第29話 カリスターンの戦い
僕たちイオランテス軍は、《アレクスルーム王国》の
《カリスターン》の守備兵たちは、僕たち
そのため、フローラとフルックの《
だが、《カリスターン》を
「《アレクスルーム王国軍》が国境を通過してこちらに向かっています。また、陣頭には《
「ついに来おったか!」
《カリスターン》の
イオランテス将軍が確認する。
「《勇者旗》はいくつあったか」
その問いかけに、物見の兵は二本の《勇者旗》を確認したと答えた。
「とりあえず、敵の勇者は二人ということですか。今までのようにはいかないですね」
「うん、そうだね」
フルックの呟きに、僕はキッと顔を上げた。
「敵の勇者は僕が抑える。だから、軍の全体の指揮をイオランテス将軍にお願いします。それと、フローラ、フルック、クラヴィルの護衛の手配も──」
「お任せください」
短く、しかし、ハッキリと応じてくれた将軍に、僕は頭を下げて感謝の意を示す。
そして、続けて物見の兵に問いかけた。
「敵は、僕たちの軍の存在に気づいているようだった?」
◇◆◇
「
馬車に揺られながら、《アレクスルーム王国》所属の《召喚勇者》の一人、
すると、馬車の横を馬に乗って
「もうすぐ、我が国の《城塞都市カリスターン》に到着します。《カリスターン》ならば、
「やった! 今まで野宿続きだったから、楽しみッスね!」
無邪気に喜ぶ國立をよそに、大澄は不機嫌な様子を隠そうとしなかった。
「遊んでる場合なんかじゃねーぞ。こうしている間にも、
兵士が、まあまあと大澄をなだめる。
「お気持ちはよくわかりますが、まず、最優先でするべきことは王都の解放です。魔族軍の追撃はその後ということで、ひとつお願いいたします」
「チッ……」
「とりあえず、一日だけだぞ」
「了解ーッス」
陽気に応える國立だったが、その表情に少しだけ嫌悪の色が宿っていることに、大澄は気づくことができなかった。
◇◆◇
「──やっぱり敵軍は、この《城塞都市カリスターン》が僕たちの手に落ちていることに気づいていない」
城壁上から、こちらへ迫ってくる《アレクスルーム王国軍》の様子を確認しながら、僕は風で乾いた唇を
敵軍は
イオランテス将軍が感嘆のため息を漏らす。
「スバル殿が仰るとおりでしたな。まさか、自国内とはいえ、ここまで無防備状態を
「《リグームヴィデ王国》や《魔帝領》侵攻で好き勝手やってたみたいだからね。完全に
「それでは、スバル殿が立案した作戦を進めてよろしいですな」
「ええ、あとはイオランテス将軍にお任せします。僕は──」
腰の《
「僕は勇者二人を討ち取ります!」
○
そして、僕が立てた作戦が開始された──
《城塞都市カリスターン》には東西南北の四箇所に
「そのうち、《アレクスルーム王国軍》が近づいてきている東門を開放するんだ。しかも、夜でも目立つように
幸い《アレクスルーム王国軍》が《カリスターン》に接近してきたのは夕刻だった。
松明の灯りに気がついたのか、夏の虫のように東門へと進路を向けてくる。
「イオランテス将軍、敵の
「よし、門内に誘い込んで
《城塞都市カリスターン》の大門は、大きめの広場を挟んだ外門と内門の二重構造になっている。その広場に敵軍を誘い込んで、城壁の上、四方八方から矢や炎の雨を降らせるというのが、今回の作戦の
その
それを確認したフルックが指示を飛ばした。
「急いで死体を片付けて! そして、偽の伝令兵を仕立てて、敵の本軍にそのまま東門から街に入るように伝えるんだ!」
僕たち《イオランテス軍》には、少数だが信頼できる《人間》の兵士が参加している。
その中の三人が、伝令兵に偽装して敵軍へと向かった。
「どうやら上手くいっておるよう……じゃの?」
敵の様子を
同じような表情のフルックに促され、二人は事前に決められた待機場所へと向かっていった。
一方で《アレクスルーム王国軍》は進軍の速度を
「敵軍、大門広場に入りました!」
「よし、そのまま、できるだけ多くの敵兵を誘い込め!」
イオランテス将軍の指示に、城壁上の魔族兵たちが一斉に弓矢を手にした。
だが、事情を知らない《アレクスルーム王国軍》の兵士たちから声が上がる。
「なぜ、内門が閉まってるんだ? すでに先遣隊を送っていたはずだが」
「街の守備兵よ、急ぎ開門願いたい! こちらは長い遠征で疲れているんだ!」
「そうだ、そうだ! 俺たちは早く休みたいんだ!」
それらの声を受けて、内門の上に一人の将が立ち上がる。
その魔人の将──イオランテスが剣を高々と振り上げた。
「血も涙もない、欲の
将軍の
「「「敵襲だぁっ!!」」」
事ここに至って、ようやく自ら
慌てて身を
だが、外門の外でも、すでに戦闘が始まっていた。
「わらわの《
街の北門と南門から出撃した《魔族兵》が、城門内に入りきれない《アレクスルーム王国軍兵》に突撃を開始し、さらにフローラとフルックによる《
──勝敗は決まった。
門の内外で
だが、そんな
「勇者様、お助けくださいっ!!」
《召喚勇者》の《
矢に追われる兵士たちが助けを求めて殺到するが、その《防御障壁》が兵士たちを守ることはなかった。
二人の《召喚勇者》──
「ゆ、ゆ、勇者殿、とにかく、外へ脱出せねば!」
國立に庇われた《従軍神官》が悲鳴のような声を上げる。
「大澄さんっ! これはヤバイッスよ! いったん逃げないと!」
だが、その声に対して、大澄は
その視線は前方の一点──僕の方を向いている。
「
大澄たちより、一回りも二回りも大きな《防御障壁》を展開した僕の姿に、周りの兵士たちはヒィッと叫んで逃げ出していく。
「大澄君、久しぶりだね。今回もまた逃げ出すつもりだったりする?」
「テメェ、調子に乗りやがって! ぶっ殺す!!」
僕の挑発に、大澄は逆上して《防御障壁》を張ったまま突撃してきた。
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