40、甘い誘惑

ごそごそと、食材主に調味料の入っているカゴを漁る。

確かインスタントコーヒーの箱にまとめて入れてあったはずの、エンタッキーのビスケットに付いていたシロップを探して。

確か余ったのをスティックコーヒーの箱に放り込んであったハズなんだ。

その箱をそのまま持ってきたのだから、入っているはず。


さばいていると箱からこぼれ落ちていたスティックコーヒーを2本発見した。ラッキー。まだコーヒーが飲めるじゃん。

更に下にひしゃげたビスケットのシロップの袋を発見。3本。

一時期ビスケットにジャムを付けるのにはまっていた頃、余らせたままだった物。

その黄色い袋を引っ張り出して、伸ばしてから賞味期限を確認する。

あれ、九月に切れている。

まあ問題ないでしょう。


本日の昼食はホットケーキ。

竹に夢中になりすぎて、時間ががおやつの時間になってしまったし、折角だから残りの卵二つを使ってふわふわに仕上げましょう。



竹で急遽作った泡立て器で卵の卵白をかき混ぜる。

最初は菜箸で混ぜていたんだけど、箸でメレンゲを作るのは無理だと見切りを付け、竹の小枝を曲げて泡立て器を作った。

箸だとなかなか出なかった「もったり感」がやっと出てきて、一旦手を止める。準備していた焚き火が炭になりつつあるのを確認して、少し調整し直してから、メレンゲの仕上げに掛かる。

本当はもっと角が立つくらいまで泡立てたいけれど、手が限界。

なんとか一瞬角ができかかるまで泡立てたメレンゲを、ホットケーキミックスと卵黄、オリーブオイルと少々の水で馴染ませた種に混ぜていく。


せっかく作った気泡が潰れないように、混ぜすぎないように、手早く。

適度に混じったケーキ種を油を塗ったアルミホイルを敷いたダッチオーブンに流し込んで、蓋をして火にかける。

強火になりすぎないように調整して、蓋の上にも炭を置いていく。


このまま三十分。

多分出来るだろう。

ホットケーキミックスだから本格的なケーキには出来ないけれど、卵白を頑張って泡立てた分ふんわりしてくれると嬉しいな。




焼き上がりを待つ時間を利用して、小屋の設計図を書いていく。

設計図も無しで竹を切り出したのは早計だったかもしれないが、いいんだ。

作ることは決定だから。長めに切ってきたから使いやすいはずだし。


高さは余裕を持って入れるくらいが良い。毎回腰をかがめて入るのは辛いし、頭スレスレは圧迫感がある。そうすると最低百六十センチ位は欲しい。

家の形にするとして屋根はどうしようか。三角屋根より片屋根の方が雨漏りしにくいかな。

釘が無いから、基本は縛ったり、穴を開けて釘の代わりに木を使うことになる。

どうしても隙間が出来るから雨漏りするだろうか。


ああでもない、こうするとどうだ。難しいか。


書いては消してを繰り返して、広告の裏紙にできあがった設計図は、かまぼこ形。

もともと撓んでいたんだから、その柔軟さを活かして、あとは竹のポテンシャルに期待して作ってみよう。

いや、やはり直角三角形の方が雨漏りしづらいかな

時々出てくる優柔不断さんこんにちは。

まあ……やってみないと分からないよね。

やりながら考えよう。



そんなことより、今はケーキが良い頃合いなんじゃ無いかしら。


ケーキは嬉しいことに成功。

シフォンケーキほど、というと言い過ぎだけれどよく膨らんで蓋ギリギリまで高さが出ている。

ちょっと表面が焦げたのはご愛敬、ということで。


先行きがイマイチ不安だし、持ってきた食料はもう終わりそうと言うのに、ケーキなんか作っている場合じゃ無いという気持ちも、無いことは無いんだけれど、今回はよく頑張ってくれたパジェ君へのご褒美という意味合いもある。

もちろんスラちゃんにもね。

二人とも、サラダだけとか、魚を分け合うご飯でも文句は言わないけれど、食事は好きみたいだし。

出来ることは少ないけれど、出来るときに奮っておかないと。とも思うのだ。

節約ばかりじゃ気持ちが落ち込んじゃうしね。



というわけで、焼き上がったケーキにエンタッキーのシロップをたっぷりかけて二人に切り分けてあげる。

まだ湯気も立っている熱々。

冷やしてしっとり落ち着いたケーキも美味しいけど、ホカホカのスポンジもまた美味しいんだよね。


ふっわふわですね、ふっわふわで甘いのとよく合ってるっす!

あまいのおいしいー!


ふたりも喜んでくれたようでなによりです。

甘い物って幸せ成分があるよね。


うん、美味しいって幸せだ〜




幸せの上乗せしたいな。

チョコレート目指してカカオも育ててみる?

発酵させなきゃいけないんだっけ?出来るかな。

無謀かな。

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