6話
「じゃあ、改めて自己紹介。俺はミチルっていうんだけど。ま、こういう事やっている訳ね。」
金髪は主導権を取る様に尊大な態度で話を始める。
そして、携帯の画面をこちらに向けてくる。
有名な動画投稿サイトが画面に映し出されている。
表示されているチャンネル、【ミチルTV】には目の前の金髪男、ミチルをデフォルメされた様なキャラがデフォルメされて載っていた。
登録者数は約13万人。
「皆が疑問に思っている事とか?ムカつく事とか、グレーゾーンな事に突っ込んでくスタイルで結構最近有名なんだけど知らない?」
「…聞いた事もないね。」
「おっさん、流行に疎そうだもんな」
嘲る様に笑うミチル。
彼の後ろに控える連中もニヤニヤと嫌な笑みを浮かべている。
「そんで、俺のファンからここについてタレコミがあったのね?鑑定詐欺の被害にあいましたーってさぁ。そんで突撃調査に来たってワケ。」
やはり最初からこちらを罠に嵌める気で来た訳だ。
「じゃあ、良かったじゃないか。調査結果は問題なしだ。彼女の鑑定能力は嘘ではない。つまり詐欺ではない。それで調査は終わりだ。」
「え?ははは、いやいや、調査結果はそいつの鑑定は噓八百。ネットに蔓延る詐欺鑑定士を成敗しました!って感じになるよ。」
「僕の話を理解出来なかったのであればもう一度、しっかり話そう。そもそも鑑定スキルは…」
「ああー、いいよいいよ、もう、取れ高は既に十分あるから。」
僕の説明を鬱陶しそうに遮る金髪。
「そいつは詐欺鑑定士、それで動画は終わり。それで良いんだよ。」
「…だがそれは真実じゃない。」
「判断すんのは俺の動画を見た視聴者だよ。ま、零細鑑定士とガブリエルのどっちを信じるのかって話。」
彼がこの店に入ってからの行動を思い出す。
伊藤君の鑑定結果を有名な鑑定士のガブリエルと比較して彼女の鑑定は詐欺だと騒ぎだてる。
それに反論をした僕の言葉を曲解して、あくまで伊藤君とガブリエルの鑑定結果は対立するものとして話を持っていった。
「…成程。君の意図は理解出来たよ。やっぱり鑑定スキルのあやふやさも十分承知だった訳だ。」
「えっ?何のことすかぁ?」
「それで、彼女を罠に嵌めて、動画を取って。君の目的は何なの?」
「人聞き悪い事言うなよおっさん。決まってんだろ?俺はファンの皆さんに楽しんで貰う事が目的なのさ。ま、その副産物でお金と知名度も有り難く頂いているけどね。」
目的は俗物的な物で大変分かりやすい。
しかし、どうしよう。
彼の先ほどの動画を編集でもされたら一方的にこちらが悪い様に書き換える事も可能だろう。
もしそんな動画が公開されたらどうなる?
