27、呪わないわら人形と食べれる葉っぱたち

食事の後、すっかり暗くなったのでテントの準備を整えて、もういつでも寝れる。


で、その前にわら人形を作った……。


いやいやいや、狂ったわけでは無いです。

一応理由があるんだよ。言い訳させて。

スラちゃんがオニヤンマ君大好きだから、スラちゃん用にさせてあげたいなって。そうすると鳥や害虫から守るために別の物、例えば案山子が欲しいなって……。

そう思って持ってる材料の中で、縄を選んで人型に作ったら、見た目がわら人形だった……。

そんな浅くて深い理由が。


まあ途中で、コレわら人形ぽくないか?とは思ったんだけど。昔ながらの案山子は藁で出来ているじゃ無いですか。

今回の人形は、大きさ大体三十センチくらい。縄の量の関係で細身なのが余計なんとも。

頭だけでも布で丸にしたらもう少しマシになって案山子ぽくなるかと思ったんだけど、白いハンカチを巻いた結果……ターバンをしたわら人形が出来てしまいました。

なぜだ。

足をつけたのがいけなかったのか。

まあ無いとわら縄の十字架みたいだったので、あったほうが人っぽい。つまりわら人形ぽい。


うーんと頭をひねり、てるてる坊主のように顔を付けてみようかと思いついた。

しかしハンカチターバン部分はどうみてもターバンだし?とその下に顔を描いてみる。

うん、なんかインドのわら人形って感じになった。インドにわら人形があるかどうかは知らない。


インドと言えばおでこのティーカだよな、と小さい魔石をボンドで止めておいた。あのインド映画でよくおでこに付いている模様のかわり。

オニヤンマ君の時に思いついたんだけど、しっかり固定しておいた方が、つまんで使うよりも無くしにくいと思うんだよね。


インドのティーカって既婚女性だけかと思ったら男女関係なく拝礼の時とかに広く使うらしい。インドで国際結婚した人の漫画で読んだ事がある。

まあ、ヒンドゥー教どうこうじゃなくてインド人といえばのイメージで捕らえがちだけど。

そういえばターバンはインドでも少数派の何教だったかの人しか使わないらしい。そしてバイク運転や一部制服のヘルメットが免除されるらしい。

以上漫画から得た雑学。

インド映画だとよくターバンの人も出てくるので、ターバンに対する現地の感覚は不明。


あれ、ということはターバン付けてティーカはおかしいのかな。ティーカはヒンドゥー教だよね?とは思うけれど、あくまでイメージですので。

日本人がちょんまげで忍ばない忍者の末裔なのとおんなじ扱いです。



おでこの魔石のボンドはまだしっかり乾いてないけど、わら人形を握りしめて光れ、と念じてみる。光っているイメージをしたり、そこに全神経を集中するイメージをしてみたり。

