28、カレーの誘惑

暗くなる前に海の罠を確認して、石を追加。

網の方にハゼっぽい魚が一匹掛かっていた。小さいのでこの子には餌になって貰いたい。とりあえず入れたままにしておく。

食べでのあるフィッシュイーターが来てくれないかな。



さて、カレーだ。

もう一度土鍋を火にかけて、煮込んでいく。

その間に米の用意。カレーには米が必要。節約してたけど、今日は我慢しないぞ。

カレーの香りが我慢するなとささやいている。

飯盒さん、出番です。


カレーには麦飯も良いよね。持ってないけれど。

小中学校の給食のカレーは麦ご飯とセットだった思い出がある。今はもうちょっと辛めな物が好きだけど、アレはアレで万人受けする甘さで美味しかった。


やっぱり米や麦は欲しいよな。

田んぼは難しいだろうか。陸稲でも栽培できるけど、連作障害が出やすいんだったか。途中に大豆を植えると良いんだっけ?

麦の作り方は全く分からない。

他の野菜も大豆を途中で挟むといいと聞いたことがあるような、無いような。一番良いのは場所を変えながら作ることだ、とも言われた気がするけど、大豆は作る方向で考えた方が良いかも。

ゆくゆくの米のためにも。


ゆくゆくというか、なるべく早めに動き始めないと収穫までに主食がなくなるのは確定だもんな。

まずは大豆作ろう、大豆。

食べれるし、種にもなるし、米作りのお供にもなるかもしれないし。

広い畑や田んぼはすぐ作れないけど、大豆なら小さい畑で作れる。わりと痩せた土地でも狭い土地でも出来るイメージあるし。


何にでもなるという不思議な種があるし。


火加減を調整しつつ、パジェミィにしまっておいたたねを取り出す。


大豆はその前の豆苗も美味しいし、えだ豆も美味しいし、大豆もやしにしても美味しい。大豆ももちろん美味しい。

節分に食べる福豆が好き。

どのくらい植えようか。

種は小さな麻巾着いっぱいに入ってるとは言え、無駄遣いは出来ない。


「初めてだし、3粒いってみるか」

上手くいけばそこから増やしていこう、もし駄目でも次回への勉強になる。


ニンジンとキャベツを植えた畑の横に3粒を植え、わかりやすいように枝を立てておく。山神様の土も少しかけて、水も少々。畑を囲む石も追加して、後はひたすら祈る。


「ちゃんと芽が出ますように。枝豆食べたい。大豆食べたい。根粒菌にも期待したいです。ゆくゆくは田んぼや畑のお供になりつつどんどん増えますように。おねがいします」

ぱんっぱんっ

「ちゃんと育つように出来る所は世話しますので、足りない所は植物の力と自然の力、おねがいします」



よし、しっかりお願いした。


お願いが終わったら良い頃合いだ。


さて。



「ごはんですよー!」



カレーの匂いは暴力だと思う。

なんだかんだで最近は食べる量も減り気味だったのに、匂いだけで空腹がヤバい。

少ないと言いつつ十分食べていたつもりだったけど、おなか減ってたんだなあと気付いてしまった。

自分が一般と比べて大食いだという自覚はあるけれど、世の中の小食女子はどうやって生きているんだろう。尊敬してしまう。


さてさて、まずはサラダで胃の準備運動。

自然の辛みが美味しい。ドレッシング無いけど、地元の塩専門店で買った塩があれば十分。

……うそです。

塩も良いけど本当はゴマドレが欲しい。持ってきてないんだよなあ。

そう言えば塩の残りも心許ない。干物作りたいし、海水から出来ないかな。


まあそれはおいといて、カレーだ。カレー。

深めの紙皿にご飯をよそい上にカレーをかける。

ジャガイモ・ニンジン・タマネギというシンプルなカレーだけど、ホタテの出汁がよくきいている。

キャンプでカレーを食べて外れなわけがない。

美味しい。


パジェ君もスラちゃんも満足そうだ。

私の好みで辛口寄りの中辛なんだけど、お口に合ったようで何よりです。



あーうまかった。

気持ちはどれだけでも食べられそうだけど、胃袋自体は小さくなっていたのかご飯が余った。

明日、二日目のカレーと共に楽しもう。

どんなカレーも美味しいけれど、二日目のカレーはまた格別。

虫の被害を抑えるために、パジェミィに土鍋と飯盒のまま新聞紙に包んで入れておく。


扉を開けたらスラちゃんが一目散にオニヤンマ君の様子を見に行き嬉しそうにしている。

もう乾いただろうけど後一晩様子を見ようか。

「ぴゃんっ(わかった)」


「パジェ君、鍋熱くない?カレー臭くなるかな?」

「大丈夫っすー。いざとなったら車用消臭スプレー有りますよ」

そんな物入れていたっけ?どこに?

「荷台下の道具入れにカバーとかジャッキと一緒に入ってます。出しておきますか?」

すっかり忘れていたけれど、入れていたらしい。

布団たたきもそうだけど、買って忘れているのももっけこうあるんだな、と反省する。

「明日考えるよ。雪用のカバーもあるのすっかり忘れてたよ。落ち葉が多いしかけておく?」

「そうですね、落ち葉も多いですしちょっと鳥フンの危険がありますからね。こまめに取らないと塗装が痛んじゃいますし。急ぎませんけど、お願いします。あ、それと冷蔵のクーラーボックスの中身が卵だけになりました。一旦電源落としますか。飲み物を冷蔵に移しますか」


その通りで、肉やベーコンの肉類、干物などの魚類。牛乳に野菜は使い切ってしまった。

今日はカレーの誘惑に負けてしっかり食事をしてしまったし、明日からは採取したサラダ中心で、時々乾物や缶詰、保存食という食生活になりそう。

畑の収穫は先だし、好き嫌いせずに山芋を堀に行こうか。


「一旦切っちゃって。まだハイボールのロング缶残ってたよね」

「まだいくつかあるっすよー」

「最後の贅沢ついでに飲んじゃおうか」

常温で良いよ。



パジェ君に紙コップを渡しお裾分け。

スラちゃんも欲しいと言うから、ほんの少しだけ。子どもっぽいから飲ませて良いのか迷う所だけれど、精霊や妖精に年齢は無いよね。

座敷童みたいに人型だったらアウトな気がするけど。


水に戻す前のホタテの貝柱を一つずつおつまみにして、ハンモックの上でコップを傾ける。

あんまり気にしなかったけれど、大きい方の月が半月になっている。

小さい方は満月のままに見える。どういう位置関係なんだろう。


あーホタテの味が濃くて美味しい。

ホタテは無理でも、食べられる貝は無いかな?アサリは東南アジアでも取れたと思うけど、こんなにさらさらな砂浜に貝はいるのだろうか。

いや、殻があるんだから貝もいるか。


魚と一緒に探してみよう。


肌寒くなってきたから焚き火ももうちょっと大きくしたいな。

焚き火台の方をコンロ専用にして、直火でも一つ焚こうか。

焚き物の保存場所も作らないと。


やることたくさんあるなー。


何もやることが無いのも途方に暮れるからまあ良いか。

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