伊藤君はネットで評判が悪くなり誹謗中傷されるだろう、鑑定士の仕事も出来なくなるはずだ。
動画の舞台はマスターの喫茶店だ。
場所が割れてしまったら物理的な嫌がらせもされる可能性がある。
伊藤君もマスターもおおよその話は理解しているのか、あまり表情はよろしくない。
困っている僕らを見て金髪はニタニタ笑う。
「ま、でも、元同級生でもあるし?場合によっちゃ動画の公開やめてもいいけど?なぁ、伊藤。」
「ひぅ…」
「…伊藤君、彼と知り合いなの?」
急に矛先を伊藤君に変える金髪。
「あ、あの前田君とその後ろの三人は高校の同級生で、その、元探索者仲間でした…」
「成程、ね。」
つまり彼らは伊藤君をハブにした彼女が引きこもりになる原因を作った連中でもあるわけだ。
「久々じゃん、伊藤。急にガッコ来なくなるから心配してたよ」
「な!俺ら仲間なのに連絡もなしなんてひでぇよ」
「その変な恰好なに?キモオタの流行り?ははは」
先ほどまで黙っていた金髪の取り巻き3人が伊藤君を小ばかにする様に声をかける。
彼女は体を震わせてマスターの後ろに隠れる。
「は?何隠れてんの?馬鹿にしてんの?」
「おい!俺の姪っ子を怖がらせるな!お前ら何が目的なんだ!」
マスターは彼女を庇って彼らにがなり立てる。
「さっき言ったでしょー、おじいちゃん。もう忘れちゃったの?」
金髪がボケ老人を宥める様な口調でマスターに話す。
「俺らは動画投稿者な訳よ、んで俺らの目的は面白い動画をファンに提供して楽しんで貰う事。でもさ、この動画投稿されたらおじいちゃんも伊藤も困るでしょ?…そっちのおっさんは知らんけど。」
僕の顔を舐めた顔でチラリと見る金髪。
「だからさ、場合によっちゃ、この動画お蔵入りにしてやっても良いって言ってあげてんの、分かる?」
「…その場合ってのは何なんだ。」
「いやぁー、どうだろうなぁ。こればっかりは俺だけじゃ決められないからなぁ。なあ、お前らさぁ今回の動画どんぐらい回ると思う?」
金髪はマスターの問いかけにわざとらしく悩んだ様子を見せた後に仲間に問いかける。
「ええ?200万再生とか?」
「ばっか、鑑定士詐欺なんて最近話題のネタだぜ?しかも胸倉掴まれてる絵もあるんだ、400、いや500万再生は固いだろ。」
「あー、成程。確かに500万再生行くかな。」
仲間との予定調和にしか見えない相談を終わらせた後に金髪はこちらを見る。
「まあ、いくら元同級生のよしみっつってもさ、俺らもプロとしてプライドもってやってるわけでさ。こんだけの美味しいネタを破棄するってのは中々したくない訳よ。今回の動画だと500万再生は固いかな?つまりさ、その500万再生を捨てるにたる場合にならないとねぇ。なぁ、今って広告単価ってどんなもんだっけ?」
「確か1再生1円じゃなかったー?」
「え、えぅ、ち、違っ…」
つまり、彼らは500万寄越せと言っている。
実際の広告単価は1再生1円ではないのだろう、伊藤君が何か言おうとする。
しかし、この場において重要なのは真実ではない。
金髪は大声で伊藤君の言葉を遮る。
「ま、そういう事で、分かった?」
「そ、そんな大金なんて…」
「鑑定料、1回10万円でしょ?すげぇな!50回やれば俺らの動画一個分ぐらいは稼げるわけだ!それに、まあ、これはひとり言だけど。あれだったらお母さんとかにも相談すれば?」
「えっ…」
「伊藤のお母さん、有名な学者さんなんでしょ?」
「ど、どうしてそれを…も、もしかして」
「んじゃ、俺ら帰っから!んー、ま、色々そっちもやる事あんだろうし?一か月後にまた来るわ!」
「ミッチー、優し!んじゃあねー」
「あ、おい、てめぇら!」
彼らは自分たちの言いたい事だけを言って店を出ようとする。
マスターは止めようとするが無視して店を出ていく。
しかし、彼らが止まった所で意味はないだろう。
