37、晴耕雨読
月桂樹の葉を喜んで収穫していると、空が曇ってきた。
あれ?天気崩れるのかな。
急いでキャンプに戻り、乾かしていたものをテントに避難させる。
バケツを重ねて急遽作った棚に、干し柿や干物を引っかけておく。とりあえずはこれで大丈夫だろうけれど、やっぱり乾燥小屋欲しいな。
カゴとどちらを優先させるべきか。
まあ、明るいうちに食料調達と材料調達、日が沈んだら小物製作でしばらくいくしか無いか。
オニ君が風鈴の先の短冊(オニ君の代わりに付けた)に掴まり揺れている。
結構風が出てきた。
テントもタープもしっかり留めてあるから大丈夫だとは思うけれど、暴風雨は困るな。
一応オールシーズン用、防水の物を用意してあるけれど、悪天候は不安になる。
そもそもオールシーズン用と言っても、真冬は対応外だと思うんだよな。冬。来るんだよな……。
買った時には冬キャンはするつもりは無かったのでよく見ていなかった。
だって、秋から冬は繁忙期だからさ。キャンプすることも無いと思って。
VUカットで真夏でも涼しい、というのは確認したんだけど。
今は、テントの性能を信じつつ、追々対策も考えていこう。
雨は一瞬ざっと降り、その後は弱く降っては止み、という状態を繰り返している。空は依然曇っているので、まだ山や海に行く気にはなれない。
小降りなので問題ないと判断して焚き火をしつつ、魚を焼いた。
塩焼きが続いていたので、少しのオリーブオイルと香草で蒸し焼きにすることにする。
火にかけた鍋をあけると立ち上る蒸気と香り。
嗚呼もう美味しい。
オニ君やワラさんにも声をかけたけど、二人は虫や植物の精気の方が好きなよう。ワラさんはハーブ料理の蒸気を吸いに来ることもあるけど、食事と言うよりも勉強の雰囲気がある。
結果、食事はいつも通り三人で分ける事になる。
卵がまだ少し残っていたので、目玉焼きも追加。
黄身の張りが弱くなってきたのでもう食べきらないといけない。たまごは栄養もあるし、あると嬉しい食材なんだけれど、鳥の巣から採ってきて鳥に襲われるのは嫌だしな。
敵対行動ってどのくらいまでの行為を言うんだろう。
その個体のみか、その種族全体を敵に回すのか。細かい所を聞いていなかった。
食事の後はお湯を沸かしながらのんびり読書をする。
昨日なんだかんだ出来なかった「のんびり」を今日していると思えば、たまにはこういう時間もいい。
ネモさんに貰った本を読んでいく。文字はまだ読めないから絵を見ていくばかりだけれど。
因みにまだ魔石は光らない。
この本はきっと何か魔法が掛かっているんだと思う。
文字が、という意味では無くて。ページ数がおかしい。
最初の数十ページほどを過ぎるとページが終わらなくなる。どれだけめくっていっても終わりが来ず、一度閉じるとページがリセットされるというか、後半へは一気に飛べないので、前から順番にめくっていくしかなく、途中うっかり本を閉じてしまうと、そこまで戻るのが面倒。
普通の本のように、ページを飛ばしながらこの辺だったかな、と目当ての所を探すことが出来ない。
だから読んでないページが多かったのだが、栞を挟んでおくとそのページが開けることに気付いた。
栞といっても枇杷の葉っぱだけれど、栞と思って使えば栞になるようだ。
まあ読みかけの本に栞って今更過ぎることだけれど。
本を眺めていくと、気になる絵を発見した。
なんかタケノコっぽい。
そう思ってみてみると、同じページの絵は竹っぽい。
ただ半円形のアーチみたいになっているので、何かの構造物なのかもしれない。
でも節のある感じとか、先の方に行くとある枝の感じが笹っぽい。
根元から真っ直ぐはえて段々曲がっていき、アーチのようになって先の方が地面に付いている。というか埋まっている。
曲げて何かを作ったという記録なのか、植物の観察記なのか。
絵は上手なんだけれど、これでは詳しくは分からないので、横に付いている地図によると場所も近そうだし、雨が止んだら明日にでも見に行くことにしよう。
ネモさんの覚え書きの日誌だから仕方ないんだけれど、植物の種類ばかりが並んでいる、とか、ここから先は地形のこと、という風に分類がされていないみたいなんだよな。
気付いたこと見つけた物を徒然に綴っている感じ。
それでも情報は有り難いことには変わりないんだけれど。
他にも数ページこれは果物かな、というような記述やキノコがたくさん載っているページがあったので場所をメモしておく。
載っている情報は色々だけれど、場所は近い所を纏まって書いてくれているから有り難い。地図をよく書き込んでくれているのも助かる。
それにしても文字ばかりのページは依然としてちんぷんかんぷんだから、早く文字が読めるようになりたい。
同じ形の文字を探して推測をしてみようと試みたけれど上手くいかない。
アルファベットやひらがなに対応させて考えられないので、全く分からないまま。
そうやって考えると、子どもに文字を教える親や保育園幼稚園、小学校低学年くらいまでを受け持つ先生って凄いよな。低学年のスペシャリストっているもんな。
他の所はどうか知らないけれど、うちの小学校には低学年のスペシャリストな先生達がいた。
おばちゃん先生、といっても今の私とそんなに変わらないくらいの四十代くらいの先生で、凄い安心感がある感じの先生達。
各学年一クラスずつしかない小学校だったので、同じ先生が担任になることも多いんだけど、1・2年生は必ずその先生達が担当していた。
今の先生はどうか知らないけれど、当時は若いお母さん達の相談にも乗っていたもんな。
スーパー先生。
そんな先生に憧れて教員免許も実は取得している。
まあ、教育実習に行った中学校で私には無理!ときっぱり諦めたけれど。
若い子、こわい。と思った二十歳の私。まあ若かったんだ。
そんな事を考えながら本をめくっていくと、タコさんウインナーの絵を発見。その横には、襲ってきそうな果物。凶悪な口から見える細かい実は赤く塗られている。
ザクロ……かな?
ザクロあると嬉しいな。ちょうど旬だし。
探したい物が増えた。
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