変化なし。

まあ一日で光るわけが無い。



神経を集中しすぎたからか頭が痛くなってきた。

ボンドが乾くまでダッシュボードに寝かしておく。

並ぶオニヤンマ君とわら人形さん。


畑が出来るまではスラちゃんが人形遊びするかな?やっぱりオニヤンマ君の方が良いかな。


ゆくゆくしっかり乾いたら畑を守る大事なお仕事をして貰わないと。果物も守って欲しいしね。

呪いの人形じゃ無くて、守りのわら人形。

畑が無いと案山子だという言い訳も出来ないので、明日小さい畑を作ってみよう。


畑を作って、海の罠を強化して、森の中を調べて。

ここから近い水場も探しておかないと。


やることはたくさんあるけれど、簡単には進まないものだ。

それぞれにいちいち時間が掛かる。


サクサク進むイージーモードの方が嬉しいんだけどな。

魔法が使えたら解決するのだろうか。


「早く使えるようになら無いかなー」

願うくらい自由でしょ。




翌朝。

別に昨日インド風わら人形を作ったからと言うわけでは無いけれど、カレーが食べたい。一応予定していたからルーはあるんだ。

朝のうちに干しホタテの貝柱を土鍋に入れて水で戻しておく。

鯖の水煮缶カレーのつもりだったけど、缶詰は残しておきたい。一応。

ホタテはおつまみにもおやつにもなるし、水で戻せば出た出汁ごと具材になるし良いもの持ってきたな。もっと大袋買っておけば良かった。

そのまま食べると歯にはさがるんだけどね。


仕込みの間にニンジンのヘタとキャベツの芯を植えた小さな畑を作った。忘れて自分で踏まないように、石と木で囲ったのでとりあえず大丈夫。

その後海の罠を見に行ったけれど、魚はいたものの海水が石を乗り越えていたので捕まえる前に逃げられてしまった。罠の強化は必要。

もう満ち始めているから夕方に作業しよう。


キャンプに戻りながら、足元を少し整備をする。

海への斜面は昨日すらちゃんがなぎ倒したので、横幅二メートルほど木がほとんど残っていない。

ただなぎ倒された木が歩くのに邪魔になるので、大きさで分けつつ一旦片側に寄せ、泥と砂の地面がなるべく階段状になるように踏み固めていく。

曲がって長すぎる物は切って葉や枝部分は焚き木用に運んでおくことにした。乾いた薪がもうほとんど無いから、ストックしておきたい。

真っ直ぐで長さのあるものは、ロープをかけてなんとか上まで引っ張っていく。薪置き場にちょっとした屋根のあるものを作りたい。

ノコギリと斧でサイズを整えつつ、枝は落とし腰にロープを巻いて丸太を引きずる様は、筋肉番組を彷彿とさせ、かの番組のレジェンド達のような筋肉が欲しいと思わずにはいられない。


でもちょっと筋肉が付いている気がしなくも無いような?

脂肪の方が割合多いけど。

日本の生活じゃ筋トレ毎度三日坊主だけど、この生活をしていたら憧れのマッチョレディになれかも。


それは追々として、作業の続き。

短い物はパジェミィの後部座席にブルーシートを引いて準備したパジェ君が運んでくれる。

枝が張っていると嵩張るので、ある程度切っておかなければいけないけれど、大変助かる。


とりあえず午前中の間に、半分ほどの木の枝を処理して、二メートルほど有る細めの丸太を4本上に引き上げた。細いと言っても一升瓶の太さが有るので、柱に良さそう。

斜面は割と細めの木が多く、今寄せてある分も使い勝手がよさそうだし、丸太置き場と言わず、うまくやれば家も建てられるかも。考えが甘いか。


さて、簡単に残っていた魚を煮たスープでブランチを済ませつつ、作業を進めているうちにホタテもよく戻ってきた。

ゆっくりと火にかけて、残っていたニンジンとじゃがいも一個を小さめに切って煮込んでいく。タマネギは後入れの方がよさそう。一煮立ちしたら固形ルーを少しだけ入れて、遠火で保温と弱火の間くらいにしておくことにした。

ここなら焦げないだろう。


まだまだシャビシャビのゴリゴリなのに、ルー一切れで一気に良いにおい。

夜が楽しみだ。

カレーって珍しくもなんともないのに、何故かちょっとワクワクする。

小さい頃の記憶のせいだろうか。



午後はネモさんの地図を参考に水場へ行ってみる。

地図の通り簡単に川へ出た。そのまま上流に向かうと細かい湧き水が集まった湖になっている。

最初に見つけた石ノ沢とは別の場所だが、こうも簡単に源流へ遡れると、あの大冒険は何だったのだろうかとちょっと悲しくなってくる。

まあアレは、あれでいい体験だったし……。


その遡る途中で嬉しい発見があった。

食べられる植物が多い。

厳密には違うかもしれないが、日本で知っている山菜やハーブが山の中に多くある。


本を調べてみると、その植物のことだろう絵もあったので、ネモさんがいた頃から自生していたのかもしれないし、またはネモさんが採取しやすいように集めた物が残っているのかもしれない。


まあネモさんが生きていたのずいぶん前らしいから、どっちにしても野生化してるには違いないか。


文字がまだ読めないから推測しているだけだけど、シソやミントのようなもの、ちぎってみたらバジルのような匂いの葉っぱ、ラベンダーやローズマリーじゃ無いかなというのもある。クレソン、ルッコラだろうか、と思う葉っぱもある。

クレソンぽい方は季節が違うのか枯れかかった物が僅かに残っている感じだが、ルッコラは青々とした葉が茂っている。

ちょっと全体的に野性味溢れていたり、大きさが知っているのと違うのもあるけれど、原種に近いのか、この世界特有の似ている種なのかはちょっとわからない。

知らないけれど食べれそうな雰囲気の葉っぱもある。


これなんか、おしゃれカフェでサラダに入ってそう。とおしゃれカフェーに気後れするおばちゃんは思います。

年をとればとるほど、知らない物がどんどん増えるよね……


まあおしゃれカフェはここにはないので、何を気にすることも無い。

やりたいようにやるだけですよ。

もうこれからは、近いものは知っている名前で呼ぶことにする。〜ぽいばかりだと、ややこしい。


重要なのは、食べれるぞ、ということ。


気になる物は比売様石チェックをしていく。一応表面や茎に当ててみて、ちぎって出た汁も調べておく。

概ね水色〜青。一部紺色もあるけど、まあ大丈夫だろう。

色合いの感じは経験で知っていくしか無いし。

身の小さいブドウを発見。

ヤマゴボウに似ているから駄目かと思ったけど、コレも食べられるらしい。


夕飯のカレーのお供のハーブサラダとデザートが出来たな。

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