動画が公開されるのを何もせずに待つか、もしくは500万を払うか、この二つの選択肢しか無い。
警察に通報した所で大きな意味はないだろう。
現状、脅迫の確たる証拠はない。
のらりくらり逃げられるだけだ。
むしろそれすら動画のネタにするのかもしれない。
考えをめぐらす、僕の横を伊藤君が通って行った。
あいつらを追いかけにいったのだ。
「タマちゃん!?」
僕らも驚いて彼女を追いかけて店を出る。
「あ、あの!」
「………あー、何?」
ミチルとその取り巻きに伊藤君は彼女にしては大きな声で呼びかけた。
「えっちゃ………、いや、は、原さんは?いないの?」
「えっ、原?」
彼女に原なる人の事を尋ねられた金髪は本当に分からないといった顔で仲間たちと顔を見合わす。
「原?お前知ってる?」
「何か聞いた覚えがあるけど、誰だっけ?」
「いや、うーん、なんだっけな。」
「私の!!」
ピンと来ない顔で仲間達とおちょくった顔でふざけた様子の彼らに伊藤君が声を張り上げる。
僕やマスター含め、皆が彼女に驚いた顔で注目した。
「お、同じ探索者の仲間としてパーティを組んでいた…、わ、私の、その、と、友達の事…」
「うっせぇな、急に大きい声出すなよ。………原?あー、思い出したわ」
どうやら原とは以前彼女が話していた高校デビューをした彼女の幼馴染の事だった様だ。
僕は勝手に金髪の取り巻きの内の1人の頭が悪そうな茶髪の女が彼女を捨てた幼馴染だと思っていたがこの場にはいなかった様だ。
金髪はようやく原さんについて思い出した様で耳をほじりつつ彼女にどうでも良さそうな顔で答えた。
「あー、あいつなら死んだよ。」
伊藤君にとって残酷な真実を
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「あー、思い出した。数か月前に、ちょっと難易度高いダンジョンに挑んで、そん時に死んだあいつ、そういえば原って名前だったっけ。」
「そうそう、マジでヤバいダンジョンでさ、俺らもマジ死にかけたよな。」
「それなー、んで、俺らも探索者続けんのどうすっかってそれで悩んでさ。今は外で?こうやってインフルエンサーデビューした訳よ。んでこれが大バズリ。こっちの方が向いてたみたい。」
「え、何その顔?俺らが殺したワケじゃないんだけど。不幸な事故だったんだって。」
「つかさ、俺ら責める前に疑問なんだけど…」
「友達なのに何で死んでる事も知らなかったの?」
金髪一行が去って十数分後の店内。
店のドアの前にはクローズの札が掛けられている。
伊藤君は長椅子のソファに体育座りで座り俯いてる。
マスターは今、店の中にはいない。
僕に彼女の傍にいて欲しいと言い残して数分前に出て行った。
彼は少し疲れた顔で金の事なら心配するなと言っていた。
その事で何かを確認しに行ったのだろう。
僕は携帯で預金を見てみる。
貯金残高31万飛んで542円
ふっ
僕は心の中で失笑する。
家賃などの生活費も考えたらとても貯金とすら言えない金額だ。
僕の車等の資産を売れば少しは足しになるだろうか。
「………500万円」
俯いていた伊藤君が顔をあげて感情のない声でポツリと呟く。
「こんな事になるなんて…」
「伊藤君、君の所為じゃないよ。君は詐欺をしたワケじゃないんだから。」
「でも、でも、おじさんに迷惑かけて、お母さんにも…、お母さん忙しいのに、大変なのに、ただでさえ私が引きこもりになって迷惑かけてるのに。お金も、心配も、もうもう…」
虚ろに自分を責める伊藤君。
「何もしなきゃ良かった。私なんかが勘違いして鑑定士なんて始めたから…」
「伊藤君、違う。悪いのは彼らだ。君は間違いなく絶対に悪くない。」
彼女は僕の慰めにも大した反応も示さずに自分をぶつぶつと責め続ける。
実際僕の言葉は何の意味もなかった。
そりゃ、彼女が悪くないのは分かり切っている。
しかし、それは現状の解決とは何の関係もない。
