32、目指せ充実した生活
森の中を歩いていて木の実やハーブ類はあるけど、保存方法が無いことに気付いてしまった。
冷蔵庫の容量には限界がある。
今のところ氷室を作れる予定は無い。
そうすると、乾燥させる、砂糖漬けにする、塩漬けにする、オイル漬けにするが思いつく保存方法。
魚介だったら燻製にする、もあるけれど、長期保存するためにはかなりしっかり燻さなければいけない。この準備もしたい。
とにかく、今は森に色々な木の実があるが、四季があり、今が秋だと仮定するとこれから冬に向かっていく。しばらくは実りの秋でも、このままだと森の中で取れる物は減っていくはず。
雪が降るのか、一部南国っぽいから降らないのか、風が吹くのか雨が降るのか……それが分からないから冬が厳しかった時の対策もしておかなければいけない。
っていうか、海岸沿いは南国感溢れて森もジャングルっぽいのに、少し入ると日本の里山風になって、更に入ると針葉樹林になっている。
杉は植樹か庭木以外、もっと標高の高い所だけに生えていると思っていた。
東側キャンプを含め、数日森を徘徊して理解が難しいという事が分かった。
この世界の自然は私の知っている物じゃ無いのだと実感させられる。
更に言うなら、狭い島なのに植生が一定じゃ無いのも面白い。なんかチグハグしている。
まあそんなわけで、塩、砂糖、油を確保したい。
今ある分ではとてもじゃないけれど足りない。
塩は海で頑張るとして、砂糖と油だ。
最初はサトウキビが一般的かと思ったけど、サトウキビを育てて砂糖を得るにはまだ畑の準備が出来ていない。サトウキビ1本あっても仕方ないし、道具も必要になってくる。気候的に増やせるのかも分からない。
なにより砂糖を作る工程は臭い。それが私の頭の片隅にあるので、砂糖に手を出すのは躊躇してしまう。
臭いのは地元にある加糖原料加工(株)の工場だけかもしれないけど。
本当に臭い。
今でも近くを通るときは車の窓を閉めるし、近くにある母校の中学校はいつも異臭がしていた。この現代でも周辺住民への配慮はお留守。または、最大限配慮してもまだ臭い。
因みに雨が降り出す前が一番匂う。何故か豚汁の匂い。何故砂糖原料を作っているはずの工場で豚汁臭いのかは未だに分からない。
まあそんなわけで砂糖はカエデから得たい。メープルシロップを作れれば、メープルシュガーも作れるし。パンケーキかコーヒーに入れるくらいしか使ったこと無いけど、砂糖は砂糖でしょ。
カエデの若木からではそんなに原料が取れないかもしれないけれど、どうせ気の長い話なら今から始めた方が良い。本当は何本も欲しいけれど種には限りがあるし、まだ見つけてないけど山の中に自生している可能性もゼロじゃない。
オリーブも油目的。2本なのは以前庭に植えたら実の成りが悪かったから。調べたら一本じゃ実が成りにくいらしい。
一応少ない実からオリーブオイルを作ったこともあるので手順は分かっている。
大量に作るのは大変だけれど、まず実が無ければ作るも作らないもないので用意しておきたい所。
ムクロジは洗濯用。
汚れは水で何とかなるし、この生活だから多少取り切れない汚れ染みがついていても気にしないんだけれど、水でどんなに洗っても染み込んだ汗の生臭さというか、脂質臭?皮脂臭?が取れなくなってきた。
こざっぱりしたいです。
頭洗いたいです。頭皮のもみ洗いも洗濯ついでに頑張っているけれど、なんか抜け毛が多いんです。
このままじゃ尼さんと間違えられちゃうから。尼さんはその道のプロだから格好いいけどさ、尼さんじゃ無いから……。
まあ油が大量にあるなら石けん作りもチャレンジしてみるんだけど、まずは食用優先だし。
せっかくだから作る野菜の相談も明るい時間にしてみよう。
焼き火やLEDライトがあるとは言え、暗い時間に種をいじっていて落としたら大変だ。
翌朝、まず畑にまく野菜を数種類決めた。
贅沢を言えば一般的な野菜全部欲しいのだが、そんな無茶は言っていられない。
種は木にする分と、大豆分を抜いて数えた所、あと23粒あった。もともと30粒くださったらしい。
初代は気候の影響を受けないという話だから、季節に関係なく一回は収穫は出来るのだろうけど、そこから先も考えると、種が出来て次代に残しやすい物のほうがいい。
大根、白菜、かぼちゃ、トマト、の4つをまず植えてみることにする。大変迷いつつ、米も陸稲で2粒。出来た稲穂から増やしていこう。
私の名前は穂積。穂を高く積み上げる。だから出来るはず。
キャベツとニンジンは芯に期待。
選んだ物は基本的に種が取れるし、種なら次のまき時まで保存が利きやすい。はず。
サツマイモも挿し木で増やせるから簡単なんだけど、次の世代を植える時期を考えると今は向いていない気がする。
どれも植物相手の気の長い話だけれど、実はそんなに心配していない。
何しろ植えたばかりの大豆がすくすく育ち、もう小さな蕾が出来ている。
どう考えても早すぎる不思議な成長だけど良いことだろう、と気にしない。
良い不思議は受け入れます。
ネモさんはまだ起きないようなので、三輪山さんに呼びかけてみると木の上から降りてきた。
さっきまでは見えなかったから、木の中に同化していたのだろうか。これも不思議現象だけど気にしない。
三輪山さんが管理している平らで拓けた場所に、畑やゆくゆくは窯や住居も作りたいことを改めて伝える。
前に自由にしていいとは言われたけれど、ご挨拶は大事。
後々のトラブルを回避するためにも、健全なお付き合いのためにも、ご近所さんや地主さんとは仲良くしていきたい。
田舎的なあなあの関係は、良好なお付き合いがあってこそ成立するのだ。
三輪山さんは、墓の大木が無事なら気にしないから、自由にやって良い。と言ってくれた。そして大切なことを教えてくれる。
「ここから北に見える、雲を衝く山が白くなり出したら、雪が降る。気をつけろ」
話し方が流暢になっている。練習したんだろうか。
そんな事よりも雪の可能性もあるのか。対策はどうしよう。
四季についても教えてもらえた。
今は一番寒い日に向かっている季節で、一番寒い日を過ぎたら一番暑い日に向けて季節は動く。
一番寒い日と暑い日の前後は風が強く、雨や雪も多い。
春夏秋冬という名前では無いが、つまり四季もあるようだ。
==============================
会社名は架空の物です。
実在する会社、個人とは関係がございません。
同名の会社があっても、一切の関係はありません。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます