへ、へ」
「そうだね。」
意味が分からない彼女の話に生返事しながら配信画面を注視する。
僕の初デビュー、インパクトが必要だ。
頭の中で何度もシミュレーションする。
「おい!まずい!【姫】が起きたぞ!」
その時、リアルと配信画面両方から叫び声が聞こえた。
【姫】
この円筒上の空間の最下層にいる上半身が人型、下半身がタコの様な軟体生物となっているこのダンジョンの生態系の頂点。
ボスである。
このダンジョンの異常物理法則や幻想的な水の動きは姫によって保たれているとされており県によって討伐を禁止されている。
なにより基本的には水底で寝ているだけで、起きたとしても暴れる事はない。
なので危険はない。通常ならば。
:姫?起きたらなんかまずいっけ?
:なんか分からないけど一回逃げた方がいいんじゃない?
しかし、今日の彼女はご機嫌だった様だ。
姫が寝起き一発目に景気よく歌いだす。
するとモンスター達が興奮しだす、それとともに水の動きが活発化し、まるで津波と台風に同時に襲われた様に空間がうねり出す。
「うーん☆そうですねぇ、一旦出ましょう………。きゃあっ!」
おそらく、えなりんもそこそこの探索者。
しかし異常事態に目を白黒させている。
護衛も急な荒波に揉まれて近づけていないようだ。
:あれ?もしかしてまずい?
:えなりん逃げて!
「ど、どどど、どうしましょう、横山さん!」
「伊藤君、落ち着いて」
:いや、えなりんってレベル40ぐらいじゃなかったっけ?大丈夫でしょ。
:ポロリ待機中。
:ふざけんなs
レベル差は指標であって絶対的じゃない。
油断、異常事態、混乱。
様々な要因で容易に覆る。
えなりんは急な荒波に対応出来ていない様に見える。
「ちょっ、まずっ、あのカメラ止めて…」
彼女も冷静に対処すれば問題事態だろう。
しかし水着がずれるのを気にして満足に動けていない。
:カメラマン、一旦配信止めろよ。
:いや、自動追尾のカメラっしょこれ、高いやつ。
姫の歌声で興奮したモンスター達が暴れだし空間内の冒険者達に襲い掛かる。
彼らは普段優雅に泳いでいるだけだがすべて高レベルのモンスター達だ。
:やばくね
:ごえいなにやってん
目測10メートルはあろうかという巨大な魚型のモンスターがえなりんに襲いかかろうとしている。
「じゃあ、行ってくるよ伊藤君。」
「えっ、横山さん!」
軽く準備運動を済ませた僕はぼろ布を脱ぎ荒波に身を投げ出す。
波のパターンは大体覚えている。
僕は殆ど流れに身を任せるのみでえなりんに近づいていく。
「ちょっ、本当に、や、やだ。」
:これなんてえろげ?
:マジでポロリ気にしてないでさっさと逃げなって
:コメント見えてないでしょ
:きてる
「えっ、きゃあっ!」
間一髪。
僕はえなりんの元に辿り着き片手で抱いてモンスターの攻撃から逃れる。
:護衛やっと来たかよ。
:無能。
「大丈夫ですかお嬢さん。」
「あ、ああ、はい。あ、ありがとうござ………ほぎゃあああああ!!!」
彼女は丁寧に自分を助けた人物にお礼を言おうとし、そして悲鳴を上げた。
:は?
:え?
台本を思い出しながら喋っていく。
「たまたま私が水中トレーニングに来てたから良かったものの…、そんな格好でダンジョンに潜るものではないですよ。」
「え、ええ?」
彼女はブーメランパンツに水泳帽を被りゴーグルをつけた変態に諭されて困惑している。
これが僕達が考えた策だ。
僕の演じているキャラクターの設定はこのダンジョンにたまたま水泳に来ていたムキムキのおっさんだ。
たまたま有名配信者と出くわし、たまたま彼女を助かる。
そんな筋書きで今日僕達はこのダンジョンに来た。
そして今それはなされたのだった。
姫による暴走は想定外だったが幸いカメラは僕達を写している。
3000人が僕のことを見ている。
:逃げて!えなりん!
:変態じゃんか
:触ってんじゃねぇよ
:護衛マジでなにやってんの。
:モンスターに襲われそうになってた時よりチャット活発になってて草
「あ、あのあの…」
「これを着なさい。」
僕は彼女にボロ布を渡す、これで彼女がポロリを気にする必要がなくなり、みんなの視線は僕に集中してくれるのではないか。
しかし…
僕は自分の全身が今まで感じたことないエネルギーに満ち溢れている事に気づく。
さて、モンスターから彼女を救って目立つと言う当初の予定は達成した。
でももう一仕事するべきだな。
カメラはこのえなりんを追尾する設定になってるようだ。
彼女には申し訳ないけどもう少しお付き合い頂こう。
僕は真下にいる姫を見下ろす。
「あ、あのー、ありがとうございます?」
「しっかり捕まってなさい、波が来ますよ。」
「えっ?わ!きゃあ!」
混乱している探索者達や観光客を背景に僕は空中水族館の中を波に逆らって泳いで行く。
えなりんを小脇に抱えて。
モンスターや障害物は破壊して道を開いて行く。
:なんだこの変態、めちゃくちゃ強いぞ。
:さっさと離せや
:なぜ、知らないおっさんの尻を眺めないといけないのか(呆)
水層を突き抜けて僕は下層へと向かって行く。
僕の肉体は一切荒波に影響されない。
モンスターに敵意がないことからレベルが低く設定されているこのダンジョンのモンスターのレベルは50近い。
しかし、僕のパンチ一つで内臓をぶちまけて死んでいく。
停滞していたはずの僕の肉体が今まさに全盛期を毎秒更新して行く。
「は、はっははははっははははは!!」
「ひ、ひぃ〜!」
笑いが思わず溢れる。
片脇のえなりんは引き攣った恐怖の声をあげる。
そして1分程で一キロの距離を縮めた僕は気持ちよさそうに歌ってる姫を見下ろす。
彼女は自分に近づいてくる狼藉者に気付いてこちらを威嚇するように叫ぶ。
それと同時に彼女の下半身の触手がこちらに伸びて襲ってくる。
しかし僕の肉体は荒れ狂う波と襲いくる触手を全て粉砕し姫へと一直線に向かう。
「殺しはしない、眠ってなさい!」
僕は三回転踵落としを彼女の頭部に叩きつけた。
人間より数倍でかい頭部は勢いよく地面へと叩きつけられる。
それと同時に荒れ狂っていた水の動きが止まる。
空中で浮いていた水が全て下へと叩きつけられる。
モンスター、探索者。
全員が上から降ってくる。
その異常な光景を前にして、僕はただ自分の肉体を見つめていた。
これが僕の力…
停滞していた僕の人生がこの日からまた動き出したのを実感した。
:姫死んだ?
:マジでこの変態誰?
:えなりんマジで離せタコ
そしてこの日の事はネットニュースとなりSNSを騒がせた。
僕は上を見上げる。
伊藤君がキラキラした目でこちらを見つめているのが分かる。
視力もかなりよくなってるな。
こうして僕らの炎上覚悟の初配信(他人の配信)はめでたく成功したのだった
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