一銭にもならない話だ。
「おじさん、お店辞めたりする事になったらどうしよう。お母さん、私の所為で仕事場で責められたらどうしよう。どうしようどうしよう。」
「伊藤君…」
彼女が自分を許せず自己嫌悪に陥っている様に僕もどうしようもない無力感に囚われていた。
僕がもし、今も前線で活躍できるダンジョン探索者だとしたら彼らにお金を払うのが正しい行いなのかは兎も角として500万なんてポンと払えたはずだ。
僕に、希望を見せてくれた女の子が辛い状況にいるのに意味のない慰めの言葉しか掛けてやれない。
一瞬、あの金髪一行を亡き者にする考えが出てくるがもうダンジョンに潜らないといっていた彼らを物理的に排除するのは難しいだろう。
「お金、お金稼がなきゃ…」
「伊藤君?」
彼女はふらふらと店の出口に向けて歩いていく。
僕は彼女の腕を掴み出ていこうとするのを止める。
「伊藤君、どこに行くんだ。」
「鑑定士で稼いだお金が150万円しかないん、です。後350万円、稼がないと、でも鑑定の仕事は不定期だし…、もう稼げるダンジョンに行くしか…。」
「落ち着くんだ伊藤君。行っても危険な目に合うだけだ。」
「じゃあ!」
彼女は止める僕に怒鳴る。
彼女の目からは涙が流れていた。
「じゃあ、どうすれば良いの?おじさんに迷惑かけて、お母さんにも迷惑かけて、どうすれば、どうすれば、どうして…」
「伊藤君…」
「どうして、えっちゃんの事、放って置いたんだろう…?友達だったのに」
彼女は僕に縋り付いて静かに泣き出す。
「危険なダンジョンに岡田君達が補助監督も付けずに潜りだしたのに意見を言って、私追い出されたん、です。クラスじゃ岡田君達はヒーローで、私はビビりでノリが悪いって言われて、それで…。」
「成程、ね。」
法律では資格取り立ての探索者は半年間補助監督付きでダンジョンに潜らなければいけない。
しかし、実際にそのルールを守っている者は非常に少ない。
加川君達の方が少数派なのだ。
「えっちゃんも皆に乗っかって私を責めて、それで、私、学校行かなくなって…、どうして、何で、それくらいで学校行かなくなっちゃったんだろう。どうしてそれくらいで、危険な所に行くえっちゃんを止めてあげられなかったんだろう…友達だったのに…」
僕は君の所為じゃないとまた言いそうになって口を閉じた。
そんな事は何の解決にもならない。
彼女は負のスパイラルに陥っている。
自分を責める事しか出来なくて自暴自棄になっている。
ダンジョンに潜ろうとしているのも自分に罰を与えたいのかもしれない。
母親や、マスターに迷惑を掛けた自分に、友達を見捨てた自分に。
こんな時、僕はどうすれば良いか分からない。
34歳まで無駄に生き残っているが人生経験が普通の人間に比べて薄いからだ。
「伊藤君…」
「…」
「ダンジョン行こうぜ。」
「えっ?」
僕に出来るのはダンジョンに行くことだけだ。
これまでもこれからも。
提案する僕の顔を伊藤君は茫然と見つめていた。
僕はカウンターにマスターへの書き置きを残して彼女と出かけた。
ーーーーーーーーー
店から車を20分ほど走らせてある森へと着いた。
移動している間、伊藤君は何も喋らなかった。
「少し歩こうか。」
「…」
「ちょっと急ごうか、あまりマスターを心配させたくないし。着いて来れる?」
「えっ?」
僕は森の中に入ると軽く準備運動をして走り始める。
「よ、横山さん!?」
「着いてきて!見せたいものがあるんだ!」
彼女は驚きながらも走ってついてくる。
おお、探索者だったと聞いてたけどやっぱりそこそこ動けるみたいだ。
表情は必死なものの彼女はちゃんと着いてきていた。
森の中を野生動物の様に駆ける事数分。
何の変哲もない森の一角に着いた。
「こ、ここに何があるんですか?」
「言ったでしょ?ダンジョンだよ。」
僕は土と枝を被せて隠していたダンジョンの入り口を蹴っ飛ばして開ける。
「えっ!?」
「数年前に僕が見つけた未発見ダンジョンだよ。」
「未発見?」
「報告してないからね。ここは僕以外誰も知らない。」
唖然とした顔で僕を見る伊藤君。
「ダンジョンのほ、報告は国民の義務ですよ?」
「ははは、まあまあ、じゃあ入ろうか。」
ダンジョンの発見を故意に隠すことは重罪だ。
まあ、そりゃ、国家の基盤の一つの恣意的な独占は重罪だろう。
僕はそれを笑って誤魔化す。
垂直のそこまで大きくない入口は僕が付けた足場が下まで続いている。
それに足をかけて降りていく。
彼女は怯えた表情をしていたが僕の後をついてきた。
「わぁ…」
降りた先の空間を見て彼女は目を大きく見開いた。
幻想的なクリスタルが壁一面から突き出していて空間を煌びやかに照らしている。
トカゲの様に壁に張り付く多足の白いモンスターがクリスタルの間を張ってまわっている。
「ま、そこまで変則的じゃないダンジョンかな。ただ綺麗だろ?」
「…はい。」
「本当は最初に見つかったダンジョンなんかもすごく綺麗な場所だったんだ。でも人の手が入って中のものが粗方外に持ってかれて、こんな光景はそれこそ幻想の彼方だ。こっち来てごらん。」
僕は彼女をダンジョンの奥へと案内する。
伊藤君はその間興味深そうに周囲を見回していた。
「ほら、これ。」
「これは、扉?」
「うん、そんでね。」
僕は彼女をダンジョンの現在の最奥まで案内ひ、そこにある青銅色の扉に助走をつけて蹴り入れる。
「ひぅ!」
「あ、ごめん。驚かせたね。ほら、見てごらん。」
「き、傷がついてない?」
「うん、色んな事してみたけど。僕ではこの扉を開ける事が出来なかった。」
僕は適当な所に腰をかける。
「ダンジョンは後から発生した物の方がレベルが高い。ここがいつ発生したものか分からない。でも、もしかしたらこれは他の誰も掴んでいない僕だけが知っているダンジョンの最前線の新しい情報なのかもしれない。ここの事を国と共有したら調査を進んで扉の奥にも進めるだろう。でも、僕は幾らかの謝礼金を貰ってそれに関わらせてもらう事は出来ない。…それが僕がここの事を報告しなかった理由だよ。」
僕は話の意図を掴めていない彼女を見つめる。
「この前話したと思うけど、僕はダンジョンにずっとしがみ続けてきた死人の様な男だ。でも君に希望を貰えたんだ。だから僕は君のために何かしてあげたい。君がしたい事を手助けしたい。これは君は遠慮したら悪く思う必要はない。君の仕事の成果だ。」
扉を軽く叩く。
「だから何でも言って欲しい。ただ自暴自棄な行動はしないで欲しいし、後ろ向きに考えないで欲しい。難しいだろうけどさ。」
「横山さん…」
僕が力になれるのなんてそれぐらいだ。
この未報告のダンジョンを国に届ければ謝礼金が貰える。
ここの土地は僕の所有地ではなく市の土地だ。
だから僕にもらえる金額は減るが、しかしダンジョンの評価額次第だが少なくない金額を貰える。
おそらく500万円以上は貰えるだろう。
ただ時間が掛かるがそれは彼らに土下座でもして待って貰えば良い。
何なら少し金を上乗せしても良い。
僕はこのダンジョンによく通っていた。
ここが僕のダンジョンへの憧憬を失わさないでくれた特別な場所だ。
そこを誰かに渡してしまうのは惜しいけれど、恩人の為なら捨てられる。
「気にしないで良い。これは君への感謝の気持ちだ。」
「…ありがとうございます。」
彼女は僕の手を取って目を見つめてくる。
あの金髪達の言う通りに金を渡すのはムカつくけれど彼女を救うにはこうするしかないだろう。
これでいい、これで良いんだ。
「私とダンジョン配信者になってください!」
「何だって?」
しかし僕の予想とは裏腹に彼女は想像だにしていなかった選択をするのだった。
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